企業ICT導入事例

-TRIPORT(トライポート)株式会社-
創意工夫されたコミュニケーションスタイルで設立時から全社員テレワークを実現

記事ID:D20003

全部署、全社員がテレワーカーというTRIPORT(トライポート)株式会社。テレワークに必要な「三つの整備」や、社員の「心理的安全性」を高める独自のコミュニケーションスタイルについて、代表取締役 CEOの岡本 秀興氏にお話をうかがいました。

設立当初から全社員がテレワーカー。
拠点は北海道から沖縄まで全国各地に広がっている

代表取締役 CEO
岡本 秀興氏

 弊社は設立7年目の会社で、主にITソリューションの開発販売や経営・労務コンサルティングを行っています。創業当初から現在まで全部署、全社員がテレワーカーで、日々の業務だけでなく採用から教育まですべてリモートで行っています。北は北海道から南は沖縄まで全国各地に30名の社員(2020年10月1日現在)がおり、私自身も地方創生の一環で沖縄に移住しています(図1参照)。在宅勤務が基本ですが、自宅が働きやすい人ばかりではないので、必要に応じて最寄りのコワーキングスペース※1なども活用しています。テレワークを成功させるためにはこのような「ワークスタイルの柔軟性」に加えて、「ITによる業務生産性の向上」が重要です。弊社では、RPA※2などのITツールをフル活用して、業務の“見える化”や“ヒューマンエラーの防止”、“業務の自動化”などを行い、生産性を高める努力をしています。

テレワークには、ICTインフラ、社内制度、
コミュニケーション環境の三つの整備が大事

 弊社では、テレワークには「三つの整備」が必要だと考えています(図2参照)。一つ目は「ICTなどのインフラ整備」です。弊社は「Chatwork(チャットワーク)」というビジネスチャットツールや、「クラウドサイン」という電子契約サービスなどを活用して、業務のIT化を図っています。コロナ禍でITツールを導入する企業は増えていますが、それだけではテレワークは成功しません。二つ目に重要なのは「社内ルールや制度の整備」です。テレワークを導入しても、勤怠管理方法が以前のままだったり、経費精算のルールが曖昧な会社が多いのですが、それを放置すると社員から不満の声が出てしまいます。例えば、在宅勤務は通勤がない分、稼働時間を増やすことができますが、「残業」の定義がされていないと、働く時間が増えたのに残業代がもらえないといった不満が出てきます。また、在宅勤務でプリンターや通信回線、パソコンなどが必要になるので、どこまでを経費として認めるかを明確にしなければなりません。三つ目は「コミュニケーション環境の整備」です。テレワークは相手が見えないからこそ、コミュニケーションの質の担保が重要です。ITリテラシーが高い社員であれば、各種コミュニケーションツールを利用できますが、そうしたスキルがあったとしても、上長や同僚に相談したい時に相談できず、気づかぬうちに周囲から孤立して負の感情を持ってしまうことがあります。その状態が続くと、会社に必要なイノベーションが生まれない、改善点があっても放置されてしまうという負のスパイラルに陥る可能性があるので、気をつけなければなりません。

テレワーカーの心理的安全性を高めるために、
独自のコミュニケーションスタイルを確立

在席管理システム(モニター画面)

 弊社では、テレワーカーは特に「心理的安全性」を高めることが重要だと考え、さまざまな工夫をしています。例えば、テレワークには在席管理が不可欠ですが、一般的な在席管理システムでは「在席中、離席中、会議中」などの表現が使われているところを弊社では、「声かけOK、折り返します、対応不可」などとしています。

社内SNS(モニター画面)

 このように言葉の使い方一つをとっても、コミュニケーションがとりやすい表現は何かなど、とてもこだわった仕組みを作っており、声をかけづらい気持ちを少しでも和らげるようにしています。また、メールやチャットには絵文字を積極的に使っています。社員間だけでなく、関係性が構築できている取引先にも絵文字で感情を伝えることで、より円滑に業務が進むことが実績ベースで分かっています。また、社内SNSとして「ツイッター」のような、全社員誰もが気軽につぶやけるチャット空間を用意しています。

 ここでは業務連絡ではなく、仕事をしていて感じたちょっとした感情・想いなど、何気ない一言を気軽に発信できるようにしています。そうすることで、仲間の日々の仕事ぶりなどを垣間見るきっかけにしたり、嬉しかったことも、辛かったことも、さまざまな感情を共有し、そして共感してもらったりと、社内コミュニケーションを円滑にする仕組みを構築しています。さらに、社員同士でつぶやきを投稿するだけでなく、例えば、営業担当が成約をシステムに登録すると、自動でメッセージを発信する「Robot」が「成約おめでとう!どんな会社なの?」というように話しかけてくれるため、社員の承認欲求を満たすことができます。同時に、営業以外の部署にも成約したことが伝わるので、社内の情報共有にも役立っています。

 もう一つ特徴的なのは「CxO対話制度」です。これは、役員に相談しやすい環境を作るために導入した制度で、相談内容に応じてCEOだけでなくCTOやCOOなどの役員と「1on1ミーティング」を設定できます。こうした新しい制度を社内に導入する際は、社員や役員の意見を聞いて導入していますが、その際には必要に応じて、全社員への社内周知用動画を撮っています。制度の運用ルールだけでなく、どのような目的や効果があるのか、その背景に込められている想いを伝えることを大切にしています。また、ただの説明動画にするのではなく、時には役員同士の対談動画のような形式で撮影してみたり、まるでYouTube(動画共有サイト)を見ているような感覚で、会社が伝えたいことを社員に伝えられる動画、つまり、社員が見たいと思える動画にしています。社員が見たい動画であれば、拠点が離れていても意図がよく伝わりますし、心理的安全性の向上にもつながります。こうした取り組みを通して、コミュニケーションが円滑にとれる環境を構築しています。

社員と会社が歩み寄って話し合うことで
「出社と同等以上」の環境・制度を作ることが大切

 テレワークの失敗例として多いのは、一つ目の「ICTインフラ整備」に注力してしまうことです。それよりも、社員の働く環境が「出社と同等以上」になっているかを意識すべきで、それができればおのずと必要な対策が見えてくるはずです。

 人は心の中に負の感情を抱えてしまうことがあり、それを吐き出せずに不満がつのると会社を辞めてしまうかもしれません。弊社は、社員の不満に先回りして、働き続けたいと思える環境に変えていくことで、退職リスクを軽減させた実績があります。制度や環境を作る時は、独りよがりにならず、会社と社員が歩み寄ることが大切です。

 良かれと思って作った制度が、実は社員をしばり付けて働きにくくなっていたということがないよう、よく話し合うことが大切です。組織は日々成長しているので、あるべき姿も当然変化します。これまでのルールや慣習にとらわれず、現場の意見を聞きながら、ただ、すべての意見を鵜呑みにするのではなく、当然経営的目線での判断を適切にしながら、柔軟かつスピーディーに制度を変えていくことがテレワーク成功につながるのではないでしょうか。

企業がテレワークなどの「新しい働き方」を
成功させられるよう、課題解決に貢献したい

 このように、自社で蓄積してきたテレワークに関連するあらゆるノウハウの中から、業務の効率化や生産性向上などの一定の成果があったものをサービスとして提供しています。その一つとして「テレワークコーディネート(https://twcoordinate.triport.co.jp/)」があります。これは、テレワークに必要な「社内制度整備」や「テレワーク特化型の労務相談」がチャットで気軽に相談できるというサービスです。テレワークなどの新しい働き方を実現することは簡単ではありませんが、課題をどれだけスピーディに解決できるかが成功のカギとなります。それをサポートできる会社でありたいと思っています。
 

※1 コワーキングスペース:専用の個室スペースではなく、共有型のオープンスペースでオフィス環境や設備を共有できるスタイルのオフィススペース。

※2 RPA:Robotic Process Automationの略で、パソコンなどを用いて行っている事務作業を、自動化できる「ソフトウェアロボット」で行うこと。

会社名 TRIPORT株式会社
設立 2014年(平成26年)7月
本社所在地 東京都新宿区新宿7丁目26-7 ビクセル新宿1F
代表取締役 CEO 岡本 秀興
資本金 1,000万円
事業内容 ITソリューションの開発販売、 経営・労務コンサルティング
URL https://triport.co.jp/
PDF版はこちら

関連記事

入会のご案内

電話応対教育とICT活用推進による、
社内の人材育成や生産性の向上に貢献致します。

ご入会のお申込みはこちら