電話応対でCS向上コラム

第16回 日常生活におけるメンテナンスのアサーション

アサーションというと、お互いはっきり表現することのように思うかもしれません。でもそれだけがアサーションではありません。実は、ちょっとした日常の言葉がけや挨拶もアサーションなのです。これらは人間関係をつなぎ、安定させる上で欠かすことができません。今回は、人間関係を維持・改善する、日常生活におけるメンテナンスのアサーションを学びましょう。

日常生活におけるメンテナンスを再確認しよう

言葉がけや挨拶などのことをメンテナンスのアサーションと呼びます。メンテナンスとは「維持すること」「維持された状態」を意味します。また、人間生活が普通に保たれ、物事が整備され、滞りなく動いている状態のことも意味します。人が生活するためには、食事、睡眠、安定した人間関係などが必要で、日常生活におけるメンテナンスとは、安全や安定が崩されないように、もし問題が生じても元の状態に戻したり、新しい安定を得るために力を尽くしたりすることです。

メンテナンスのアサーションが自然に出てくるようにしよう

私たちが日常生活を送る上で、人間関係を円滑にし、その状態を維持するメンテナンスは非常に重要です。例えば、メンテナンスのある家庭では、食事作り、後片付け、掃除、洗濯などの家事が滞ることなく行われ、健康な生活のための環境が整っています。そして葛藤や問題が起こった時は、その解決に全力が注がれます。そのために使われる言葉やお互いを思いやり、聴きあう会話などをメンテナンスのアサーションと呼びます。その代表的なものが、挨拶や思いやり、感謝の声かけなのです。

伝え合うことでともに生きる力になる

私たちが日ごろ交わす言葉は、お互いの近づきたい気持ちを表現していて、そこには関係を作り、維持する働きがあります。「いただきます」「ごちそうさま」「いってらっしゃい」「お帰りなさい」、仕事の場で交わされる「お疲れさま」などの挨拶は日本語特有の相手への思いやりを伝えるメンテナンスの言葉です。用事を伝えたり、問題を解決する会話だけの人間関係では、お互いの気持ちが通じているとはいえませんし、作業の効率も下がってしまいます。これに対して、円滑にメンテナンスの言葉がけができている家庭や学校、職場では、親密でぬくもりのある人間関係が保たれているので、葛藤や問題も解決されやすい傾向があります。私たちの毎日の生活はメンテナンスのアサーションがあって、スムーズに流れるのです。

外国語でも挨拶にはメンテナンスの意味がある

日本語以外のあらゆる言語でも、挨拶はお互いの関係を維持し、安定させる大切なやり取りです。心を込めてその意味を伝えることで、メンテナンスを伝えることにもなります。適切なタイミングで「ありがとう」が言える人、人をほめることができる人は、人間関係のカギを手にしているといえるでしょう。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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