電話応対でCS向上コラム

第13回 周囲を上手に巻き込む

記事ID:C10084

今回からはケースを紹介していきます。今回のケースは、上手な巻き込み方についてです。原則は丸投げにならないように、「相手ができる具体的なこと」を「1回につき一つ」です。

一人で抱え込まないために

 チームで仕事を進めていくためには、周囲の人をうまく巻き込んでいく必要があります。「自分が担当しているのだから責任を持って全うしなければ」と一人で抱え込むと、だんだんとしんどくなってきます。その結果、「どうしてこちらの状況を分かってくれないのか」と周りに腹を立てたり、「これくらいやるべきだよね」というキツイ言い方になってしまい、結局周囲との良好な関係を築くことが難しくなります。
 がんばりすぎてため込むことなく、周囲をうまく巻き込んで、仕事を「上手に」依頼することができれば、ストレスを減らして効率的に業務を進めることも可能になるのです。
 自分の状況を周囲が分かってくれないと嘆く代わりに、まずは現状を適切に表現し、必要な助けを求めることも、アサーティブな対応の一つなのです。

例えば…同じチームの同僚に仕事を頼みたい…

 宮田さんは、今年に入って担当業務が急激に増えています。今日も他部署から「明日までに、お客さまに提出する資料に使うデータをまとめてくれないか」という依頼が来ました。今月の売上データを集計してまとめたいのですが、データの集計作業を自分一人で行うのでは間に合いそうにありません。後輩の丸本さんに、集計を一部お願いしたいのですが、彼女もとても忙しそうです。さて、どのように頼んだらよいのでしょうか。
 「あなたもこれくらいはやって当然だよね」という言い方は、攻撃的な対応です。「今忙しいですよね…無理ですよね…」と、依頼できずに自分で引き取ってしまうのは、受身的な対応です。「いいよね~、定時で帰れる暇な人は」などと、聞こえよがしにため息をつくのは作為的な対応で、どれもアサーティブではありません。
 こんな時にアサーティブに振る舞うためのコツをご紹介しましょう。

アサーティブに依頼するポイント

①要求は具体的にする

 依頼する時には、「相手ができる具体的なこと」を「1回につき一つ」と覚えておきましょう。例えば、「もしできたらでいいので、データ集計をお願いしたいんだけど…」という言い方は、具体的でありません。また「〇〇も、××も、△△も」とあれこれ頼むのもNGです。どれくらいの時間や量なのか、見込みを含めた具体的な内容にして、それを率直に伝えることを意識します。
 「今日の17時までに、先月分の売上データの集計をこの表にまとめる必要があってね。30分くらいで済むと思うんだけど、お願いできないでしょうか」と、見込みを含めて説明していくと、相手もイエス、ノーの判断がしやすくなります。

②率直な態度で簡潔に話す

 何かを頼む時、申し訳ない気持ちから「すみません」を連発して下した手てに出たり、「できたら、……だと嬉しいな」などのあいまいな表現をすることは、なるべく避けるようにします。
 遠回しな言い方よりも、率直な伝え方のほうが相手は受け取りやすいもの。「〇〇をいついつまでにお願いしたいのです。できそうでしょうか」と、簡潔な言葉で率直に依頼することを心がけてください。

③自分も協力する姿勢を見せる

 相手にも事情があるはずなので、自分ができる協力は惜しまず伝えます。「……については、私のほうで対応します、なので、丸本さんには集計作業を優先してやっていただけますか」という感じです。
 業務の大変さはお互いさま。丸投げの依頼ではなく、相手の負荷を減らすために自分がどんな協力ができるかを忘れず表現するようにしてください。
 誠実に、対等に、具体的に。それを意識することで、相手にこちらの言葉が正しく伝わり、話し合いや交渉がしやすくなってきます。やってもらって当然、ではなく、“お互いさま”の気持ちを忘れずに話してみてください。
 目の前の課題を解決すると同時に、相互の協力関係も築いていく。問題解決と関係性の構築、その二つを常に意識して、アサーティブな一歩を踏み出すとよいでしょう。

森田 汐生氏

NPO 法人アサーティブジャパン代表理事。一橋大学社会学部卒業後、イギリスの社会福祉法人でソーシャルワーカーとして勤務。その間、イギリスでのアサーティブの第一人者、アン・ディクソン氏のもとでアサーティブ・トレーナーの資格を取得。主な著書に『「あなたらしく伝える」技術』(産業能率大学出版部)、『なぜ、身近な関係ほどこじれやすいのか』(青春出版社)など多数。

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