電話応対でCS向上コラム

第9回 誰もが自己表現する権利「アサーション権」を持っている

「アサーション」というと何か特別なことで、特定の人が持つ権利だと思っている方も少なくありません。実はアサーションは、誰もが持っている人権なのです。お互いにアサーション権を認めることがアサーションの始まりです。今回から、このアサーション権について考えていくことにしましょう。

アサーションは、誰もが持つ「アサーション権」を自覚することから出発

アサーションとは、「自他の権利を侵さない限り、自己表現をしても良い」という意味ですが、そのよりどころになっているのは、自己表現の権利という、生まれながらにして誰もが持っている基本的人権を認めることにあります。つまり、アサーションは、誰もが持っているアサーションをする権利=「アサーション権」を受け入れるところから出発するのです。このようなアサーション権は、人間関係の基礎です。誰もがやって良いことを知ると、人との信頼、思いやり、親密さなどを育んでいけるようになります。

頼まれごとを断る時に罪悪感を持ったり、失敗してはいけないと思っていないか?

人との信頼、思いやり、親密さなどを育んでいくには誰もがアサーション権を知り、そこに確信を持つことが大切になってきます。そこで、皆さんに質問です。例えば皆さんは①頼まれごとを断る時に、罪悪感を持つことはありませんか?②人から大切にされていない時、自分が劣っているからだと思うことはありませんか?③自分の要求や希望を言う時は、控え目にするべきだと思っていませんか?④疲れたり、落ち込んだり、腹が立った時などに、それを表現してはいけないと思っていませんか?⑤絶対に失敗してはいけないと思っていませんか?

社会の常識を優先すると、自他の言動を制約することがある

①~⑤のようなことを感じる時、私たちは性、役割、年齢、地位などによる固定化されたイメージで行動をしている可能性があります。そのため自己表現を選択できなくなっているかもしれません。このような行動は、人間が生まれながらにして基本的に持っているアサーション権を知らないか、無自覚で、社会の中で作られた習慣や常識のようなものによって自分の行動を制約している可能性があります。アサーションは、そのような自他を差別する基準を持たないようにすることから出発します。

私たちは、尊重され、大切にしてもらう権利を持っている

この権利は、人間の尊厳を誰もが守ること、侵さないことを意味します。この人権を知り、確信することは、アサーション言動の支えとなります。つまり、人間が尊重されることは、人間の気持ちや考え、意見、価値観も尊重されることであり、私たちは誰でも欲求を持って良いし大切にしてほしいと思って良く、そして、その欲求を大切にしてほしいと頼んでも良いのです。この人権については、「そう言われれば、そうだ」と思いつつ、つい遠慮したり、逆に自分は持っていいが、相手が持ってはならないと思うことがありがちです。

自他に同様の権利があれば葛藤は「当たり前」、歩み寄りの覚悟も必要

もし、あなたが「自分の希望や欲求を持つことは許されない」と考えているならば、それを人権の観点から考え直してみましょう。そのような権利が相手に許されていると思えるならば、あなたにも許されているのです。何より大切なことは、人権はあなたも相手も同様に持っていることを忘れないことです。ただ、お互いが権利を持っていると、葛藤が起きる場合はあります。葛藤を怖れ過ぎると、欲求や希望が述べられなくなります。アサーションは、お互いの希望を述べ合う権利を大切にして、葛藤は当たり前のこととして互いの思いを理解し合いながら歩み寄る方法なのです。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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