電話応対でCS向上コラム

第29回 部下の報告、上司の指示を聞く

前回は親の話を上手に聞くということを学習しました。今回は、皆さんが毎日職場で直面する「部下の報告を聞く」、「上司の指示を聞く」ということに焦点を当てて、考えていきましょう。上司と部下が良好な関係を築き、円滑なコミュニケーションをとるために「聞く」という面でどのようなことに注意をしていけばよいのでしょうか。

部下の報告を聞くポイントは「相槌」

まず、上司はどのように部下の報告を聞いたら良いのでしょうか。そのポイントは相槌です。上司が部下の報告を聞く時は、その内容を知るだけではなく、気持ちを理解した相槌がどれだけ打てるかがポイントになります。例えば商談について部下から報告を受けた時に、上司は「ああ、相手は黙ったか」「そこで君は質問したわけだね」などと合いの手を入れていると、「話を聞いているよ」という合図になります。また、話の内容だけではなく、部下の骨折りに対して「それは大変だったろう」と、いたわりの言葉がけをすると、支え合う関係がつくられていきます。その場に適切な相槌の言葉は、部下の心に「自分のことをよく分かってくれている」「自分のことを大切にしてくれる」という信頼の気持ちを培います。

聞き上手の上司のもとで部下は育つ

つまり、部下からの仕事の報告をただ聞くだけでなく、人間関係にもメンテナンスが必要です。会話における合いの手、そして「聴く」ことが、まさしくメンテナンスです。人間関係に油をちょっとさすのです。最近は、職場の人間関係が希薄になり、お昼を一緒に食べたり、退社後にお酒を飲みに行ったりして雑談をする機会が少なくなっていると聞きますが、一緒に飲食することもメンテナンスに役立ちます。そうした気の置けない関わりの中で、その人らしさに触れるチャンスが得られ、気心が知れている人たちとの仕事は、よくはかどります。部下は、聞き上手の上司のもとでよく育ちます。

上司の指示はすべて「はい、はい」と聞く必要はない

一方、部下は上司の指示を聞く時にどのような点に気をつけたら良いのでしょうか。上司と部下の関係にあれば、上司からの指示は「はい、はい」とすべて引き受けなければいけないと考える人もいるかもしれません。しかし、すべてを引き受ける必要はなく、自分の事情を伝えて、上司の状況も理解しながら対応することです。例えば、「10分前に緊急の仕事が発生した。終業間際で申し訳ないが残業してくれないか」と上司から頼まれたとしましょう。

上司、部下双方の状況を理解することが重要

部下は上司の状況が理解できました。一方、部下の事情は何でしょうか。「今日は息子の誕生日で、家族には夕食を一緒に取る約束をしています」それを伝えて、上司の意見を聞きましょう。ここで上司、部下双方がどうしたら良いかを考えることになります。仕事の内容と状況を考えて、双方からいろんな対策が出され、最も良い案に両者が歩み寄ること、それがこんな時のアサーティブなやり取りです。

大切な用事がある時には、事情を伝えた上で、引き受ける

大切な用事がある時には、事情を伝えた上で、引き受けることも大切です。「地方から友人が出てきて、夕飯を食べることになっているのですが、1時間延ばすことも可能です」と。上司は部下の状況を理解した上で依頼することになります。ただし、ここでは自分がアサーティブに歩み寄りの提案をしたのですから、恩に着せるような言い方をしたり上司のせいにしないことです。夕飯に遅れることを友人に伝え、謝る時も自分の決断として伝えることが重要です。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

関連記事

入会のご案内

電話応対教育とICT活用推進による、
社内の人材育成や生産性の向上に貢献致します。

ご入会のお申込みはこちら