電話応対でCS向上コラム

第23回 聞き上手になろう

会話とはいつもしゃべっていることではなく、話す人は、必ず聞いてくれる人を必要としています。このように、会話には「話し上手」と「聞き上手」が必要です。聞き上手になるためには、理解の枠組みが異なることを前提に、相手の言わんとすることを相手の身になって聞こうと努めること、「積極的な関心」と「共感」を持って相互の信頼関係を築いていくことが重要です。今回は、聞き上手になるための方法を学習していきましょう。

聴くことは積極的な態度

「会話に入っていけない」「話ができない」などと悩んでいる人の中には、しゃべろうとしすぎるあまり、あるいは人の話を聞く気持ちがないために、「自分が話せない」ことにこだわっている人がいます。また、特別な話題がないと会話に加われないと思っている人もいます。そんな人は「聞く→聴く」ことの重要性を認識してください。相手の言いたいこと、分かってもらいたいことをきちんと「聴く」ことは、相手を大切にしていること、受け止めようとしていることを相手に伝えることになるのです。「聴く」ことは消極的なことではなく、積極的な態度であり、話し手に「分かってもらえている爽快さ」を感じさせます。「聞き上手」は会話の潤滑油なのです。

人はそれぞれ理解の枠組みが異なる

私たちは皆、パーソナリティーも違い、育った環境や時代も異なり、接した人々や物事もさまざまです。それらの影響を受けて、一人ひとりのもののとらえ方や見方は異なっています。例えば、20歳の日本人男子大学生と、60歳の米国人の女性手芸家が会話することを想像してみましょう。言語や性格、年齢の違い、国籍の違い、男女の違いなど2人の枠組みは全く異なります。2人はよほど相手に「聴き」、枠組みの違いを理解しようとしない限り、相手と付き合うことはできないでしょう。

日本人同士でも、相手の考え方の枠組みに沿った理解が必要

しかしそれは、20歳の日本人OL同士でも同じことです。それぞれ違った家庭で育ち、違う学校生活を過ごし、過ごした場所も社会的・経済的背景も違うのですから。つまり、20歳の日本人OL同士ということは、決して分かりやすさを保証しないのです。顔が違うように考え方の枠組みが違うので、やはり相手の枠組みに沿った理解が必要になります。私たちのやり取りは、自分たちの伝え方と受け取り方の枠組みの交換です。ズレや誤解を修正するプロセスでもあります。枠組みが異なることを前提に、相手の言わんとすることを相手の身になって聞こうと努めることが大切です。

「積極的な関心」と「共感」を持って

普段の会話において、まず大切なのは相互の信頼関係です。信頼関係を築くのに必要なのは、「積極的な関心」と「共感」です。「積極的な関心」とは、会話をする相手の尊厳と価値を大切にし、その存在を丸ごと受け止めようとする態度です。それは言葉、視線、表情、姿勢、声の調子などで相手に伝わります。また「共感」は、対話している相手がそのとき何を感じ、考えているかを想像し、相手の視点から、あたかも相手が感じているように、考えているとおりに理解して、それを返していくことです。共感は同感や同情とは異なり、相手のことをそのまま受け止めながらも、相手と同じようになってはいません。相手と同じようになって一緒に悲しんだり、混乱したり、憤慨したりするのは同感・同情で、共感ではありません。共感するとは、違った立場の人間が相手の立場に立って感じ、考えてみようとすることです。相手に巻き込まれていない状態です。あなたが相手の話を聞くときには、積極的な関心を持ち、共感的に理解しようと努め、同時に、受け止めたことを相手に伝えましょう。それが、お互いを理解することに役立ち、聞き上手への第一歩となります。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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