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電話応対でCS向上コラム

第75回「心を動かすプレゼンテーション」

プレゼンとはプレゼンテーションの略語。企画や見積もりなどの概要を関係者に発表・提示すること(新明解国語辞典)と、説明されています。もともとは、主として広告業界などで使われていた言葉だそうですが、近頃このプレゼン力に関心が集まっています。ビジネス界だけではなく、学術、教育、芸能、スポーツなど多方面にわたって、プレゼンをする機会が増えているのです。今回は、今注目されるプレゼンについて考えます。

デジタル化が進むプレゼン

 当節のプレゼンは、デジタルツールを駆使した「見せるプレゼン」が主流となっています。膨大な資料をカラフルに図式化し、それをPowerPointを使って提示するのです。そこには複雑な情報が盛り込まれ、質の高いプレゼンも生まれています。しかし、惜しむらくは音声による説得力が弱いため、心を捉えきれないプレゼンが多いのです。

 それでも、PowerPointで映し出されるカラフルな映像は、若い層には人気があるようですが、アナログ世代の私には、今一つ馴染めません。速いテンポで変わる画像情報についていけないのです。理解に手間取っている間に、音声説明が先にいってしまいます。かと言って音声に集中すると、これがまた分かり難いのです。

 デジタル画像中心のプレゼンは進化しています。しかし、一方で音声による説明力の劣化は看過できない問題だと思います。かつてのプレゼンは、言葉での説得力に主眼を置き、画像情報、視覚情報は、その補助的役割を担っていたと思います。IT機器の進歩が、その役割の比重を変えました。それでもなお、プレゼンにおける音声表現力の重要さは、変わってはいないはずです。

伝える情報は半分にする

 プレゼンには必ず達成目標があります。その目標を聴き手が納得して受け入れて、態度や行動を変えてくれることで達成になります。ところがそうすんなりとは参りません。文字・画像情報も音声情報も、昨今のプレゼンは情報が多過ぎます。進化した情報社会では、手軽に容易に情報が手に入ります。手に入れた情報は、少しでも多く伝えたくなるのが人情です。しかし、それは聞き手のためではなく、多分に伝え手の自己満足なのです。結果として、饒舌で情報過多なプレゼンが多くなります。

 「良いプレゼンをしたければ、伝える情報を半分にすることだ。そうすれば聴き手に与えるインパクトは倍になるよ」かつて先輩から受けたアドバイスを思い出します。

 「集めた情報は、捨てて捨てて捨てなさい。最後に残った情報が、本当に伝えなければいけない情報です」これはかつて本誌でも紹介したことのある、柴田 武さんの重い金言の一節です。半分にするには、このくらいの覚悟が必要だと肝に銘じています。

人の気配を感じるプレゼンを

 プレゼンとは説得力です。企画やアイデアを提示して、その気になってもらわなければなりません。デジタル系の文字や画像で伝えるプレゼンには、緻密なデータや情報が盛り込まれますから、それなりの説得力はあるでしょう。しかし、伝え手の熱意や思いを伝え、相手の心を動かす効果までは期待できません。それができるのは話し言葉の力です。

 有田焼の14代酒井田柿右衛門が、名もなき陶工が焼いた壺を見て「この壺には人の気配がある」と激賞したという話を読んだことがあります。進歩を続けるデジタル系の機器に接する度に、この言葉を思い出します。そこには精度の高い豊富な情報はあっても、「人の気配」は感じられません。しかし、有田焼の壺や、人間が話すプレゼンの言葉にはそれがあるのです。時には、そこからドラマまで見えてきます。電話応対もまた然りです。

心を動かす話し言葉の力

 プレゼンでは、まず相手の理解が必須の要件ですが、それはAIを含めたデジタル機器が得意とするところです。しかし好感と納得、感動と決断というメンタルな要件を満たすのは話し言葉の力です。「間」「テンポ」「リズム」「高低」「緩急」「強弱」「明暗」「大小」などのさまざまな表現手法を身につけること。さらには、微妙な心情を伝える高度なテクニック、「言葉の余白」「溜めが作る情感」「息の声が作る表情」までを自在に使えれば、AIに侵されることのない表現者として存在し得るでしょう。その具体的訓練法は後日に譲ります。

岡部 達昭氏

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

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