電話応対でCS向上コラム

第10回 アサーションに関わる権利を知って対人スキルアップを目指す

前回では、アサーションをする権利である「アサーション権」は、誰もが持っている人権の一つであることを学びました。このようにアサーションの基礎には「人権」を重んじる考えがあります。今回は、アサーションに関わる複数の権利を知り、アサーション力のアップを目指します。

非暴力で平等を訴えた人権運動がアサーションを促進した

アサーションの発祥は、1950年代のアメリカです。最初は対人関係がうまくいかない人や、自己表現が苦手な人のカウンセリング方法として始まりました。それが多くの人に知られるようになり、利用されるようになったのは1970年代です。この頃、北米では黒人や女性に対する差別撤廃運動が盛んになりました。この時、非暴力を貫き、人間の平等をアサーティブに訴える民衆の姿が、多くの人々に人権とアサーションの重要性をアピールしたのです。まさにアサーションは、自己表現の方法というだけではなく、人間の価値や平等に対する考え方として、また人権問題に関わる有効な方法としても認識されてきたのです。

頼まれごとを断る時に罪悪感を感じたり、失敗してはいけないと思っていないか?

このように深い意味や歴史を持つアサーションの考え方は、今でも世界中の多くの人々に必要とされています。頼まれごとを断る必要がある時、罪悪感を感じて、引き受けていませんか?そんな時アサーティブになるには、アサーションに関わる権利を知ることが助けになります。前回は「アサーション権は誰でも持っている」「私たちは誰からも尊重される権利がある」ことをご紹介しました。今回はこのほかの権利を紹介していきましょう。

私たちには、自分の行動を決める権利がある

皆さんには、自分がどう感じ、行動するか、自分で決める権利があります。あなたの感じ方や考え方はあなたのものであり、他人と同じである必要はありません。さらに、それを主張する権利も、変える権利もあるのです。もし自分で決めて行動しておきながら、相手のせいだと考えるなら、それは自分の決定権、判断権を放棄していることになり、自分の決定したことを他者の責任に転嫁しようとする甘えた生き方と言えるでしょう。相手の要求に従うことも自分で決め、他者から押し付けられたものではなく自分が決め、選んだ権利として行使しましょう。

私たちは誰でも過ちを犯し、それに責任を持つ権利がある

神ならぬ人間は完璧ではありえないので、失敗をします。これは「人間である権利」とも言われます。そして、その失敗結果には、できる限りで責任を取ることができます。失敗はしてはならないという前提でものごとを進めると、試行錯誤ができなくなり、成長も阻まれる可能性があります。そして、小さな失敗で学ぶこと、また、互いに失敗をしないように助け合うことこそ、大きな失敗をしないための鍵になります。人権としての失敗や過ちと規則やルール違反による失敗を区別し、規則違反には義務や罰が伴うことを覚えておきましょう。

私たちには自己主張しない権利もある

この人権はとても大切です。「アサーションをして良い」となると、つい「アサーションをするべきだ」になってしまうことがあります。しかし、アサーティブにしないことも選べるのです。アサーションをすると身に危険がある時、時間や自分の都合でアサーションをしないでも良いと決めた時は、その結果も引き受ければ良いのです。つまり「アサーションしない」と決めることと、非主張的な人が主張できず落ち込んだり、相手を恨んだりすることは同じではありません。アサーティブということは、思いを表明することだけではなく、主張しないことも含めた言動の選択であり、考え方であることを覚えておきましょう。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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