ICTコラム

人の生活、仕事を支援するサービスロボットの進化の歴史

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サービスロボットが世界中で生活や仕事を変えつつあります。今やロボットは工場で動くだけでなく、レストランや病院、介護施設、スポーツ競技場など、あらゆる場所で活躍しています。実は皆さんが毎日使っているパソコンの中にもロボットの範疇にある技術が使われています。3連載の第1回となる今回は、そんなロボットが進化してきた背景、歴史について解説をしていきます。

人を直接支援するサービスロボット

 ロボットというと工場で働くロボットを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。小学校の教科書にも載っている工場のロボットは、実は「産業用ロボット(通称:産ロボ)」と言われています。
 一方、皆さんの日常生活で活躍するロボットも存在します。数年前にメディアで話題になったソフトバンク社の人型ロボット「Pepper」を見たことがある人も多いのではないでしょうか。また、レストランで配膳を行う棚のようなロボットが動いているのを見たことがある人もいらっしゃると思います。
 これらのロボットは人を直接支援(サービス)するということで「サービスロボット」と呼ばれています。サービスロボットは人間を直接支援し、人に代わって作業してくれる、私たちにとっての仕事のあり方を大きく変える存在です。作業が効率化され、同じ時間で多くのアウトプットを出すことができるようになります。まさに働き方改革です。生産効率が上がることから会社はより多くの利益を出すことができ、給与アップにもつながります。重労働作業、危険作業をサービスロボットが肩代わりすれば、体の疲労や病気・ケガ、事故などが軽減されます。人口減、少子高齢化の日本においてサービスロボットは「救世主」と言っても過言ではないのです。

ソフトバンク社の人型ロボット「Pepper」

サービスロボットの古い歴史

 サービスロボットの研究は古く、日本では1950年代から始まったと言われています。そして1970年代には世界で初めて二足歩行ロボットが誕生しました。早稲田大学で開発された「WABOT-1」というロボットです。WABOTはその後、改良を加えられ1980年終盤には階段を昇り降りするなど、ロボットには難しいとされていた動きを実現しました。
 その後、WABOTを皮切りに、世界中で多くのロボットが開発されていきました。1999年にはソニーからペットロボットである「aibo」の発売が開始され、翌年2000年には本田技研工業からヒューマノイド型の「ASIMO」が発表されました。ASIMOの動きはあまりにも滑らかで、中に人が入っているのではないかと思ったものです。しかし、これらは大きなビジネスにはつながりませんでした。人間と同じような作業ができるわけではなかったからです。

「ビジネスでもうまくいく」を示したルンバ

 そんなサービスロボット業界に「ビジネスでもうまくいく」と示したのが、2002年に発売を開始したiRobot社のお掃除ロボット「ルンバ」です。ルンバはまさに世界を変えました。ルンバによって家庭内にロボットが入り込み、身近な存在になりました。そして、ルンバはさまざまなことに気づかせてくれました。
 まず、人々の「面倒」を肩代わりすることがサービスロボットの本分であるということです。多少値段が高くても面倒を肩代わりできれば人々は利用します。次に自律的に動くことが大事だということです。この「自律」という言葉は曖昧さを含むものですが、ここでは「人間が指示しなくても動く」ということにしましょう。ルンバは自律的に動き、ゴミを吸い込み、電源ドックに戻ります。この自律性に人は「人間味」を感じるようです。人間味を感じるからこそ愛着を持って長期間使うということになります。それが「ビジネスでもうまくいく」ことにつながりました。

  • iRobot社のお掃除ロボット「ルンバ」

サービスロボット発展期から現在

 「ビジネスでもうまくいく」と示された2000年代~2010年代は、サービスロボット発展期と言えます。現在使われている搬送ロボット、ドローン、倉庫内ロボット、受付ロボット、アシストスーツなどはこの時期に出現します。
 これらによって人間が行う業務は大変革を遂げる可能性が出てきました。人間が「単調」、または「危険」と思っていたさまざまな作業をロボット化できると、人間はより考える仕事、複雑な仕事、安全な仕事に集中できます。もともと人間は面倒な仕事や単調な仕事に対しての耐性がありません。それらの仕事を長期間続けることで精神的に追い詰められたり、生産効率が悪くなったりします。危険な仕事に対しては「積極的にやりたい」と思う人は限られます。これらをロボットにやってもらうという流れは当然のことです。

 試しに自分が面倒だと思う業務、家事、そのほかあらゆる行動を思い浮かべてみてください。日常生活においては、カーテンの開け閉め、食事の準備などでしょうか。業務では、倉庫におけるピッキング作業、レストランにおける配膳など、考えればキリがありません。これらの多くを代替するサービスロボットはすでに誕生しています。
 これにより人は生産効率を飛躍的に上げることができ、時間に余裕が生まれます。余裕時間の多さは幸せ感の高さに比例しますから、サービスロボットはまさに人類に幸せをもたらす技術、世界を変える技術なのです。皆さんもぜひ、本稿で紹介した「サービスロボット」に対し、頭の中でのアンテナを立てて街中を散歩してみてください。さまざまなサービスロボットが動いているのに気がつくはずです。それらサービスロボットは我々人間の将来を幸せなものに変えていく「救世主」ですから、積極的に応援してあげてください。

伊藤 デイビッド 拓史氏

特定非営利活動法人ロボットビジネス支援機構 副理事長 兼 専務理事。一橋大学大学院卒(MBA)。富士通株式会社、富士通インド(Fujitsu India Limited)でITシステムの国内/国際案件に従事。富士通総研、デロイトトーマツコンサルティングファームにてITアドバイザリーとして活躍。その後、経営補佐、ビジネスアドバイザリーに従事。現在は、ロボットビジネスアドバイザリーとして、多くのロボット導入・開発プロジェクト案件を手がける。

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