電話応対でCS向上コラム

第5回 仕事とアサーション~攻撃的な上司へのアドバイス~

前回では、アサーションを活用した働きやすい職場をつくるため、攻撃的な上司への部下の対応を考えました。今回では、自分は「攻撃的である」と感じている上司の方へ、アサーションの考え方や意義などをお伝えし、部下との円滑なコミュニケーションの取り方、働きやすい職場環境づくりに必要なことを考えたいと思います。

攻撃的な対応をされた部下は上司への尊敬の念を失う

上司の皆さんは、こんな経験はありませんか?例えば、部下が書類を回す部署を間違えたことを、他部署から指摘された。回した書類は部内の「レクレーションのお知らせ」という内容だったのですが、部下を激しく叱りつけた。あるいは、上司自身も「しまった」で終わらせるような些細なミスにも関わらず、部下が同じミスをした場合は、強い非難の言葉で責めたり、大声で怒鳴ったりするなど。一言、静かに注意を促せばいいことを、このような対応をされた部下は、八つ当たりをされたとか、感情的な人だとか思うでしょう。上司を敬う気持ちを失うだけでなく敬遠するか、怒りを感じたり、復讐心を抱くかもしれません。いずれにしても、お互いの関係は、相互尊重をするにはほど遠く、職場の中もギスギスしたものになりがちです。

強がりの裏にある不安、緊張、孤独

「攻撃的」な自己表現とは、自分の意見や考え、気持ちを一方的に言うことで、相手の言い分や気持ちを無視、軽視して、結果的に相手に自分を押し付ける言動をいいます。それは、自分の地位に甘えて、いつの間にか自分の癖になっていたり、特定の人との関係でパターン化されたりして、対人関係の躓きが繰り返されることにもなります。一見、平静さを装っていますが、強がっていて、命令や怒鳴り声の裏に、不安、緊張、孤独感があり、相手を従わせることで自分の味方をつくっているという不安定さがあります。

他者からフィードバックを受け「自分を理解する」ことが重要

そこから脱却するには、「自分を理解する」ことが重要です。自分はどんなとき怒りを感じやすいのか、どんなことをきちんとしたいのか、その自分の特徴はどんなときに役立ち、どんなときには自分勝手なのか、自分の癖や個性を理解し、それをうまく活用することです。このための解決方法は自分の言動が与えた影響について他者に教えてもらうことです。同じようなフィードバックが多い時、それは自分独特のものだと心得、相手に押し付けず、「自分はこう思う」と伝えてみることです。それを相手はありがたいと受け取るかもしれませんし、そのように考える人もいるのだと受け取るかもしれません。それが、自他尊重の対応でしょう。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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