ICTコラム

SDGsにICTが果たす役割

温室効果ガス排出量の削減、資源利用の効率化、生活・教育の質向上など、社会の高度なICT化がSDGs達成に重要な役割を担っています。今回は、Society5.0推進などとの深い関連も含め、SDGsにおけるICTの役割を解説していきます。

加速するSDGs経営

 政府はSDGsを推進するために全閣僚をメンバーとする「SDGs推進本部」を作り、SDGsの重点分野を「Society5.0」「地方創生」「次世代・女性活躍」としています。一般にSDGsの推進を呼びかけ、最近では企業や自治体などに広がり、社会にますます浸透しつつあります。
 SDGsは、幅広く、経済・環境・社会の課題をカバーしますので、企業経営に直結します。
 今や、ビジネスではSDGsは必須の事項で、ビジネスパーソンの「新常識」となりました。
 そして、企業はかつての寄付的、慈善活動的なアプローチではなく、本業を活かしたSDGs活動を本格化させています。経団連はSDGsを盛り込んだ憲章改定を行い、Society5.0を目指したSDGsを推進していますし、ESG投資※1の動きが注目される金融界でも日本銀行協会や日本証券業協会がSDGs宣言をしています。
 最近、日本の産業界の動きが加速してきました。産業界では広範囲に影響を及ぼす大きなプラットフォームを形成する企業(自動車企業、大手流通、大手建設業、大手ICT企業など)がSDGs経営を、企業価値を高める方向に進化させています。企業にとっては、世界に対し自社の技術・製品・サービスの強みをSDGsと関連づけて説明し、発信できる機会もあります。例えば、2025年の大阪・関西万博では「Expo for SDGs」を打ち出しています。世界中から影響力の強い視察団やメディアが訪日することが予想されるため、その時に取り組みを発信する「ショーケース※2」のような効果も狙っていくことができます。
 これからは自治体、企業、そのほかの関係者の間で「SDGs仲間」がどんどん生まれてくるでしょう。

SDGsとSociety5.0、脱炭素に必須のICT

 SDGsの重点分野として挙げられる「Society5.0」とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)と定義されています。
 狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、新たな社会を指しています(図1参照)。「Society5.0」はIoT(モノのインターネット)、ロボット、(AI人工知能)、ビッグデータなどの新たな技術を、あらゆる産業や社会生活に取り入れてイノベーションを創出し、一人ひとりのニーズに合わせる形で社会課題を解決する新たな社会とされています。SDGsの達成にも大いに貢献するものです。
 この考えは、第5期科学技術基本計画※3において我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されたものです。
 さらに、SDGsとも深く関わり、喫緊の課題でもある脱炭素にもICT技術が必須です。パリ協定では、産業革命以前に比して世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑えることが目的として挙げられ、平均気温上昇「1.5度に抑制」を目指すことが盛り込まれています。昨年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では「1.5度」に向けて一層のコミットメントがなされました。各国は対策に動き出しています。

 SDGsでは目標13「気候変動」について三つのターゲットの記載があるほか、クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)への転換が求められ、目標7でこれを掲げています。また、脱炭素社会の構築にはさまざまな新技術が必要で、SDGs目標9も重要です。脱炭素の情報開示にはTCFD※4の動きが重要で、例えば二酸化炭素の計測などでもICTは必須です(図2参照)。

SDGsの5PとICT

 5GなどICTの先端技術は、ユーザーから見て、どのように使えるのかを理解してもらう必要性があります。そのため、ICT(5Gなど)は“5P”の役に立つものとして理解するとよいと思います。
 5Pとは、SDGsを盛り込んだ国連合意文書「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」の前文に記載されているものです。最初にPeople(人間)、2番目がProsperity(豊かさ)、3番目がPlanet(地球)、4番目がPeace(平和と公正)、それから最後にPartnership(パートナーシップ)で、SDGsは「この五つのPを実践すること」ととらえると理解しやすいと思います(図2参照)。例えば5Gは、この5Pすべてにおいて効果的に役立ちます。
 そのため、ICT企業がSDGsを実践する場合、自分たちの本業力が5Pのどこに活かせるかを考えていくことが大切です。経営においても自分たちの技術やサービスを5Pに活かすという考え方ができますし、社員もより一層当事者意識を持つことで、本業の中でSDGsの達成に貢献していきたいという積極的な気持ちになります。特に、社員の社会課題に対する理解について力量がある組織は、SDGsの良さをもう一度改めて見直して、経営の中にSDGsを実装していく必要性があると思います。

※1 ESG投資:Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)に配慮している企業を重視、選別した投資のこと。
※2 ショーケース:製品などの最も優れた品質や特徴を披露・発表すること。
※3 第5期科学技術基本計画:内閣府が2016年度から5年間の日本の科学技術政策の方向性を示した計画。
※4 TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略称。投融資の対象企業の財務に気候変動から受ける影響の考慮を求めたり、企業に情報開示を促す。

笹谷 秀光氏

千葉商科大学教授・ESG/SDGsコンサルタント。東大法卒。1977年農林省入省、農林水産省大臣官房審議官などを経て2008年退官。同年伊藤園入社、取締役などを歴任し2020年4月より現職。「産官学」すべての実務経験を活かし、サステナビリティや企業の社会的責任、地方創生などをテーマに、特にESGやSDGsに対応した企業ブランディングと社員士気の向上を通じた企業価値を高めるためのサービスを提供。現在、幅広くパネリストや講師として登壇。著書『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社)など。笹谷秀光公式サイトhttps://csrsdg.com/

PDF版はこちら

関連記事

企業ICT導入事例

PAGE TOP