ICTコラム

ICTでSDGsに取り組む企業の事例

第2回までのコラムでは、社会の高度なICT化がSDGs達成に重要な役割を担っており、Society5.0推進などとの関連が深いことを理解されたと思います。最終回となる今回は、ICTを活用した企業のSDGs貢献事例をジャパンSDGsアワード受賞事例から数社紹介しつつ、SDGs経営の未来像を展望します。

各自治体が取り組むSDGs達成に向けた制度

 SDGsが2015年の9月に採択されてから、すでに6年以上が経ちました。目標としている2030年まで、あと8年です。残念ながら、欧米に比べて日本は出遅れていましたが、加速するのが早いのも日本の特色です。
 政府はSDGsができた2015年9月以降、これを推進するために、全閣僚をメンバーとする「SDGs推進本部」を作り、関係者にSDGs の実践を呼びかけています。そして、内閣府が先駆的な取り組みを選ぶ「SDGs未来都市」※1制度を作り、2018年度からの4年間で124 自治体を選定しましたので、今後、SDGs企業を呼び込むにはSDGs自治体が優位に立つでしょう。
 各自治体は、SDGs経営に積極的な企業を支援するための登録制度なども作っています。都道府県では神奈川県の「かながわSDGsパートナー制度」や長野県の「長野県SDGs推進企業登録制度」があります。熊本県も「SDGs企業登録制度」を発足させました。
 市町村では、埼玉県さいたま市 、静岡県静岡市、岡山県真庭市 、山口県宇部市などの事例があります。これらの取り組みには地元の中堅・中小企業が多く参加しています。

(写真はイメージです)

加速する企業の取り組み (ジャパンSDGsアワードの受賞ICT企業)

 政府は、目標達成に向けた行動計画の発表と同時に、「ジャパンSDGsアワード」※2の表彰を2017年から発表しています(一覧表を参照)。これらの表彰事例の中には I C T が駆使されたSDGs経営の多くの事例がありますので、その一部を紹介します。

  • ※上記は、企業のみを抜粋して掲載しています。

富士通株式会社(神奈川県川崎市)

 SDGs 4「質の高い教育をみんなに」の実現に向けて、SDGs14「海の豊かさを守ろう」をテーマに、水族館と病院内学級をリアルタイムで結んだ遠隔校外学習を支援しています。
 病気などにより校外学習参加が困難な児童生徒が対象で、5Gでの高精細映像伝送、VR、水中ドローンなどの先端技術を活用しています。
 新型コロナウイルス感染症流行によって遠隔教育の需要が高まる今日、遠隔教育の実施を検討する国内外の多くの教育機関・団体の活動に貢献できます。
 中堅・中小企業でもICT企業では次の表彰事例がそれぞれ海外や国内展開の事例として参考になります。

株式会社シュークルキューブジャポン(東京都千代田区)

 未電化地域の住民が約6億人存在し、高速通信網も未発達なアフリカの未電化・未電波地域に、再エネと通信によるデジタルインフラを構築し医療・教育に貢献しています。
 太陽光発電とインターネット通信を組み合わせたサービスを「Made with Japan」※3で実現。未電化・未電波地域の村落へ電気と通信の提供を実現する「TUMIQUI Smart Kit(ツミキ・スマート・キット)」の導入により、医療環境が改善され、1,000件以上の出産や診療が明るい光の下で安全に行われるなどのインパクトを与えました。

株式会社エムアールサポート(京都府京都市)

 道路測量情報の見える化とその活用手法による新しい働き方の創出にICTを活用した事例です。従来危険な道路上で行っていた舗装修繕工事に係る業務を、ICTを用いることで、室内のパソコンで行えるようにし、安全性や働きやすさの向上に貢献しています。
 その結果、重大事故のリスク軽減や、今まで工事に携わることが難しかった未経験者、身体障がい者、女性なども就労できる環境を創出したほか、就労した人の技能向上の効果も確認しています。また、仕事を通してパソコンの操作方法習得を含む労働者のICT教育にもつながっています。

SDGs経営の未来像(SDGsの5原則)

 企業によるSDGs経営の要諦は、社会課題解決と経済価値の同時実現を狙うマイケル・ポーター教授らが提唱するCSV(共通価値の創造)※4として、本業をうまく活用することです。
 今後のSDG s経営の未来像としては、本アワードの評価基準にもなっている、SDGsの5原則(以下参照)が重要です。受賞企業の活動は、これらの原則を充足したSDGs経営の事例といえます。

①ほかにも応用が利く普遍性。
②すべての人を取り残さない包摂性。
③関係者を結集する参画型。
④経済・環境・社会の3要素を含める統合性。
⑤透明性と説明責任。

 今後さまざまな ICT 企業の取り組みにより、 SDGsが目指している、well-being(より良き生活、より良き幸せ)に向けた展開が進むことが期待されます。

※1 SDGs未来都市:2018年度から日本政府により選定されている、地方創生の促進を目的にSDGs達成に向けた取り組みを提案する都市。
※2 ジャパンSDGsアワード:SDGs達成に向けた優れた事例を、日本政府が表彰するもの。
※3 Made with Japan:「世界の人々とともにSDGsの目標を達成し、一緒に未来を作りましょう」という概念。
※4 マイケル・ポーター教授らが提唱するCSV(共通価値の創造):営利企業が社会ニーズ(社会課題の解決)に対応することで、経済的価値と社会的価値をともに創造しようとするアプローチのこと。

笹谷 秀光氏

千葉商科大学教授・ESG/SDGsコンサルタント。東大法卒。1977年農林省入省、農林水産省大臣官房審議官などを経て2008年退官。同年伊藤園入社、取締役などを歴任し2020年4月より現職。「産官学」すべての実務経験を活かし、サステナビリティや企業の社会的責任、地方創生などをテーマに、特にESGやSDGsに対応した企業ブランディングと社員士気の向上を通じた企業価値を高めるためのサービスを提供。現在、幅広くパネリストや講師として登壇。著書『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社)など。笹谷秀光公式サイトhttps://csrsdg.com/

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