電話応対でCS向上コラム

第37回 ほめることは、「その人らしさ」を受け止めること

「ほめることが大切。自分のことも周囲の人のことも、どんどんほめましょう」と聞いても、ピンとこない人がいるかもしれません。「あの人には、どこにもほめるところがない」などと思っている人もいるでしょう。そこまで否定的にならないまでも、ほめることがなかなかできない人は、相手が自分と違っていることを嫌っているかもしれない、「その人らしさ」を見つけることが下手なのかもしれない、と考えてみましょう。

自分が感じた相手の嫌なところをその人なりの特徴と受け止める

 「あの人の性格の、〇〇なところが嫌い」と言う人がいます。あなたから見るとその人の「〇〇なところ」が気になり、受け止め難いのでしょう。受け止め難いので、変えてほしいとも思いたくなるでしょう。ただ、相手があなたの嫌いなところを変えようとしたらあなたが困るように、これではつき合うことは難しくなります。そんな時は、「嫌い」な部分を相手の特徴と受け止めて、その特徴がその人自身の在り方や、周りにうまく果たしている役割や機能を考えてみることを薦めます。

特徴は見方を変えると「長所」にもなる

 ある会社の総務課に、従業員が二人います。一人は自分でも神経質だと思っているAさんで、もう一人は細かいことは気にしない、大雑把だと思っているBさんで、周りの人からもそんな風に受け止められています。ある時Bさんは、Aさんが先輩社員に怒鳴られている場面を目撃しました。それ以来元気のないAさんを、Bさんは何とか励ましたいと思っていました。二人が一緒にランチを食べる機会があった時、怒鳴られたAさんはBさんに「私って神経質過ぎて怒鳴られたことをいつまでも気にし続けてあれこれ考えてしまい、いやになっちゃう…」と言いました。これを聞いたBさんは「そうか……でも、私にはあなたは細かいことによく気がついて、ドジが少なく、それがあなたらしい長所で、私のようなズボラな人間には大助かりだし、羨ましいわ」と言ったのです。

全体から眺めて別の見方をする

 もしこの時、Bさんが「あなたも私のように、大雑把な性格に変わればいいのよ」などと言ったら、Aさんはダブルパンチを受けて、ますます落ち込んでしまうか、Bさんとつき合いたくなくなるかもしれません。自分と同じになってほしいと思わず、違いを認めることができるBさんは、その違いをAさんの長所と思うことができたのでしょう。「神経質な性格が嫌だ、良くない」と、全面的に否定してしまうのではなく、神経質に含まれている良い面を見つけるのです。それは、ものの見方を広げること、事柄の枠組みを変えて、全体から眺めて別の見方を増やすのです。

物事を積極的に良い面から見ようとする

 人は、物事を良く見える面と悪く見える面の両面からとらえますが、悪い面ばかりを見ていると、否定的になり、自分や相手を嫌ったり、落ち込んだりします。もし、自分や相手が悪い面ばかりを変えようとしているとしたら、まず、その良い面も見つけ、見直しましょう。それはBさんが伝えたほめ言葉になるのです。このような考え方を知っておくと、履歴書を書く時や、面接を受ける時に役立ちます。例えば「理屈っぽい」は「論理的に、物事を順序立てて考えるのが得意」、「短気」は、「物事に集中して、結果を出すのに一生懸命になる」といった具合です。自分にも相手にも慰め、励まし、ほめ言葉などになって、すーっと心が軽くなり、やる気が出てくるかもしれません。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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