企業ICT導入事例

-株式会社LIXIL-
AI-OCR の導入によりRPAの前処理を自動化し、ミス削減と業務効率化を加速

株式会社LIXILは、AI-OCR※の導入で、手書き帳票類のデータ化を実現。コピー&ペーストなどの手作業をソフトウェアロボットが代替する「RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)」による業務効率化をさらに高めています。

【導入の狙い】RPA利用の前段階で必要だった手書き帳票のデータ化作業を自動化し、効率を高めたい。
【導入の効果】同一フォーマットの手書き帳票のAI-OCR によるデータ化で、処理速度の向上とミス低減を実現。

「働き方改革」「業務効率化」実現のためRPAを活用

  • ▲IT部門 システムインフラ部
    IT次世代化推進グループ 髙橋 裕司氏

    株式会社LIXIL(リクシル)は水まわり製品と建材製品の開発・提供をするグローバル企業です。

    「社名の『LIXIL』は“Link to Good Living”のLiとLiを掛けた造語で、私たちは『世界中の人々のより豊かで快適な住まいと暮らしの実現』を目指しています」(髙橋氏)

    同社がAI-OCRを導入し、活用を進める背景には、働き方改革への全社を挙げた取り組みがありました。

  • ▲IT部門 システムインフラ部
    IT次世代化推進グループ 片岡 麻希氏

    「長時間労働をなくすには、ICTを活用した業務の効率化が欠かせません。そうした観点から弊社では、現場各部門でのRPAの利用を進め、手作業で行っていたデータ処理の自動化を推進してきました。導入と活用は現場主導とし、必要と思われるロボット(シナリオ)を自分たちで作ってもらう仕組みとしました」(片岡氏)

RPAによる効率化をさらに推進するため「手書き文字OCR」導入へ

  • ▲IT部門 システムインフラ部
    IT次世代化推進グループ
    グループリーダー 中村 宏氏

    こうしてRPAは業務の効率化に大きく貢献しますが、その一方で別の課題が浮かび上がってきました。

    「弊社の現場の先にはパートナーさま、そしてその向こうにはパートナーさまの取引先であるビルダーさまなどがいらっしゃいます。そうした方々とのやり取りには、いまだ紙の帳票やFAX、PDFファイルが使われており、RPAに処理させる前段階のデータは、現場が手入力で作成する必要があったのです」(中村氏)

    「ここをなんとかして、RPAのメリットをさらに拡大したいと考えた現場から、OCRの導入を、という声が上がってきました」(髙橋氏)

もちろんIT部門も、そうした“手作業”が効率化の妨げになっているという認識を持っていました。しかし単なるOCRでは、手書き文字やFAXで送られてきた帳票を正確に読み取ることは困難です。

「そこで2018年初頭から、AIのサポートで手書き文字も認識可能な『AI-OCR』の導入を検討しました。導入にあたっては、手書き文字認識対応を謳う複数社の製品を業務の現場に持ち込み、使い勝手や認識率を確認するテストを数ヶ月にわたり行いました」(髙橋氏)

そうした検証の結果、最終的に選定されたのが、AI inside(エーアイ・インサイド)株式会社の「DX Suite」です。

「導入のポイントとなったのは、手書き文字の認識率の高さに加え、操作が分かりやすいこと、セキュリティの高さ、そしてディスプレイ上で読み取った内容の修正ができることなどです」(中村氏)

AI-OCRとRPAの連携で効率化が加速。現場からはさらなる期待も

現場への導入は2018年11月から始まり、RPAにより実現した業務効率化がさらに加速しました。

「今回導入したAI-OCRは、事前に帳票のフォーマットをスキャンして読み込ませたい箇所を登録します。導入のメリットを最大限に活かすため、処理枚数の多い帳票フォーマットを中心に登録し、運用を開始しました。月に1~2枚だけのフォーマットなら人間が作業してもそれほど時間は変わりません。しかし100枚、200枚の同一フォーマットでは、AI-OCRで処理時間が大きく短縮できます。そして、手作業よりもミスの発生率低下が期待できます。もちろん、AI-OCRも万能ではありません。枠からはみ出たり、判別しにくいものは最終的に人の目で確認しなければなりませんが、それでもAI-OCRからRPAまでの処理をトータルで考えると、大きく効率化が進展しました」(髙橋氏)

「ある意味、AI-OCRは人間のサポート役ですから、その段階での100%は求めていません。最終的に基幹システムにデータを引き渡すまでのどこかでエラーチェックが行われ、データの誤りが検知できれば良いと思っています。そうした仕組みを考えることが、私たちの役割だと思っています」(中村氏)

こうして現場の負荷軽減に役立ったAI-OCRには、そのメリットを実感した現場から、さらなる改良への期待が寄せられています。

「現在、約20部署で利用が進んでいる中で、フォーマットの登録がなくても帳票類を読み取る機能がほしいという要望が特に上がっています。β版としてご提供いただき、利用し始めたところなので、今後の正式なリリースへの期待が非常に大きくなっています」(髙橋氏)

▲AI-OCRの使用イメージ。手書き文字の認識率が高く、
ディスプレイ上で読み取った内容の修正もできます。

AI-OCR導入がきっかけで、これまでの「仕事の流れ」を見直す動きも

一方、AI-OCRの導入は、仕事の流れや方法について見直す機会にもなりました。

「まず、今まで使ってきた各種帳票が、AI-OCRで使いやすいのかどうかという“気づき”です。例えば、用意された選択肢の中から数字を書いてもらう方式とチェックボックスにマークしてもらう方式とでは、どちらのほうが読み取りやすいかという判断もありますし、『きちんと書かなくてはならない』と思わせるフォーマットの作り方も検討課題です。また、内容は同一なのに複数のフォーマットが存在する帳票を統一し、パートナーさまなどに導入を働きかけることにも、今後注力していくことになりそうです」(髙橋氏)

最後に、今後の展望についてうかがいました。

「上から押しつけるだけでは、ペーパーレス化は進まないと思います。しかしパートナーさまが『LIXILへの注文は楽で、かつレスポンスも早い』と感じていただける仕組みを作れば、弊社からパートナーさま、さらにはその先のビルダーさまにもペーパーレス化が浸透すると思います。“ペーパーレスありき”ではなく、全員がメリットを感じることで、業務効率化を進め、競争力を高めていきたいですね」(髙橋氏)

「現場では、設計図面に製品型番や発注数を書き込み、FAXでやり取りするということも、まだ日常的に行われています。これは図面と型番を照らし合わせて確認したほうが、寸法が足りないといった発注ミスを防げるからです。将来的にはそうした図面から必要な情報だけを読み取り、データ化できるAI技術に期待しています。そうなると、業務効率化はさらに大きく進展するでしょう」(中村氏)

※AI-OCR:紙やPDFなどの文字情報を電子化する技術がOCR(Optical Character Recognition/Reader=光学的文字認識)で、これにAI(人工知能)技術を取り入れたもの。

会社名 株式会社LIXIL
設立 2001年(平成13年)10月1日
本社所在地 東京都千代田区霞が関三丁目2番5号 霞が関ビルディング36階
代表取締役社長 大坪 一彦
資本金 346億円
事業内容 住まいの水まわり製品と建材製品の開発、提供
URL https://www.lixil.co.jp/
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