企業ICT導入事例

-三八五流通株式会社-
タブレット端末の活用で引越事業の業務効率化とCS向上を達成

引越の見積りには、経験と勘が必要でした。しかも車両や作業員の手配とスケジュールの調整がリアルタイムでできないため、お客さまを長時間お待たせするケースもありました。そこで三八五流通株式会社は、誰もが使えるオリジナルのソフトウェアを導入し、業務効率化を果たしました。

車両と作業員の調整の煩雑さが機会損失の一因に

  • ▲引越事業部 部長・小野寺 庸氏

    青森県八戸市に本社を置く三八五流通株式会社は、東日本エリアを中心に、トラック輸送、倉庫業、引越事業を手がける総合運輸企業です。

    「弊社は1980年代後半から、引越事業に特に力を入れてきました。引越事業は一定の需要が見込まれること、そして一般の運送業に比べ高い利益率が見込めるというのが、その理由です」(小野寺氏)

しかし事業が順調に拡大する中で、同社は大きな課題に突き当たります。それは従来の業務フローがもたらす時間的ロスでした。

「引越のご依頼をいただき、営業スタッフが見積りにうかがっても、車両や作業員の状況がリアルタイムで確認できないため、スケジュールを確定してお客さまにご案内できるのは、帰社後にほかのご依頼と調整してからになっていました。またそれぞれの営業拠点が管理するのは自拠点の車両や作業員のみで、ほかの拠点への応援依頼にはそのつどFAXや電話での連絡が必要でした」(小野寺氏)

こうしたスケジュール調整の作業は煩雑で、繁忙期にはお客さまをかなりお待たせすることもあったといいます。

「さらに荷物の運搬にどのサイズの車両が必要かという判断も営業スタッフの経験や勘が頼りで、時には積み残しが発生する原因にもなっていました。この問題を解決するには、誰もが正確に引越荷物に合った車両サイズを選択できる仕組みが必要でした」(小野寺氏)

日々変わる道路の状況も踏まえタブレット端末を選択

そこでリアルタイムに、かつ経験や勘に頼らず誰もが正確に見積りとスケジュール調整ができる。こうした目標を掲げたプロジェクトがスタートしました。

「車両や作業員の管理データをリアルタイムに参照するには、社内のデータベースと連携したアプリケーションとタブレットの組み合わせが最適と考えました。さらにタブレットなら、ナビゲーションソフトをインストールし、カーナビとして利用できます。引越でうかがう先は基本的に“はじめて行く場所”です。また東北地方は東日本大震災からの復興が進み、新たな道路も日々開通しています。サーバー上にある最新の地図データを参照するナビゲーションソフトなら、一般のカーナビのような地図更新の手間は不要です」(小野寺氏)

同社はNTTドコモのタブレット端末を選定、協力会社とともにオリジナルのソフトウェア開発に着手しました。

「開発にあたっては、試作版を何度も引越作業の現場に持ち込み、インターフェイスや機能について、営業スタッフやドライバーへのヒアリングを繰り返しました」(小野寺氏)

しかし開発はすべてが順風満帆というわけではなかったと、小野寺氏は語ります。

「実は問題は、ソフトウェア開発以外の部分にありました。弊社は従来、お得意さまデータを支社別に管理していましたが、複数の支店で同じお得意さまとお取引がある場合、その名称の登録が『株式会社~』だったり、『(株)~』だったりと、支店ごとに異なるケースが多々ありました。この確認と名寄せにかなりの労力を使うことになり、データ管理におけるフォーマットの重要性を再認識した次第です」(小野寺氏)

荷物をポイント化することで誰でも正確な見積り作成を可能に

  • ▲引越作業の心強い味方となるタブレット

    こうして2014年に完成、導入されたシステムは、簡単な研修を受けるだけで、誰でも正確な引越見積りが可能となっています。

    「お客さまのお荷物を家具の種類などでポイント化し、その合計で車両のサイズと作業員の数を算定します。次に社内のデータベースからご希望の日時に車両や作業員を確保できるかどうかを確認します。ここでご希望の日時が厳しいようであれば、代替のスケジュールの提案をします」(小野寺氏)

導入当初は見積り作業にやや時間がかかることもありましたが、スタッフの習熟が進むと30分程度で完了するようになりました。そしてスケジュール調整、車両や作業員の手配もこの時点で完結しているため、帰社後の煩雑な作業も不要になりました。

「荷物のポイント化という説得力のある方法でのお見積り作成は、お客さまの信頼にもつながっていると思います」(小野寺氏)

また同社は引越費用のクレジットカード決済にも対応しました。「クレジットカード決済には手数料の弊社負担が必要ですが、お客さまのご希望に加え、ドライバーが現金を管理する必要がないこと、社内の出納担当者の手間が省けることなどのメリットを考え、NTTドコモのクレジット決済端末を導入しました」(小野寺氏)

共通プラットフォームの採用で引越業界の協業を促進

最後に、同社が今後どのような展望を持っているのかをうかがいました。

「他社からこのシステムを使いたいというご要望があれば、ぜひ導入していただきたいと思っています。実は単独で日本全国をカバーできる引越事業者は上位の数社だけで、それ以外は地域ごとに強い運送会社が互いに助け合い、お客さまの引越荷物をお届けするのが通例です。このシステムを導入した事業者同士であれば、お見積りのベースが共通であることから、作業量、作業時間などの不安もなく他社からの依頼を引き受けることができるはずです」(小野寺氏)

地域に根ざした引越事業者同士が協業し、効率の良いサービスをお客さまに提供できる。タブレット上のアプリケーションが、まさに効率的で顧客満足度の高い引越を切り拓こうとしているのです。

▲引越事業部は、単身の引越から家族の引越、オフィスの引越とさまざまな引越ニーズに対応している

会社名 三八五流通株式会社
創業 1947年(昭和22年)6月26日
所在地 青森県八戸市大字長苗代字上中坪35-1
代表取締役社長 泉山 元
事業内容 一般貨物自動車運送事業、倉庫業、利用運送事業、産業廃棄物収集運搬業、物品販売、有料職業紹介事業・派遣業
URL http://www.miyago.co.jp
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