ICTコラム
「サステナビリティ」が企業活動に求められる時代に記事ID:D40026

気候変動や経済格差の拡大など人類の抱える大きな問題を解決し、地球を次世代へつないでいくための開発目標「SDGs」の重要性が高まっています。そこでSDGsについて、あらためて基本的な考えを見直しつつ、企業活動との関連(特に中小企業が取り組むべき理由)や現状の取り組みについて3回連載で解説していきます。
子孫のために取り組むべきサステナビリティとSDGs
多様な関係者と調整し、社会課題解決に向かうビジネスの「国際標準の話題」のポイントは何でしょうか。それが、よく聞く「サステナビリティ」(持続可能性)という言葉です。今は持続可能な社会づくりにすべての組織が貢献していくべき時代です。
サステナビリティを嚙み砕くと、「世のため、人のため、自分のため、そして、子孫のため」を考え、行動するといった意味になるでしょう。「子孫のため」という世代軸が入っていることが要点です。
そして、世界のサステナビリティに向けた経済・社会・環境の要素を洗い出し2030年に向けた目標としてまとめられたものがSDGs(エスディージーズ)です。
今や、SDGsという言葉を新聞などで見かけない日はなくなりました。電通の調査(第4回「SDGsに関する生活者調査」/調査期間:2021年1月22~25日)によれば、国民全体の認知度は54%とのことです。その象徴が、SDGsが2021年「第34回 小学館DIMEトレンド大賞」に選ばれたことです。また、同じく2021年は『現代用語の基礎知識』選の「ユーキャン新語・流行語大賞」(第38回)で2021年ノミネート語30選の一角に「SDGs」が入りました。
地球規模の課題を解決する変革の時代の羅針盤となるSDGs
あらためて確認すると、SDGs は「Sustainable Development Goals」(サステナブル・ディヴェロップメント・ゴールズ)の頭文字の略語で「持続可能な開発目標」と訳されます。分かりやすく言うと、地球規模の課題を踏まえ未来について語るための世界の「羅針盤」です。
SDGsを知るには、まず、それが盛り込まれた『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』という国連文書の重要性を認識することです。SDGsは35ページにわたるこの国連文書の真ん中15ページ分です。SDGsは、人・社会・地球などの望ましい未来像を目指すための、貧困撲滅、健康、環境、技術革新、協働などの17の目標(図1参照)と169の具体的活動(ターゲット)※によって構成されています。先進国や途上国、政府や企業といったすべての関係者が、自主的に取り組む目標です。
これが国連加盟193ヵ国全員の合意文書であることが極めて重要です。だからこそ世界を見る上での共通言語なのです。そして今やSDGs は、この169のターゲットレベルまでよく読み込み、そこから自分や組織のやるべきことを洗い出す段階に入っています。それを理解せずに、SDGsのバッジがどうだという時代は、世界ではすでに終わっているのです。
国際的羅針盤がなぜ必要か。それは、予期せぬ危機が次々と世界で起きて、我々は、ビジネスでも生活でも密接に世界とつながっているからです。SDGsを盛り込んだ「2030アジェンダ」のタイトルには「我々の世界を変革する」とあり、まさに変革の時代に役立つように設計・策定されたものです。

企業がSDGsに取り組む意義とメリット
SDGsでは、企業の「本業力」を使って創造性とイノベーションを起こし、社会課題を解決するという、本業活用が推奨されています。リスクを回避しチャンスをつかんで、社会課題を解決しながら経済価値も上げるところに大きな特徴があるのです。
SDGsへの取り組みにはさまざまなメリットがありますが、大きく分けると図2のようになります。このような広範な効果があるSDGsを経営に導入すると、組織内変革が進み、対外的にも企業価値が向上します。

SDGs活用は、株価、ブランディング、人材確保など、すべてに関係します。SDGsは、自主的取り組みが基本です。やれる人がやれるところからすぐにでも着手しようというルールです。このルールは怖いです。どんどん差がつくからです。横並び思考から一刻も早く抜け出して、すぐにでも自社は何をすべきか、SDGsをヒントに考えなければいけません。
ICT関連は、特に目標9(産業基盤・イノベーション)に関係しますが、ICTが最終的に使われる出口のところが重要です。例えば、医療系やエネルギー関係で活用されれば、間接的に目標3(健康)や目標7(クリーンエネルギー)の達成に貢献していると考えられます。
このようにSDGsとICTは幅広い分野で関わりをもつといえるでしょう。次号からは、この両者のつながりを中心に最新のSDGs情報をお伝えします。
※ 169の具体的活動(ターゲット):農林水産省のサイト(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/sdgs_target.html)を参照ください。

笹谷 秀光氏
千葉商科大学教授・ESG/SDGsコンサルタント。東大法卒。1977年農林省入省、農林水産省大臣官房審議官などを経て2008年退官。同年伊藤園入社、取締役などを歴任し2020年4月より現職。「産官学」すべての実務経験を活かし、サステナビリティや企業の社会的責任、地方創生などをテーマに、特にESGやSDGsに対応した企業ブランディングと社員士気の向上を通じた企業価値を高めるためのサービスを提供。現在、幅広くパネリストや講師として登壇。著書『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社)など。笹谷秀光公式サイトhttps://csrsdg.com/
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