ICTコラム

「物流2024年問題」の背景と解決すべき課題

記事ID:D40058

物流業界を取り巻く環境は、この数年間で激変しています。2017年頃から、深刻なドライバー不足により、「物流クライシス」という言葉が登場しました。クライシスは直訳すると危機という意味ですが、物量と運び手の需給バランスが崩れ、モノを届けられないという状況が発生し始めました。コロナ禍で物量が減少し一時的に落ち着きましたが、昨今「2024年問題」とさまざまな場面で取り上げられている通り、再び物流危機が訪れようとしています。3回連載の初回となる今回は、その背景や課題について解説していきます。

物流業界における2024年問題

 働き方改革関連法の施行により、時間外労働の上限規制が大企業では2019年4月から、中小企業は1年遅れの2020年4月から適用されています。しかし、建設業やドライバー職などの一部の特定職種は5年間の猶予が与えられていたため、2024年4月から適用されました(図1参照)。

図1:働き方改革関連法案(一部抜粋)

 そのため、ドライバー職の時間外労働は年間上限960時間以内に収めないといけなくなりました。また、年間の基準だけでなく、1日の拘束時間(労働時間+休憩時間)の上限も今まで16時間以内と定められていたものが、15時間以内と1時間短縮されました。この労働時間の短縮とトラックドライバー人口の減少とが相まって、このままであれば2030年には貨物の約35%が運べなくなるという試算が発表されています。
 実際、すでに我々の生活にも影響が出ています。例えば、あるコンビニチェーンではお弁当の配送回数をこれまで1日3回だったところを2回に変更しています。もしかしたら、よく行くコンビニがなんだか最近品薄なことが多いな、と感じている方もいらっしゃるかもしれません。また通販を利用されている方であれば、今までは注文した翌日には受け取れていたものが、いつの間にか翌々日発送になっていた、という経験があるかもしれません。このように、物流サービスレベルを落とさざるを得ないケースが出始めています。

配車システム導入による効率化

 2024年問題を解決するためには、生産性の向上は避けては通れません。その手段の一つとして期待されているのが、デジタル化です。物流業界は特にアナログな業界で、労働集約型の産業です。言い換えると、デジタルの力によって生産性が向上する余地が非常に大きいとも言えます。
 例えば、日々の運行シフトを決めることを「配車」と言いますが、この配車組みは通常ベテラン配車担当者が長年の経験から、どのトラックにどの貨物を載せるのかを決めて、紙やエクセルにまとめていることが多いです。アナログな作業なので、日別・トラック別の積載率や配送効率を正確に把握することができず、本当にその配車組みが最も生産性が高いのかどうかを検証できません。
 これに対し、配車システムを導入することで、トラック別の積載量や稼働時間が可視化され、より効率的な配車ができるようになります。さらに、最近では配車システムにAI機能が搭載され、その日の物量や配送先、天候、道路交通事情を加味してAIが最適な運行ルートを組んでくれるものまであります。
 配車はブラックボックス化することが多い業務のため、デジタル化には生産性が向上するだけでなく、属人性も排除できるというメリットがあります。

待機時間削減の取り組み

 このように物流会社の自助努力で解決できる部分がある一方で、メーカーや卸などの荷物を出す側、いわゆる荷主企業にも協力してもらわないと改善しない部分もあります。
 トラックドライバーの労働時間が長くなっている要因の一つに、長時間にわたる待機時間・荷待ち時間が挙げられます。メーカーなどの工場や物流センターに積み込みに行った際に、まだ出荷の準備が整っていなかったり、ほかのトラックも積み込みのために行列をなしていたりして、3時間以上待たされることもあります。
 しかし、荷主企業側は物流現場で発生している実態を正確に把握していないケースも多々あります。図2を見ていただくとそのギャップがよく分かると思います。国土交通省が荷主企業と物流会社の双方にそれぞれアンケート調査を行った結果です。「荷待ち時間が発生している」と回答した荷主企業は20.9%だったのに対して、物流会社は69.1%と大きな認識のずれがあります。また、別の年の同調査では、「荷待ち時間が発生している」と回答した荷主企業でも、荷待ち時間は「30~49分」と回答した企業が最も多く、「50分未満」がほとんどであったのに対して、ドライバーが認識している荷待ち時間の平均は1時間34分という結果も出ています。

図2:荷主企業と物流会社の認識差異

 この待機時間を削減するためには、荷主に対して実態データを提示して交渉する必要があります。そのためにはデジタルタコグラフ(速度や走行時間・待機時間、走行距離などの情報を記録するデジタル式の運行記録計)や運行システムを導入し、待機している時間を記録に残しておかなくてはいけません。正確なデータの提示が、認識を改める、配送効率改善の第一歩となります。
 対応が進んでいる荷主企業では、バース予約管理システムを導入して待機時間を削減しようと取り組んでいます。バース予約管理システムとは、ドライバーや運送会社が事前にバース(荷卸しをする場所)での積み込み時間を予約することで、荷待ち時間を削減できるシステムです。物流センターや倉庫側も、予約状況やトラックの位置情報をリアルタイムで確認できるため、入出荷の準備を効率的に行うことができるようになります。
 配車組みや待機時間削減はあくまでも一例で、このほかにも解決すべき課題は多々あります。いずれにせよ、物流業界における2024年問題を乗り越えるためには、物流会社と荷主企業の双方でDXを推進していく必要があります。

※ 国土交通省「トラック輸送状況の実態調査結果 令和2年度」

河内谷(かわちや)庸高(のぶだか)

船井総研ロジ株式会社 執行役員 コンサルティング本部 本部長。2006年、船井総研グループに入社以来、運輸・物流業を中心に、マーケティング戦略の立案や、DX・デジタル化といったテーマをメインにコンサルティングを行っている。物流企業経営研究会「ロジスティクスプロバイダー経営研究会(会員数約350社)」を主宰。共著に『90日で業績アップを実現する「ローコードDX」』(クロスメディア・パブリッシング、2023年)。

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