電話応対でCS向上コラム

第3回 自分を苦しめる自己表現~攻撃的な自己表現と非主張的な自己表現~

自分も相手も大切にした自己表現であり、コミュニケーションであるアサーション。第3回は、前回の「自己表現のタイプ」をさらに掘り下げ、「攻撃的な自己表現」と「非主張的な自己表現」の問題点についてお話ししたいと思います。

攻撃的な自己表現の問題点

「攻撃的な自己表現」のタイプの方は、自分の言い分を通すためにその場の主導権を握り、物事を決めようとします。また、相手を自分の思い通りに動かそうとすることも攻撃的自己表現にあたります。社会的に上位、優位な立場の人が、立場の弱い人に対して行う、セクハラ、パワハラなどもこの表現にあたります。結果として一時的には自分の言い分が通りますが、常態化してしまうと、周りから敬遠され、孤立していくでしょう。

この攻撃的自己表現は、自分は正しい、優れているという思い込みや、自分の言い分を通したいという欲求、あるいは、言い分が通らないことへの不満の現れです。そして、無意識に相手に依存し、甘えている心理状態でもあります。

一方、攻撃的な対応をされた相手には、軽く見られたとか、自分は大切にされていないという思いが残ります。また、攻撃的自己表現の傾向が強い者同士では、喧嘩となり、「勝ち負け」の人間関係になりかねません。いずれにしても、対等で親密な関係性を築くのは難しいでしょう。

非主張的な自己表現の問題点

自分の気持ちや考え、意見を表現しなかったりするのがこのタイプです。

あいまいな表現をしたり、消極的な態度や小さな声で言うことも含まれます。自分に不正直だと言えますし、相手にも率直ではありません。

さらに、非主張的な自己表現をしたあとは、「自分はやっぱり駄目だ」といった劣等感や「どうせ言ってもわかってもらえないのだ」と諦めの気持ちになりがちです。同時に相手に対しては、「譲ってあげた」と恩着せがましく思ったり、「人の気も知らないで」と恨みがましい気持ちが残ったりします。

その蓄積した欲求不満や怒りは、八つ当たりや暴言(暴力)にかわる危険や、ストレスから頭痛や肩こり、神経性胃炎やうつ状態などの症状が出ることもあります。

非主張的な自己表現は、自分で自分を否定・否認してしまう行為であると同時に、自発性や個性を発揮するチャンスを潰します。自己を十分発揮できていないため、所属する組織、社会にも有用な存在とは言えません。

相互尊重の体験を実現するアサーション

「攻撃的・非主張的」、そのどちらも結果的に自分を苦しめることになる自己表現です。それを防ぐためには、自分も相手も大切にした自己表現<アサーティブ>を日頃から意識することが大切です。

第1回でも述べましたが、アサーションは、「自他尊重の自己表現」という意味ですから、そこには「話す」と「聴く」の相互交流、相互作用も含まれます。アサーションが「攻撃的」や「主張的」と明確に違うのは、相手もアサーティブに発言することを奨励するところです。

もしお互いがアサーティブな自己表現をすれば、多少時間はかかったとしても、お互いを大切にし合ったという思いが残ります。また、話し合いのプロセスにおいても、ひとりの提案よりむしろ満足のいく妥協案が探り出せる可能性もあります。そんな相互尊重の関係構築を手助けしてくれる、それがアサーションなのです。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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