企業ICT導入事例
-社会福祉法人 尾張中央福祉会 大和保育園-手書きの保育日誌をデジタル化。保育士の負担を軽減し質の高い保育環境を
幅広い年齢層の子どもを預かる保育園では、健やかな成長のため、一人ひとりの子どもの綿密な記録が不可欠です。しかしその作業量は膨大で、保育士の大きな負担となっていました。愛知県一宮市の大和保育園は、ICTの利用でこの負担を軽減し、保育士本来の仕事である「子どもと触れあう時間」の創出に成功しました。
【導入の狙い】保育士の長時間労働の原因となっていた保育日誌作成を効率化したい。
【導入の効果】日誌作成時間の短縮とデータの効率的蓄積で、充実した保育環境を実現。
“手書きノート”が保育士たちの長時間労働の原因に
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▲理事長 園長・末松 譲氏
社会福祉法人 尾張中央福祉会が運営する大和保育園は、2カ月の乳児から就学前の子どもまで、約150名を預かる保育園です。保育園には2015年度に開始された「子ども・子育て支援新制度」で正確な登降園の記録が求められることとなり、多忙な保育士の負担がさらに増大しています。そうした負担をどう軽減するかは、ここ大和保育園でも大きなテーマとなっています。
「保育園は、お仕事などの事情で保育が十分にできないご家庭に代わり、お子さんをお預かりし、育てる施設です。こちらでは8時から16時までが平常保育で、7時から8時が早朝保育、16時から19時が延長保育となっています」(末松氏)
2014年、大和保育園に着任した末松氏が驚いたのは、さまざまな文書の作成に追われる保育士の姿でした。
「保育士には、日々のお子さんのお世話に加え、一人で着替えられた、蛇口から水を出せた、お菓子をあけられたなど、お子さんの日々の変化と成長を保育日誌に細かく記載していくことが求められます。こうした記録は保育士がお子さんをこの先どう指導していくか、指導計画を作る上での手がかりになりますし、お子さんを預ける親御さんにも貴重な情報となります。また毎日のクラスの活動とその振り返りは、優れた保育を目指すためにも不可欠なのです」(末松氏)
補助金制度開始を機に、保育日誌のデジタル化を決断
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▲ファイルで管理していた手書きの保育日誌。デジタル化によって業務削減が期待されています
末松氏の着任時、こうした記録はすべてノートへの手書きで行われていました。そしてその作業は、時には夜遅くまでかかることもあったと言います。
「このノートの作成にかかる保育士の時間や労力を少しでも減らすことができたら、それだけお子さんに向き合う時間も増えますし、お子さんを見守り、育てる心にゆとりもできるでしょう。また同じお子さんを3年、4年と預かる中で、過去の記録がすぐに参照できれば、より適切な保育と指導ができるはずです」(末松氏)
2016年にこの課題の解決に向けた取り組みを始めます。
「ICTを導入し業務効率化を図る保育園を対象とした補助金制度が始まりました。実施に向け保育施設も参加して行われた説明会で、いくつかのソリューションのプレゼンテーションが開催されました。その中で興味を持ったのが、NTT西日本の『登降園管理システム』でした」(末松氏)
このシステムは、保護者の持つICカードと施設のパソコンにインストールする管理ソフトウェアを組み合わせ、それぞれの子どもの登園と降園の時刻、日々の保育日誌、出欠記録などを管理するものです。
「保育日誌が手書きのノートからパソコンへの入力に変われば、保育士の負担は大きく減ります。また情報がデジタル化されることで、過去のお子さんの記録や園の活動内容などの検索が容易になるということにもメリットを感じました。さらにシステムの開発に保育士経験のある人や子育て中の親御さんが関わっているということで、体験に基づいた機能や使いやすさの工夫があるのではという期待もありました」(末松氏)
使いやすいインターフェイスが保育士の日誌作成を支援
導入した登降園管理システムから出力される帳票類が、各自治体のフォーマットに合致しているため、転記や再作成などの作業が不要だということもポイントでした。
「たとえ情報そのものがデジタル化されていても、その情報を活用する際に“手書き”という作業が入ると、単に作業量が増大するだけでなく、ミスの原因にもなります。この登降園管理システムは全国の各自治体の帳票フォーマットに合わせた出力ができるため、そうした不安を一掃してくれました」(末松氏)
大和保育園がシステムを導入したのは2017年4月のことです。末松氏にシステムを使った印象や使い勝手などを聞いてみました。
「まだ保育士たちが完全に使いこなせているわけではありませんが、基本的な操作には慣れてきた段階だと思っています。システムの画面表示は分かりやすく、また欠席の理由などを候補から選択するインターフェイスはとても便利です。さらにシステムへの理解が進めば、業務時間の短縮にも役立ってくるでしょう」(末松氏)
またこのシステムでは、保護者の持つICカードをリーダーにかざすことで、登降園時刻を記録することもできます。この仕組みを使えば、保育士の手を煩わすことなく、子どもの毎月の在園時間が自動計算できるようになります。
ICTで“人と人との触れあう時間”を増やし、保育の質向上へ
最後に登降園管理システムの今後の活用方針を、ICT投資への展望も含め、うかがいました。
「今年はまず、記録を残していくことを第一の目標として考えています。今預かっているお子さんの毎日の記録の積み重ねが、来年、再来年の充実した保育につながっていくのです。園の活動も、毎年毎年を詳細に振り返ることができるようになれば、より質の高い保育と指導の実現につながるでしょう。保育士の業務負担を軽減するICT投資については、今後も続けていきたいと思います。保育というのはやはり人と人、保育士がお子さんにどう関わっていけるかに大きく依存するものです。ICTの力を使い業務を効率化し、保育士がお子さんと触れあう時間をより長くしていくことが理想ですね」(末松氏)
ICTで多忙な保育士さんの業務をサポートし、情報を蓄積して質の高い保育環境を形作っていく。そうしたICT活用がさらに進むことを期待したいと思います。
組織名 | 社会福祉法人 尾張中央福祉会 大和保育園 |
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創業 | 1981年(昭和56年)1月27日 |
所在地 | 愛知県一宮市大和町苅安賀字角出80 |
理事長 | 末松 譲 |
事業内容 | 保育園 |
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