電話応対でCS向上コラム

第2回 裁判とメディエーションの違い

本コーナーは、トラブルなどにおいて第三者が当事者同士の話し合いを促すことにより解決に導く手法「メディエーション(調停)」を紹介しています。第2回の今回は、メディエーションを行うメリットについてお話しします。トラブル収拾の極意を学び、職場でトラブルが発生した時などに、当事者間の相互理解を促すコミュニケーションの基本を身に付けましょう。

裁判とメディエーションの違い

 当事者同士の話し合いを促すメディエーションと対極にあると言えるのが、第三者である裁判官が裁定しトラブルを解決する裁判です。メディエーションを行うメリットを考える前に、まずは職場で起こるトラブル解決の手法としてのメディエーションと裁判の違いを考えていきましょう。
 そもそも裁判は、法によって白黒をつけるものです。裁判所・裁判官の下、法に基づいて公平な判断が示されるため、職場での上下関係などによらない解決が期待できます。その半面、双方が対立した状態のまま解決するため、勝つ側と負ける側が出てきます。そのため当事者同士の人間関係に必ずしもいい影響を及ぼすとは限りません。それに対し、メディエーションは当事者同士が話し合って解決することを目指すため、自分たちで解決したという事実が納得感を生むのです。また、裁判を行うには膨大な費用・時間・労力がかかるのに対し、メディエーションは裁判ほど費用や時間、煩雑な手続きを必要としないため、当事者にとっては比較的簡単に進めることができるものです。
 基本的に非公開で行われるメディエーションは、個々の案件にきめ細かに配慮して解決に導くことができます。裏を返すと、公開されている裁判のように1つの判例が同じような紛争にも影響を与え、より大きな問題の解決につながるという社会的な波及効果が期待される性質のものではないということです。また、当事者同士が話し合うことでトラブルを解決するため、現場の力関係に左右されやすいという側面を持っています。このように、メディエーションと裁判は表裏一体であり、メディエーションのメリットが裁判のデメリットになり、裁判のメリットがメディエーションのデメリットにもなり得るのです。

メディエーションの特徴と注意すべきこと

 それでは、それらを踏まえた上で、メディエーションの特徴に注目しましょう。
 当事者同士がとことん話し合うことで解決を促すメディエーションは、双方に納得感を生み、結果的に職場の人間関係を良い方向に導くことにもつながります。しかし一方で、裁判のように公開されないため、現場などの力関係がそのまま出てしまう危険をはらんでいます。
 企業においてメディエーションを行う際は、力のアンバランスなどの問題に配慮することもメディエーションの効果を最大限に発揮するためには重要だと言えます。その鍵となるのがメディエーターなのです。

 次回からは、メディエーションをより有意義なものにするためにメディエーターが配慮すべきことを解説していきます。

※メディエーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています

稲葉 一人(いなば かずと)氏

中京大学法科大学院教授。東京・大阪地裁判事、法務省検事などを経て、現在本務のロースクールのほか、久留米大学医学部、熊本大学大学院などで教壇に立つ。また、日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定委員会委員・専門委員会委員を務めている。米国に留学し、ADR(裁判外紛争解決)を研究し、メディエーションの教育者・実践者である。JICAを通じた海外の裁判所における調停制度構築のプロジェクトを進め、2012年10月にモンゴル国最高裁から「最高功労勲章」を授与された。

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