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雇用契約とは〈前編〉

記事ID:C10122

会社に入って働くと、給与を受け取ることができます。それは、労働者と使用者が、雇用契約の関係にあるということになります。では、雇用契約とはいったい何でしょうか。ほかの働き方はどのようになるのでしょうか。また、近年雇用契約にも変化が見られます。働き方の変化について解説します。

雇用契約とは何か?

 雇用契約について、民法の第623条には以下のように書かれています。「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」会社に雇用される人は、「労働に従事」することによって「報酬」を受け取るという契約をしています。この「労働に従事する」というのはどういうことでしょうか。実はこれは、「使用者の指揮命令下にある状態」のこととされています。少々乱暴に言えば、会社の指示を聞いて業務を行った時間に対して給与が出るというのが雇用契約(労働契約)となります。

労働者の義務

 雇用契約で働く「労働者」には、どのような義務があるのでしょうか。「働く義務?」、「仕事をする義務?」…。具体的に、働くとは、仕事をするとはどういうことを指すのでしょうか。
 例えば、自分のやり方と上司が指示したやり方が全く違う場合、どう思いますか? 皆がそれぞれの考えで仕事をしてしまうと、企業秩序が維持できなくなってしまいます。そのため、上司の命令には、自分としては納得のいかないものであっても、違法・著しく不当なものでない限りは従う義務があります。
 そのように、会社員として働く時には、誠実に勤務する義務、そして組織の秩序を維持する義務など、当然行わなければならない義務があるのです。そして会社には、社員の方が安全に働ける環境を作る安全配慮義務や、職場環境配慮義務があります。

雇用契約と請負契約の違い

 近年、フリーランスなど雇われない働き方が注目されています。雇用契約ではなく、請負契約などで働く場合、どのような違いがあるのでしょうか。請負契約について、民法の第632条には以下のように書かれています。「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」雇用とよく似ていますね。何が違うのか。雇用契約は「労働に従事すること」、請負契約は「仕事の完成」を約束している点が異なります。つまり、請負契約の場合は雇用と異なり、やり方については指図を受けず、特定の仕事を完成させた後に報酬を得るということになります。
 逆に、完成させることができなかった場合は、作業に時間がかかっていても、報酬は受け取ることができません。少々乱暴に言えば、言われたことをやる時間に対して報酬を受けるのが雇用契約、受けた仕事を納品して報酬を受けるのが請負契約ということになります。そのため、労働者は労働法によって守られています。

日本的な雇用契約と雇用契約のこれから

 新卒で入社し、会社が教育し、定年まで生活の面倒を見るというのは、日本特有の制度です。これをメンバーシップ型と言います。入社時に具体的な職務が細かく決まっているわけではなく、入社後に企業が従業員を必要な部署に配置し、さまざまな業務を経験させることが特徴です。
 現在、雇用は転換期を迎えています。近年ではメンバーシップ型から、ジョブ型雇用への転換が注目されています。ジョブ型雇用は、具体的な職務内容に対して、その職務に応じた労働者が雇用される形です。この雇用形態は、専門性が重視されるため、労働者のスキルや経験が直接的に評価される特徴があります。
 メンバーシップ型雇用では、その会社でしか通用しない人材になってしまう危険があります。そこで、その人そのものに専門性を持たせることで、どこでも通用する人材を増やし、雇用の流動化を促す狙いもあります。
 また、テクノロジーの進化やニーズの変化に伴い、リスキリング(新たなスキルの習得)も求められています。時代の流れの変化の中、会社が労働者の道を決めてそれに沿って歩む形から、働く人一人ひとりが自分の道を決めて会社や働き方を選ぶというように変化してきています。
 会社によって、どのような働き方やキャリアビジョンを持てるかは違ってきます。どのような会社で働くのかを選べる人材になる。また、雇用契約で働くのか、起業や、フリーランスで働くのか、そのような選択を一人ひとりが自分で考える世の中に変化しています。

市川(いちかわ) (めぐみ)

1980年東京都生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。役者となる夢破れ一般企業に入社し、採用業務に携わる。転職を重ねフリーターや派遣社員を経て、2010年社会保険労務士試験に独学で一発合格。2012年社労士事務所を開業。現在は約60社の労務顧問のほか、講演やセミナーを行っている。2019年から配信しているPodcast「人事労務の豆知識」は登録者2万人。2021年からは社労士向けのオンラインサロン「# 社実研」を運営している。

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