電話応対でCS向上コラム
社会保険・労働保険の基礎と実務記事ID:C10127
社会保険は、働く人々とその家族を守る重要な制度です。それぞれの概要を理解することは、企業の労務管理担当者のみならず、働く個人にとっても重要です。本稿では、その基本的な仕組みと実務的なポイントを解説します。特に退職後の保険継続や扶養の取り扱いについては気になるポイントではないでしょうか。
社会保険・労働保険の種類
会社で加入する社会保険・労働保険は次の種類があります。
1.健康保険は、医療費の一部を負担することで、被保険者やその家族を経済的に支える役割を果たします。
2.厚生年金保険は、年を取ったらもらえるというイメージが強いですが、高齢のほかに、障害や配偶者の死亡があった時にも生活を支える制度です。
3. 介護保険は、介護に必要な支援を提供します。40歳から65歳までは第二号被保険者として社会保険で保険料を徴収しています。
4. 労災保険は、業務中や通勤途中の事故によるケガや病気に対する補償を目的としています。
5. 雇用保険は、失業したり、育児や介護で仕事ができない時の生活を支える給付や、教育訓練の支援を提供する制度です。
退職したら、どうなるのか?
会社を退職したら、社会保険はどのようになるのでしょうか。
まず、雇用保険と労災保険は労働者のための保険ですから、加入し続けることはできません。新しい会社に入社したら、そこで手続きをします。雇用保険は失業時に給付を受け取ることができるので、会社から離職票を受け取ったらすぐにハローワークへ行って手続きをします。「失業」は、仕事を探しているが就職していない状態を指します。そのため、求職活動をしながら雇用保険の基本給付を受け取ることになります。
社会保険(ここでは年金、健康保険、介護保険を言います)は、日本に住む人全員が加入する保険で、会社で社会保険に加入しない場合は、違う方法をとることになります。パターンは以下の通りです。
(1)国民年金、国民健康保険に加入する
お住まいの市区町村で手続きを行います。
(2)配偶者の被扶養者になる
配偶者の会社に依頼し、健康保険の扶養と、年金の第三号被保険者の手続きをします。
(3)家族の被扶養者になる。年金は国民年金
家族の会社に依頼し、健康保険の扶養の手続きをします。年金の扶養はないため、国民年金に加入します。
(4)健康保険は社会保険に任意継続し、年金は国民年金
今まで加入していた健康保険に続けて加入します。退職後20日以内に健康保険組合で手続きします。
転職活動中の雇用保険の給付を受けている場合など、収入が一定以上あると扶養になれません。扶養に入らない場合、国民健康保険か任意継続かで悩まれる場合が多いと思います。給付の内容はほぼ変わりませんが、加入している健康保険組合で独自に行っている給付や福利厚生が使える場合があります。そうなると、保険料の問題が大きいですね。どちらが得か、というのは人によって違いますのでここでは確認方法を記載しておきます。
国民健康保険料は住民税の計算のもとになる金額で計算されますので、市区町村の窓口で確認してみましょう。任意継続は、今まで会社が負担していた分も自分で負担することになるため、単純に、今まで健康保険料として払っていた金額の倍になります。ただし上限があり、もともと高額だった方については、あまり変わらないこともあります。健康保険組合で変わってきますので、自分が加入している健康保険組合のホームページで確認してみましょう。
「社会保険」の扶養
最近、103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁……など、「壁」の話をよく目にします。103万円の壁は税金の扶養の話ですが、106万円、130万円の壁というのは社会保険の扶養の話です。
106万円の壁というのは、現在は51名以上の会社に勤務している方が、「週20時間以上」働くと社会保険に加入することになるため、手取りが減ってしまうという意味での「壁」です。現在は、月額賃金が88,000円未満の場合は社会保険加入とならないとされていますが、この収入要件は近く撤廃される予定です。
130万円の壁というのは、被扶養者の要件です。その方の職業が何であれ、年収130万円を超える場合は、扶養家族になれません。
扶養の「壁」は、最近見直しの話が上がっています。これから大きく変わると思われます。社会保障は相互扶助の精神で作られています。損か得かで測れないものだなと感じています。

1980年東京都生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。役者となる夢破れ一般企業に入社し、採用業務に携わる。転職を重ねフリーターや派遣社員を経て、2010年社会保険労務士試験に独学で一発合格。2012年社労士事務所を開業。現在は約60社の労務顧問のほか、講演やセミナーを行っている。2019年から配信しているPodcast「人事労務の豆知識」は登録者2万人。2021年からは社労士向けのオンラインサロン「# 社実研」を運営している。