電話応対でCS向上コラム

第1回 アサーティブなコミュニケーションとは

記事ID:C10049

今号よりスタートする新連載です。お互いを尊重しながらコミュニケーションするポイントなどについてお届けします。

コミュニケーションツールの発展や価値観の多様化が進むにつれ「現場では伝わらない」「ぶつかってしまう」などの悩みが増えているように思います。アサーティブなコミュニケーションは、職場の現状のどこに役立つのでしょうか。

人間関係がリスクの時代に

 この数年間で、デジタルによる文字コミュニケーションの技術は飛躍的に発展してきました。並行して、職場のダイバシティ(多様性)も進んでいます。SNSや動画などコミュニケーションのツールが発展する中で、多様性や個性が尊重されることに反対する人はいないでしょう。ところが、私が実際に研修の場で耳にする話は、悩みや葛藤の場面です。多様なメンバーの価値観や利害がぶつかり、チーム内の関係が悪化する、考え方や働き方が違う人々をまとめることが難しい、在宅勤務が広がり相談できる関係が作れないなど、むしろ人間関係やコミュニケーションが難しくなってきているのが現状ではないでしょうか。
 私自身、20年以上にわたり職場の人間関係やコミュニケーションの課題に触れてきましたが、これほどコミュニケーションが難しい時代は、かつてなかったのではないかと思っています。どの職場でも、聞かれるのは次のような悩みの声です。
 「新人や若手の本音が分からない、本音を引き出せない」「ベテラン部下に注意したいが、プライドが高く反発されてしまう」「ハラスメントを意識して厳しいことが言えず、指導が回りくどくなる」「在宅勤務でチームのコミュニケーションが減り、人間関係が希薄になっている」
 こうした環境の変化や人間関係の変化に対応しつつ、「伝えるべきことを伝え」かつ「良好な人間関係を築く」ために、私たちはどうしたらよいのでしょう。

アサーティブなコミュニケーションの意味

 本連載の中で紹介するのは、「アサーティブ」というコミュニケーションの概念です。
 アサーティブなコミュニケーションとは、価値観や立場の異なる相手を尊重しつつ、自分の要望や提案を、率直、誠実、対等に伝えながら、問題解決を図る対人関係のコミュニケーションです。たとえ相手と意見の食い違いがあったとしても、相手を否定したり、「私が我慢すればいい」と自分が黙ったりするのではなく、言うべきことを言い、聞くべきことを聞きながら、話し合いを進めていく力です。そのための、具体的なスキルと心構えが「アサーティブ」なのです。
 「アサーティブ(アサーション)」は1950年代にアメリカの心理学の領域で生まれ、1980年代以降日本にも入ってきた“対人関係コミュニケーション”の一つです。 
 アサーティブであれば具体的にどのようなことができるのか、次に列挙してみよう。
・率直に要求を伝えられる。
・相手の話に耳を傾けられる。
・要求を率直に伝えられる。
・「ノー」と言って交渉できる。
・ 褒めることができる、褒め言葉を受け取ることができる。
・ 批判に対処できる。
・ 建設的な批判をすることができる。
・ 自分の意見を押し通すのではなく、交渉し、歩み寄る準備がある。

 いかがでしょうか。皆さんはどれくらい実践できていますか。

性格は変えられないがコミュニケーションは変えられる

 私たちは状況によりアサーティブになれたり、なれなかったりするものです。立場や考え方が違う、年齢や経験に差がある、人間関係ができていないなどです。また、ストレスが高くて余裕がないとか、メンタル的に弱っているなどの時も、アサーティブになるのは難しいものです。
 それでも、コミュニケーションの方法を知ることで、自分の振る舞いを自分で選ぶことができるようになる、それがアサーティブであることの意味です。
 相手に対して反撃したり、斜に構えたり、あきらめて言葉を飲み込むのではなく、対立する場面であっても、お互いを尊重した話をする。どんな時も、自分の振る舞いや言葉の選び方は、ほかの誰かではなく、自分自身に選択権があるのだ、ということが、アサーティブな対話のスタート地点となっています。
 性格を変えることはできない、でも、伝え方や受け止め方は変えることができる。その選択肢の一つに、アサーティブなコミュニケーションを加えてみてください。

森田 汐生氏

NPO 法人アサーティブジャパン代表理事。一橋大学社会学部卒業後、イギリスの社会福祉法人でソーシャルワーカーとして勤務。その間、イギリスでのアサーティブの第一人者、アン・ディクソン氏のもとでアサーティブ・トレーナーの資格を取得。主な著書に『「あなたらしく伝える」技術』(産業能率大学出版部)、『なぜ、身近な関係ほどこじれやすいのか』(青春出版社)など多数。

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