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雇用契約とは〈後編〉記事ID:C10125
雇用契約は、採用活動を経て、契約を締結するところから始まります。入社することは、雇用契約を開始することです。退職することは、雇用契約を終了することです。また、有期契約の場合には、労働者保護の観点から長く勤められるようにルールが定められています。
採用活動での注意点
採用活動は、①求人を行い、②選考して、③雇用契約を行う、という流れで行われます。また、応募者の個人情報を扱うことになりますので、管理はしっかりと行わなければなりません。
①の求人のポイントは、仕事の内容や条件を正確に記載することです。曖昧にしたり、よく見えるように記載したりするとトラブルのもとになります。入社後のミスマッチを防ぐためにも、求人の内容や条件、どんな人に来てもらいたいのかを社内で明確にすることがポイントです。
②の選考は、書類選考、筆記試験、面接などで行います。気をつけなければならないのが、性別、出身地、思想信条など、本人が持って生まれたものや心の内にあることで選別してはならないということです。例えば、「愛読書」「購読している新聞」「親の職業」「住んでいる地域の話」「宗教」「政党」などは、雑談でも聞かないように気をつけましょう。また、圧迫面接や出産予定の有無を聞くことなど、ハラスメントとなるようなことは絶対にしてはいけません。応募者は、違う側面から見れば消費者です。法律を遵守することはもちろん、どのような結果でも会社に良い印象を持ってもらうようにふるまう必要があります。
③の雇用契約の手続きは、実は非常に重要です。労働契約は、労働者と使用者の間で対等に行われるものです。普通は、会社が出した求人の条件に労働者が合意してその条件でスタートとなりますが、求人の条件に幅があったり、求人時の条件とは異なる条件で採用する場合は、必ずしっかりと説明した上で契約を行いましょう。
雇用契約の明示と就業規則
雇用契約を結ぶ際には、その内容を明確にしなければなりません。労働法で定められる最低限の条件を守ることはもちろん、就業規則でその会社で働く条件を定めます。次の労働条件については個別に書面で明示(データ送付も可)することが義務づけられています。
(1) 労働契約の期間
(2) 有期労働契約を更新する場合の基準
(3) 就業の場所及び従業すべき業務(異動の範囲も)
(4) 始業終業の時間、残業の有無、休憩時間、休日、休暇など、労働時間について
(5) 賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期
(6) 退職に関する事項( 解雇の事由を含む)
就業規則も非常に重要です。その内容が契約内容となるからです。また、契約内容ですから、周知されていなければ無効となりますが、周知されているのに見ていなかった、知らなかったとなっても有効となります。昔は休憩室に置いてあることなどが多かったようですが、最近ではイントラネットで公開している企業が多いようです。必ず目を通すべきでしょう。
雇止めと無期雇用への転換
有期労働契約で、使用者が更新を拒否し、契約期間満了により雇用契約が終了した時のことを「雇止め」と言います。労働者保護の観点から、何度も契約が更新されていて解雇と同様となるものや、更新するものだと期待する合理的な理由があるものは雇止めが無効となるルールがあります。
また、契約期間の定めがある雇用契約の場合、契約期間が5年以上となると、無期雇用に転換することができます。現在では企業側が、転換権がある社員に通知する必要があります。
退職の種類
退職には、定年退職や自己都合での退職、会社都合での退職があります。会社都合で労働者の同意を得ず、契約を解除することが解雇です。
退職の手続きについては、就業規則などで会社ごとに定めていますが、合意が得られない場合などは一方的に解除できるようになっています。会社から一方的な解約を行うことが、解雇となります。解雇は労働者保護の観点から、判例では非常に会社に厳しい判断がなされています。そのため、解雇は難しく、濫用はできないようになっています。
労働者側からは民法により、2週間前までの通知で解約できますが、仕事の引継ぎなどを考えると、就業規則にある通りの手続きで円満に退職していただきたいと思います。
1980年東京都生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。役者となる夢破れ一般企業に入社し、採用業務に携わる。転職を重ねフリーターや派遣社員を経て、2010年社会保険労務士試験に独学で一発合格。2012年社労士事務所を開業。現在は約60社の労務顧問のほか、講演やセミナーを行っている。2019年から配信しているPodcast「人事労務の豆知識」は登録者2万人。2021年からは社労士向けのオンラインサロン「# 社実研」を運営している。