電話応対でCS向上コラム
第14回 怒りの仕組みと対応法を学ぼうアサーティブな自己表現をするには、自分の気持ちを自分自身が把握していることが大切です。自分の気持ちは、自分らしさをよく表しているからです。私たちが持つ感情はさまざまですが、扱いが難しいのは「怒り」です。今回は怒りの仕組みと、怒りの対応法について学んでいきましょう。
怒りは相手のせいで起こるのではなく、自分が起こした感情
「怒り」は、外界の出来事や周囲の人の行動をきっかけに起こります。そのため周囲のせいで怒らされたと思いがちですが、実は自分が自分を怒らせているのです。同じような目にあっても、怒らない人がいることを考えてみれば分かると思います。さらに問題になるのは、怒りは「良くない感情」とされることが多いため、うまく表現するのが難しいことです。ここで大切なことは、不快感や怒りなどマイナスと受け取られる感情も必要だということ。大きな怒りになる前に、適切に怒りを受け止め、表現することが大切です。
怒りの感情には段階がある
「怒り」は、弱いものから強いものまでおよそ3段階に分けられます。まずは「マイルドな怒り」ですが、これは「好きではない」「同意できない」「嫌だ」という気持ち。これが「中程度の怒り」になると、「腹立たしい」「イライラする」「煩わしい」という状況に変わり、「最も強度の怒り」になると「カッカする」「ぶん殴ってやりたい」という激怒の気持ちになります。例えば、嫌なことが重なると「やめてほしい」という気持ちになり、やめてくれないといらだちを感じるでしょう。それでも嫌なことが続くと「やめろ!」と怒鳴りたくなるのです。
自分の怒りにどのように対応するか
怒りに対応する上で大切なことは、怒りの程度をつかむことです。怒りには穏やかなものも、激しいものもあるので、その程度を把握し、できれば穏やかな状態の時に表現しておくこと、つまり小出しにすることが大切です。強い怒りは攻撃的になりがちなので、攻撃的怒りの応酬になる傾向があります。大声で怒鳴ったりして相手に脅威を与えないように、しかし、はっきり「何が嫌か」「どうしてほしいか」を伝えることです。怒りの気持ちは、お互いが問題解決能力を発揮するきっかけにもなります。怒りを感じた時は、自分の気持ちを正直に伝えるとともに、感情的になりすぎず、置かれている状況を説明し、共有しようとすることが大切です。
他者の怒りへの対応をどうするか
他者から自分に対して怒りが向けられた時、どのように対応すれば良いでしょうか。大切なことは、自分の怒りの場合と同様、「怒りは相手のもの」であることを覚えておくことです。相手の怒りを「自分のせい」だと思ったり、仕返しに自分も怒ったりすれば、意味のない攻防を始めることにもなります。他者の怒りには感染しないことが重要です。そして、相手の怒りを否定しないこと。相手の怒りは怒りとして受け止め、その理由を理解し、それに対応する意思があると伝えることが大切です。
人は不快な状態や脅威に出会った時、程度の差はありますが怒りを感じます。その状態を改善するには、それをなるべく分かりやすく表現して、お互いに心地良い状態を回復する工夫をすることが大切なのです。
※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。
平木 典子氏
日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。