企業ICT導入事例
-株式会社上間フードアンドライフ-ICTの積極的な導入で経営に必要な数字を“見える化”、経営戦略を最適化
原価率、粗利益などの経営判断に必要なデータが明らかになるのは、一定の締め日以降というケースも少なくありません。株式会社上間フードアンドライフは、ICTを活用してこのタイムラグをなくし、迅速な経営判断を可能としました。
【導入の狙い】ICTを活用して原材料の仕入から、お客さまからの注文、会計までをシームレスに管理する。
【導入の効果】会計の「締め」を待つタイムラグを撤廃。リアルタイムの“見える化”で経営戦略を最適化。
“どんぶり勘定”の家業を継いで、負債2億円からのスタート
▲代表取締役社長 上間 喜壽氏
株式会社上間フードアンドライフは、沖縄県において、持ち帰りの弁当店、仕出しなどを手がける食品関連企業です。
「看板商品は、『沖縄天ぷら』です。これは、例えば関西圏で言うたこ焼きのようなソウルフード(その地域で親しまれている郷土料理)で、沖縄の人はおやつ感覚でいただきます。またソース、ケチャップ、マヨネーズなど、人それぞれにいろいろな味つけで楽しめるので、ほかの地域の天ぷらとは違いますね」(上間氏)
上間氏は大学を卒業後、すぐに同社の経営に携わることになりました。
「就職活動もしないままでいた自分に、両親から『店を継がないか』という話がありました。実際に経営に関わる数字を見たところ、“どんぶり勘定”で驚きました。売上は1億円なのに、負債が2億円となっていたのです。これはなんとかしなければと考え、経営を必死で勉強しました」(上間氏)
注文システムを独自に開発、原価率や粗利益を“見える化”
上間氏はまず新設した工場の生産能力に着目しました。
「明らかに供給過剰でした。キャッシュフローを改善するためには、販売量を拡大する必要がありました。そこで目をつけたのが、沖縄における冠婚葬祭行事のマーケットです。沖縄には独特の先祖崇拝の文化があり、親戚一同が集まる時には100人、200人の仕出し注文も珍しくありません。また価格競争の激しい弁当とは異なり、単価も高く、仕出し部門では強力な競合相手が存在しませんでした。そして、どんぶり勘定であった経営環境への反省から、Excelを使い、仕入価格や販売数などのデータを入力することで経営状態を把握するために必要な数値が得られる仕組みを作り、改良を重ねました。その後は自社オリジナルの注文システムを構築しました」(上間氏)
この注文システムにより、手書き伝票の再入力や数字の誤記もなくなり、業務効率は大きく向上しました。さらにコストを抑えつつ、弁当店の新規開店も進めました。
「1店舗あたり500万円という出店コストを実現するため、iPadを使ったPOSレジを自社開発し、注文システムと連携させました。現在は原材料の単価なども反映させることで、商品一つひとつの製造原価や粗利をリアルタイムで確認できます。また本部のシステムで商品価格を変更すると、変更された商品価格は各店舗にて即時反映されます」(上間氏)
クラウド会計システムと社内システムをつなぎ経理処理も迅速化
こうした数字の“見える化”をさらに進めるため、現在は、クラウドの会計システム「freee」も導入し、リアルタイムで経理データを参照することも可能になりました。
「従来は、さまざまな伝票を税理士さんに渡し、数字をまとめてもらっていたので、報告が上がってくるまでのタイムラグがありました。しかし経営の舵取りをする中、そのタイムラグが待てなかったのです。POSレジと注文システムはすでに稼働しているので、それらと連携する会計システムを導入することで、経理のリアルタイム処理が実現しました」(上間氏)
上間氏は、これまで進めてきたICT化を、次のように振り返ります。
「ICT化そのものが目的ではなく、経営に必要な数字が把握できるようにする過程でICT活用が不可欠だったということです。飲食関連事業では、売上が上がっているという理由で事業を拡大した結果、経営が行き詰まってしまう例が少なくありません。それは原価率や粗利など経営判断に必要な数字が見えないまま突き進んでしまうからなのです。ここをリアルタイムで“見える化”したいという気持ちが、ここまでのICT化につながりました。そして、それをローコストで可能にしたのは、自社で設備を持たずに済み、また、さまざまなシステムと柔軟に連携できるクラウド会計システムを導入したおかげです」(上間氏)
天ぷらを“再提案”して、海外も視野に入れたさらなる発展を
上間氏は、将来的にさらなるICTの活用も検討しています。
「顔認証カメラの利用拡大です。現在は撮影した画像を統計的に処理して男女比やリピーターの購買傾向を探っている時期ですが、次の段階ではリピーターの来店をスタッフに知らせる仕組みを考えています。来店回数に応じたクーポンを、スタッフの『いつもありがとうございます』といった声かけとともに手渡しすれば、ロイヤルティの向上にもつながるはずです。個人情報の管理との兼ね合いから、導入には顔写真を含む会員登録制度の確立が不可欠になりますが」(上間氏)
最後に上間氏に、今後の事業の展望についてうかがいました。
「事業をさらに拡大するにあたり、『天ぷらを再提案したい』と考えています。天ぷらはいわば国民食の一つなのに、牛丼やラーメンと違い複数のチェーンが多店舗展開する状況になっていません。そこでカジュアルな天ぷら店を展開したいのです。また天ぷらは『TEMPURA』として海外でも知られています。アジア各国から近いこの沖縄から、訪日外国人のお客さまに『沖縄に海を見に行き、天ぷらも食べた』とSNSで発信してもらえれば、市場は大きく広がり、将来的には海外進出が実現するかもしれません。そうした未来を信じ、ICTの力を積極的に活用しながら、事業を進めていきたいですね」(上間氏)
会社名 | 株式会社上間フードアンドライフ |
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創業 | 1948年(昭和23年)7月1日 |
本社所在地 | 沖縄県沖縄市登川3-23-20 |
代表取締役社長 | 上間 喜壽 |
資本金 | 990万円 |
事業内容 | お弁当・惣菜販売、沖縄行事商品販売、各種仕出し販売 |
URL | https://uemabento.com/ |
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