ICTコラム

消費者向けのメタバース活用法

記事ID:D40048

テクノロジーの進化により、メタバースの活用方法も多岐にわたり、さまざまな事例が見られるようになってきました。この活用方法について、前号で企業内に閉じた利用について紹介しましたので、連載最終回の今回は、消費者向けのメタバースの活用例を解説します。

消費者向けメタバース活用における三つの方法

 メタバースには「人工的な三次元空間内で、複数のユーザーとコミュニケーションが取れる」、「臨場感の高い体験が可能」といった特徴があり、これらの特徴を活かし、さまざまな業界において活用が始まっています。その中でも消費者を対象にしたメタバース活用については、各業界の特性や課題に基づき、多種多様な活用方法が検討され始めています。これらは、主に「イベント開催」、「仮想店舗」、「観光地・街並み再現」の三つにカテゴライズできますので、それぞれの活用方法について以下に解説していきます。

イベント開催への活用

 昨今、新型コロナウイルスによる影響でリアルイベントが減少していますが、メタバースを活用することで遠隔地から人工的な三次元空間に入り、リアルイベントに近い形でイベントに参加することが可能になっています。
 メタバースを活用したプロモーションイベントでは、新商品や新サービスを再現した3Dモデルをメタバース空間に配置し、消費者が空間内を移動しながら見られるようにすることができます。そのため、ウェブ会議ベースのイベントと比較し、消費者はより臨場感のある体験が可能です。さらには、「新商品の細部まで近づいて見る」や「新サービスが実際に使われる姿を目の前で見る」といった、人工的な空間ならではのコンテンツとして体験することができるなど、従来よりもインパクトのあるイベントを体験できます。
 例えば、オンライン会議では一方的な説明になりがちな教育イベントを、インタラクティブな体験型イベント(写真①参照)として開催することで、消費者 は現地に行かずに施設見学を体験すること が 可 能 で す。施設見学に任意の3Dオブジェクトや360度画像を配置することで、現実では展示することが難しい貴重なコレクションや実際には立ち入り禁止の区域などを再現して間近で見せることができます。教育イベントでは、文化祭やオープンキャンパスなどの学校行事をメタバース空間上で行うことで、時間や場所にとらわれずさまざまな人が学校の雰囲気を味わいつつ交流することができます。
 このほか、メタバース空間上でコンサートや卒業式などのライブイベントを開催すると、会場の人数制限や立地にとらわれず多くの人が手軽にイベントに参加することができます。また、映像通信によるライブイベントと比較し、アバター※1を活用したインタラクティブな体験も楽しむことができます。さらには、天候を変えるなどの現実では不可能な演出もメタバースライブでは可能になります。

写真①:子ども向け金融教育イベントをメタバース空間で開催したもの。金融という難しいテーマだが、ゲーム感覚で楽しめるようにすることで、話を聞いてもらえるように工夫している

仮想店舗への活用

 百貨店、銀行などを人工的な三次元空間に作成し、仮想店舗として現実の店舗のように商品販売や接客を行うことも、メタバースの有効な活用方法の一つです。
 仮想店舗では、消費者は店内を自由に移動し、複数人で話しながら商品ディスプレイの中から商品を選択し、購入することができます。ECサイトでは数字と画像でしか判断できない商品のサイズ感や特徴も、仮想店舗であれば3Dオブジェクトにより直感的に判断できるようになり、もし仮想店舗内にスタッフがいれば直接相談することも可能です。さらに販売者は、内装や光の演出によってお店の雰囲気や世界観を空間上で表現し、商品とともに訴求することもできます。
 また、仮想店舗内では、現実の銀行や保険窓口と同じように顧客と商談ができ、新しい顧客タッチポイントとして注目されています。ウェブ会議ベースの商談と比較し、アバターを介することで精神的なストレスを受けにくくなり、本音を引き出しやすくなるのもメタバースのメリットの一つです。このほか、チャットやオンライン会議での商談と比較し、商材の3Dモデルやエフェクト※2を活用することでより訴求力の高い提案を行うことができるのも魅力です。

観光地・街並み再現への活用

写真②:NTTデータとバチカン図書館が協力し、バチカン市国にある歴史的建造物グレゴリアンタワーの3Dモデル化に成功

 観光地・街並み再現は、すでに広くメタバース活用が進められている領域です。
 近年、写真から3Dモデルを作るフォトグラメトリ技術※3やレーザー光を用いて物体の形状を把握するレーザースキャン技術の進化・活用により、町や観光地、歴史的建造物の3Dモデル化が盛んに行われています(写真②参照)。それらを人工的な三次元空間内へ配置し、中を消費者に移動してもらうことで、町や観光地の魅力を直感的に発信することが可能です。さらに、空間内に町の名産品を買うことができる仮想店舗を配置することで、地方創生にも貢献できます。また、歴史的遺産・文化財の保全としても3Dモデル化による再現は有効であり、国や自治体からも注目を集めています。
 このようにメタバースの特徴を活かした活用方法は豊富にありますが、まだ発展途上であり、さまざまな業界・企業が日々模索を続けており、目的に合わせた新しいメタバース活用方法を検討しています。既存の活用方法にとらわれず、現状ではどのような課題があり、どこにメタバースが活用できそうか、上流工程からしっかり考えることがメタバース活用の近道となるでしょう。

※1 アバター
英語でavatar、日本語で化身、権化を意味し、ユーザーの分身のように表示させるキャラクターのこと。
※2 エフェクト
映像などに加工処理を行い、さまざまな効果を加えること。
※3 フォトグラメトリ技術
対象をさまざまなアングルから撮影し、その写真を解析してリアルな3DCGを生成する技術。
※4 PoC
Proof of Conceptの略で、日本語で「概念実証」と訳される。新しい手法などの実現可能性を見いだすために、試作開発に入る前の検証を指す。

大髙 直哉氏

NTTデータ 技術革新統括本部 技術開発本部 イノベーションセンタ所属。2021年NTTデータ入社。メタバースの最新動向や関連技術の調査を推進し、先進顧客とのPoC※4を通したビジネス活用性の検証を行っている。

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