ICTコラム

第25回 ウェブ運用テクニックを意識する前に!運用基礎講座 第二回 トラブルを防ぐために、ウェブサイトの情報を管理・把握しよう!

第一回のコラムでは、ウェブサイトの基礎知識とウェブサイト運用のトラブル事例についてご説明いたしました。今回は、ウェブサイトの情報を管理・把握していなかったためにトラブルに発展する可能性がある出来事をご紹介いたします。その上で、トラブルを避けるために、自社で管理・把握すべきウェブサイトの情報についてご案内いたします。

トラブルに発展する可能性がある出来事

<1:ウェブ制作会社が倒産した場合>

予想外に起こる可能性があるのが、契約しているウェブ制作会社の倒産です。

ウェブ制作会社が倒産し連絡がつかず、自社でウェブサイトの情報が管理・把握できていない状況下では、ウェブサイトに対して何もできなくなります。最悪の場合、ウェブサーバーやドメインの有効期限が切れるまでウェブサイトを放置するしかできず、有効期限後、ウェブサイトが表示されなくなるケースもあります。情報が一切分からない=現在のウェブサイトの情報を取得して移すこともできないので、このウェブサイトをもう一度再現することはできません。新しくウェブサイトの構築が必要となった場合、制作時間と制作費用がかかります。

情報が紛失するケースを想定し、事前にウェブサイトの情報を管理・把握していれば、現在のウェブサイトを新たな会社に委託することができ、ウェブサイトを失わずに済むことができたといえます。

<2:ウェブサイトをリース契約している場合>

ウェブサイトのリース契約とは、

サプライヤー(ウェブ制作会社)が事業者へ、ウェブサイトの制作・更新などの役務を提供し、その代金の支払いのためにリース契約を結ぶ取引のことです。しかし、無形であるウェブサイトはリース契約の対象外のため、パソコンやソフトなどの有形物をリース物件とするケースがほとんどです。では、どのようなトラブルが起きる可能性があるのかをご紹介します。

ウェブ制作会社を移したい場合

リース契約が成立している以上は、サービスの利用実態に関係なく制作会社を移した後もリース料の支払いが必要になります。そのため、金銭面からすぐに制作会社を移すことが容易ではなくなります。では、リース契約満了まで待って、制作会社を移せば問題ないと考えがちですが、そうはいかないケースが多いようです。

契約満了のため、もちろん契約解除は可能です。ただし、解約後の持ち出し可能な情報に関しては、契約時に規定されていることが多く、契約内容によっては、現在のウェブサイトの内容のすべてを継続利用できません。場合によりますが、ウェブサイトの移築が必要になります。

ウェブサイトのリース契約は、トラブルとなるケースが多いことや長期間で考えると金銭面が高額になることもあるため、安易に利用しないことをお勧めします。契約をする場合は、契約締結前に契約内容や権利関係(著作権や所有権など)を把握し管理しておくことを推奨します。

すでにリース契約を締結している場合、契約満了までに、契約内容の把握と情報の管理を行なうことをお勧めします。契約内容によって、権利の問題で身動きがとれないことも多いようです。そのため、まずは現状の把握をし、今後の対応策を検討する必要があります。

自社で管理すべき情報一覧

トラブルを防ぐために、自社で把握・管理すべきウェブサイトの情報をご紹介いたします。

①契約情報
・ウェブサイト制作会社(運用会社)
・保守/運用/管理業務・契約期間
・知的財産権の所有者
 ウェブサイトコンテンツ(データ)の著作権や仕様書・設計書などの所有権、そのほかの産業財産権などのことです。
②ドメイン情報
・ドメイン登録業者(レジストラ)
 ドメインを登録・管理している事業者です。(例:「お名前.com」「ゴンベエドメイン」など)
・ドメイン管理会社
 ドメイン登録業者(レジストラ)を介してドメインの登録・管理を行う会社のことです。
 自社でドメイン登録業者とやりとりをしている場合は自社、他社へ依頼をしている場合は、依頼先の会社です。
・ドメイン管理サイトURL
・ログイン用ID
・ログイン用パスワード
・ドメイン所有者
・更新期限
・登録情報・担当者氏名
・登録情報・通知アドレス
③FTP情報(ウェブサイトコンテンツ(データ)の格納場所)
・ホストアドレス(ホスト名)
・ログイン用ID
・ログイン用パスワード
④ウェブサーバー情報
・ウェブサーバー管理サイトURL
・ログイン用ID
・ログイン用パスワード
⑤メールサーバー情報
・メールサーバー管理サイトURL
・ログイン用ID
・ログイン用パスワード
※メールサーバーとウェブサーバーは同じサービス内で運用されているケースが多いため、メール情報についても管理することを推奨しています。
⑤Googleアナリティクス(※アクセス解析ツールです。SEO対策により導入している場合があります。)
・ログイン用メールアドレス(or 電話番号)
・ログイン用パスワード

おわりに

ウェブ制作会社の変更を検討したり、ウェブ制作会社が倒産したことでほかの制作会社へ変更する必要が生じた場合に、ウェブサイトの情報を管理・把握していなかったためにトラブルに発展する可能性があります。トラブルが発生してしまった後では、対応に時間も費用もかかります。トラブルを防ぐために、この機会にぜひ自社でウェブサイトの情報の管理・把握を行っていただきたいと思います。

次回は最低限知っておくべき「サイバーセキュリティ」について、セキュリティの軽視によるトラブルと、自社で意識向上を図る必要性を紹介したいと思います。

西村 公美子氏

株式会社トラスWebディレクター。WACA認定上級ウェブ解析士。

大手通信企業に常駐し、大規模会員サイトのリニューアルWebディレクション、サイトコンテンツのアクセス解析および改善提案などWebサイトの価値向上に従事。
前職の金融機関で培った経験を活かし、精緻な業務管理と改善、また、実務に基づいた新人育成およびマネジメントを担当。

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