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電話応対でCS向上コラム

第92回 「言葉に潤いを!」

10月号で「心を打つ言葉」について書きました。さまざまな紆余曲折、批判はあったにしても、オリンピック、パラリンピックは私たちに多くの感動を残してくれました。しかし、それも9月になりますと、水が引くように印象が薄れて行きました。そして私たちは、今、渇いた言葉の中に取り残されているように思うのです。殺伐とした世界情勢や国内の政治情勢が、そんな不安感を生み出しているのかも知れません。今回は、今必要な潤いのある言葉について考えます。

電話応対者への期待

 この稿でも何度か書きましたように、進むIT化が言葉の貧困化を生み、コミュニケーション力の低下をもたらしています。IT用語が無秩序に氾濫し、言葉の伝達力を落としています。言葉の乱れは思考力・判断力にも影響します。豊かだった日本語の語彙も減りました。日本人の精神構造を支える思いやり、おもんぱかり、惻隠そくいんじょう※まで失われようとしています。そして何より危惧されることは、IT化の便利さや効率性に身をゆだね、失ってゆくものに疑問を抱かない世代が増えつつあることです。言葉を大切にする電話応対業務に携わる皆さんにこそ、この現状を打破する力があると私は思っています。前回、AIにはできないが、人間だからこそできる言葉の力のことを書きました。それはスキルでは身につきませんし、言葉だけを磨くものでもありません。言葉を話す人間そのものの自己変革が必要だからです。
 一つの具体例でお話しします。

さざ波のような感動を 大切に

 初代の女性衆議院議員の一人で、女性解放運動のリーダーとして知られる加藤 シヅエさんは、104歳で亡くなるまで、女性解放のために、その中心となって活動を続けてこられました。晩年にその活力、長寿の秘訣を問われて、①一日コップ2杯の牛乳を飲む。②一日100回深呼吸。③一日10回、さざ波のような感動をする。④一日10人の人に会う、それもできれば初対面の人と。と答えています。私がこのことを知ったのは平成の初め、まだ現役の頃でした。それでもこの加藤さんの「さざ波のような感動」という言葉が印象深く、今も残っています。牛乳と深呼吸は、その気になれば容易にできるでしょう。一日10回の感動も、「さざ波のような」という緩い縛りであれば、直接の体験でなくても、新聞や本を読む、テレビを見る、ラジオを聴く、人と話をする、それだけでも何とかできそうです。ただ10人の人に会う、それも初対面と限定されますと、政治家の加藤さんにはできても、私どもには難しい目標だと思いました。それに今のコロナ禍、オンラインの時代には、そのハードルはさらに高いでしょう。しかし、この4点は、IT時代のコミュニケーション力強化のためにも、脳の活性化のためにも、継続したい努力目標となるでしょう。

潤いのある言葉とは?

 AIの話す言葉に潤いまで求めても、それは当分は無理でしょう。AIの言葉は、記号化された情報に過ぎないのですから。しかし、人間が話す言葉には、今その潤いが求められているのです。AIにできないこと、それは必然的に人間が担わなければならないことです。
 人間が円満な人格を保つためには、知・情・意のバランスが必要だと言われています。AIが膨大な知識を持ち、情報を伝える言葉を操れるようになったとしても、“情”の世界には、容易には踏み込めないでしょう。さざ波のような感動に胸をときめかし、納得し、共感し合える言葉、それが潤いのある言葉です。煎じ詰めれば、AIオペレーターの応対に不満なお客さまが、人間の応対者に求めてくる究極のサービスとは、分かりやすい説明力と癒やしの言葉だと私は思っています。常に“情”を大切にしてください。“情”を失った時、言葉は渇きます。

パターン化した言葉で 終わらせない

 最後に、潤い言葉、癒しの言葉を身につける、簡単なトレーニング例をご紹介します。
 パターン化した言葉は心が消えて渇きやすいのです。その言葉にもう一言を添えることで言葉が潤います。「有難う」の後に「とても感動しました」「嬉しかったです」。「お世話になりました」の後には「良い勉強になりました」「最高でした」。「お気をつけになってください」の後に「今夜から気温が下がるようですから」。「申し訳ございません」の後には、「おっしゃっていただいて、助かりました」「肝に銘じて気をつけます」……。
 プラス一言がパターン化しないよう、場に合った柔軟な一言を工夫してください。

惻隠そくいんじょう:哀れに思う気持ち。

岡部 達昭氏

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

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