電話応対でCS向上コラム
第101回 「好かれる」記事ID:C10051
人に好かれることの大切さを多くの識者が語っています。好かれればこちらもその相手を好きになるからです。それはウインウインでありラブラブです。まれには偏屈なへそ曲がりがいるにしても、この関係が順調にいっている組織や社会は、平和なはずです。しかし、現実の人間関係はそう単純ではありません。人を憎んだり疑ったり、軽蔑したり、羨んだり嫉妬したりと、錯綜する負の感情に悩まされることが多いのです。今回は、そうした感情を乗り越えて、好いて好かれる平和な人間関係はどうやったら築けるかを考えます。
鏡は先に笑わない
簡潔にして心に響く
人生訓を書き記した別の本には、「人に好かれたかったら、先ず相手を好きになることだ」とも書かれていました。これもまた納得できる言葉です。しかし、そのことを実践するとなると、どちらも結構ハードルが高いのです。
苦手なものを好きになる
「苦手な人と笑顔で話す」「人や物への嫌悪感を払拭して好きになる」、この容易ではない課題に、私は30年も前から挑戦してきました。その手法の一つをご紹介します。
「あなたの嫌いなものを一つ挙げてください。食べ物でも、動物でも、虫でも、スポーツでも、季節でも、乗り物でも、何でも結構です」コミュニケーション関係の研修会などで、先ずこう呼びかけます。さまざまな嫌いなものが出てきますが、共通して挙げられるワーストワンは「ゴキブリ」なのです。いつの時代も、ゴキブリの評判は芳しくありません。
「それでは皆さん!これから皆さんにゴキブリの弁護人になっていただきます。そして嫌われもののゴキブリにもこんな良いところがある、それを探してください!」
グループ討議で、あるいは個人の発想で、弁護人たちはいろいろ出してきます。ゴキブリは生命力が強く、カブトガニのように太古から生き延びてきた。ゴキブリは敏捷なので、素早く叩くことでこちらの
人には必ず良い点があります。苦手な人、嫌いな人でも、その人の良い点だけを見つけてください。あなたの笑顔が相手に伝わり、人間関係が必ず良くなるでしょう。
よく質問する人は好かれる
人間には、「物欲、食欲、性欲」という三大本能があることはよく知られています。実はこれにもう一つ「教欲」を加えて四大本能とも言われます。人間は自分が知っていて相手が知らないことを相手に教えることに、本能的な喜びを覚えます。この「教欲」が、好かれるために重要な役割を担うのです。つまり、たくさん教えてもらえるように訊くことです。
以前にお会いした、小田原のある練り製品を作る会社の社長さんは、部下に質問するのが得意でした。「それはどういうこと?それは分からないから教えてほしい」と意図的に訊くのだそうです。部下は一所懸命に説明します。社長は質問を交えて真剣に聴きます。すでに知っていることでも、聴きます。まだ若い社長は、部下から絶大な信頼を集めているようです。
「はい」「ありがとう」「ごめんなさい」
子どもの頃からしつけられたこの三つの言葉、最近言えない人が増えているそうです。
研修でうかがった千葉のある著名なゴルフ場の支配人から聞いた話です。そのゴルフ場では、お客さまサービスの向上のため、キャディーにランクづけをしていました。長く務めているベテランキャディーの一人は、スキルは高いのですがお客さまの評価が低く好かれないのです。悩んで退職まで考えていた彼女に、支配人が一つアドバイスをしました。「お客さまに何か言われたら、『はい』『ありがとう』『ごめんなさい』を言いなさい」と。ほどなく、彼女の評価は急上昇したそうです。好かれるためには、日常使っている言葉の印象はとても大きいのです。
岡部 達昭氏
日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定委員会検定委員。
NHK アナウンサー、(財)NHK 放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。