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ICTコラム

第3回 (最終回)日本農業のこれからの展望と未来

 前回は最先端ICTを活用した農業の代表例である「次世代施設園芸」の取り組みや、協業パートナーとのプロジェクトを紹介しました。最終回となる今回は、日本農業のこれからの展望と未来について解説します。

「次世代施設園芸」に対する 地域からの期待感

 農業を地域経済の重要な基盤と考え、後継者問題や耕作放棄地問題などの課題に積極的に取り組む自治体が増えています。私が注目しているのは、これら課題克服の手段として「次世代施設園芸システム」に対する関心や期待度が高まっていることです。

  次世代施設園芸は、大規模な温室で温度、湿度、二酸化炭素、日射量などをICTでコントロールし、データを活用しながら安定的な栽培や、収穫量の増加を実現します。このような高度ICT活用による生産性向上というメリットはもちろん、加えて、施設ができることで地域の農業における課題解決の一助になることも期待されます。一方、大規模面積での耕作=比例した従業者数が必要という労働集約型モデルでは、人手不足の時代では立ち行きません。前述した生産へのICT活用のみならず、労務管理や工程管理の最適化にもICTを活用することで「大規模な農業」と「省力化」の両立を実現します。そのため地域の将来につながるサステナブルな農業を実現する手段として期待が高まっているのだと感じています。

さまざまな可能性が広がる 「農業エコシティ」

 弊社では、農業を軸にして“経済の循環が生まれる街づくり”という観点から「農業エコシティ」というビジョンを描いており、そのコンセプトに興味を持っていただける自治体が増えています(図1参照)。

 「農業エコシティ」とは、自治体や民間企業が協力し、関連産業(物流、加工、倉庫、地域の再生可能エネルギーなど)を集積させ、複数の農業法人に物流などの機能をシェアするエコシステムを構築するものです。例えば、農業エコシティにローカル5G(第5世代移動通信システム)などが敷設されると、こうしたインフラ資源もシェアすることができ、ロボティクス化や遠隔営農支援による「なるべく人手を介さない農業」の実現(自動収穫ロボットによる作業軽減、自動運搬車で集荷場まで農作物を共同運搬、食品の共同加工工場の制御)など、さまざまな可能性が広がります。

 また、このように農業を切り口に敷設されるローカル5Gなどの無線インフラを、農業だけに限定せず、さまざまに活用事例を増やしていくことが重要です。その具体的事例として、周辺インフラ保全(水位や土砂災害の検知)や社会福祉(見守り)への活用など、街づくりの基盤に発展させていくことが可能です。弊社は、農業の生産にとどまらず、第6次産業までを支援することに加え、農業以外の地域のお困りごとに対してトータルでご相談いただける存在でありたいと思っています。そして、ここまで実現すれば、地域ブランドを創出するような「クラスター」へと発展させることができます。第1次産業を切り口に、学術・研究機関や加工品メーカーなどの第2次産業が集まり、さらに文化が生まれ、観光価値が創出されていけば、第3次産業まで視野に入れたプロジェクトに昇華させることも夢ではありません。

 NTTアグリテクノロジーは、地域の良きパートナーとなれることを目指して、このような構想の具体化に向けて歩み出しています。

農業は“アフターコロナ”の希望

 第1回のコラムでも申し上げましたが、新型コロナウイルスの影響で「食」の確保が国の安全保障上の課題になりつつあります。食糧輸出大国が自国供給を優先する保護貿易に走ったことで、日本国内で生鮮品が高騰しました。畜産においても、例えば牛肉では米国の食肉加工場での新型コロナウイルス蔓延、また鶏肉では輸出大国のブラジルにおいて国全体で新型コロナウイルスの患者が急増していることに端を発して、その確保が危ぶまれる事態となっています。

 こうした中、日本国内の食料自給率の向上があらためて見直されており、現実的な解決策の一つとして大規模な農業が注目されていると感じています。ただ、前述したように耕作面積に比例する従業員数は少子高齢化の社会において確保が難しいため、省力化との両立が必須であり、結果としてICTの活用が待ったなしとなっています(図2参照)。

 幸い日本はさまざまなインフラが整い、教育や技術なども優れたものを数多く保有しています。また「モノづくり」に代表されるように、世界に通用するプロダクトやサービスを生み出す力があると思います。先人が築き上げてくれた既存の財産の上に、挑戦と革新を続けることで何らかの打開策が見つかると信じています。

 日本は、この流れをチャンスに変えることができると思います。世界でも稀な少子高齢化社会で磨いた生産性の高い日本農業を世界に供給できるくらいになるまでの底力があると考えています。

日本の技術を「世界」と「つなぐ」

 新型コロナウイルスで時代が変わるかもしれませんが、世界に目を向けると、日本と異なり、爆発的な人口増加が続いています。このままの状況だと、世界的にも深刻な食料不足に陥ることが懸念されています。その時までに自国だけでなく、世界に対しても食品生産のノウハウを提供できる国になっていること、また食料を提供できる国になっていること、それによって信頼され、頼りにされる国として、日本の存在感を発揮できるようになるはずです。

 NTTアグリテクノロジーは、その一翼を地域の皆さまとともに担い、日本の技術を「世界」と「つなぐ」という域まで到達したいと思います。

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酒井 大雅氏

株式会社NTTアグリテクノロジー 代表取締役社長

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