電話応対でCS向上コラム

第2回 自分の反応パターンに気づいてみよう

対立する場面で、私たちは感情的になってしまうか、反対に言葉を飲み込み黙ってしまうという反応になりがちです。アサーティブでは、対立する場面であっても、相手を尊重しつつ、自分の意見や要望を落ち着いて伝えることのできる力が必要です。

対立した時の反応パターン

 後輩のAさんは、チームの若手メンバーです。まじめに仕事に取り組んでいるのですが、書類の提出が遅れることが度々あります。「分からなかったら相談してね」と、あなたは何度も伝えているのですが、期限通りの提出には至りません。今日は締め切り日です。Aさんに「どうなった?」と確認したら、案の定「できていません」という回答が。あなたはどんな反応になるでしょう。
 「相談してねと、何度も言ったよね、どうして何も言わなかったの?」と感情を爆発させますか。「私がやるしかないな……」とあきらめて、後輩の仕事を引き取りますか。それとも「最近の若い人たちはいいわよね」と聞こえるようにつぶやいて不満を伝えますか。
 このように、対立する場面に遭遇すると、私たちのコミュニケーションの難易度は上がります。感情を爆発させてしまう攻撃的な反応、飲み込んで黙ってしまう受身的な反応、嫌味な態度で気持ちを伝える作為的な反応。どれも私たちの、ごく自然な反応の仕方です。
 自分は誰に対して、どんな場面で、攻撃的になったり受身的になったり、または作為的になったりするのか、振り返ってみると良いでしょう。その上で、自分は相手とどんな関係を作りたいのだろうかと考えてみてください。
 もっと誠実で率直に話のできる関係を望むのであれば、自分の反応の仕方を少し変える必要があるかもしれません。

関係性にアプローチするのがアサーティブ

 数年前までは、毎日出社して顔を合わせていたので、同僚や後輩の困った様子に気づいて声をかけることができました。忙しそうな上司に声をかけるタイミングをつかむことも、業務の合間に雑談する中で相手の人となりを知るチャンスもありました。
 ところが在宅勤務が広がってきた現在は、関係を作るためには、時間を取って声をかけたり、オンラインでの会議を設定したり、絵文字を使って感情を伝えるなどの努力をせざるを得なくなりました。顔を合わせる機会が減り、マスクで表情が見えない、社内のメンバーの人となりを知る機会がないなどの状況の中、これまでのような人間関係を作るハードルは非常に上がってきているのが現実です。
 多くのビジネスパーソンは、ロジカルに情報を伝えるスキルや日常的な関わりのスキルを持っています。若手世代はさらに、情報を文字ベースで端的に伝える能力は基本的に高いです。ところが、「言いづらいことを伝える場面」になると、途端に困難を感じてしまいます。

 例えば、間違いの指摘、上司に反論する、ベテランメンバーへの注意、ハラスメントのリスクに介入するなど。そうした場面で、私たちはどう対応すればよいか分からず、攻撃的になるか受身的になるかの反応に陥ってしまうのです。
 アサーティブは、私たちが持っているコミュニケーションスキルの中でも、対人関係の領域にアプローチすると考えてください。価値観や立場の異なる相手と対立する状況が生まれたとしても、相手を貶めたり、反対に自分が卑屈になるのでもなく、お互いを尊重して粘り強く話し合う力、それがアサーティブなコミュニケーションなのです。
 先ほどの抱え込み後輩に対しても、相手の状況や理由に耳を傾け理解しつつ、自分は何を望むのか、後輩に具体的に何をしてほしいかを、明確な言葉にして伝えます。その結果、お互いのより良い人間関係や信頼の土台を築いていくことができるのです。
 とはいえ、感情的になりそうな場面で、攻撃的でも受身的でもなくアサーティブな対応ができるには、スキルも心構えも必要です。さまざまな場面での伝え方のスキルについては、次回からご紹介していきましょう。

森田 汐生氏

NPO 法人アサーティブジャパン代表理事。一橋大学社会学部卒業後、イギリスの社会福祉法人でソーシャルワーカーとして勤務。その間、イギリスでのアサーティブの第一人者、アン・ディクソン氏のもとでアサーティブ・トレーナーの資格を取得。主な著書に『「あなたらしく伝える」技術』(産業能率大学出版部)、『なぜ、身近な関係ほどこじれやすいのか』(青春出版社)など多数。

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