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電話応対でCS向上コラム

第43回「心を伝えることばの表現力」

慶應義塾大学の岩松 研吉郎さんが「ことばとは、本来好きか嫌いかで判断するものであって、正邪、善悪で判断するものではない」と話されています。好きか嫌いかとなると主観的な判断ですから、基準があるわけではなく正解があるわけでもありません。しかし電話応対教育に当てはめて考える時に、極めて大事な評価基準を示していると思います。今回は、ことばの表現力について考えます。

好きな応対とはどのような応対か

皆さんが「この応対は好き!」と感じる応対はどのような応対でしょうか。考えてみてください。私の心を捉える応対は、暖かさ、優しさ、誠実さ、分かりやすさ、自然さ、しっかり聴いてくれる態度、などです。恐らく皆さんもほとんど同じではないでしょうか。ところが、一般的な電話応対教育の目標は、この「好きな応対」ではなく、次に上げる「良い応対」の基準で行われているように思います。

良い電話応対、上手な電話応対とは

一般的に、良い電話応対の目標とされてきたのは「親切、丁寧、正確、迅速」の4原則でした。そしてそれを支えるのが、きれいな声、明瞭な発音、正しいことば遣いです。もちろんこの視点での教育を否定するものではありません。しかし、この条件を満たしたからと言って、それは「好かれる応対」になるとは限らないのです。むしろ、冷たい、事務的、上から目線で親しめない、などと言われて嫌われることすらあるのです。電話応対に慣れない新人のうちは、こうした評価を受けることは滅多にないでしょう。中堅、ベテラン層にそれが見られると言うのはどうしてでしょう。

「意識が行動を作る・・・」

「意識が行動を作る、行動が習慣を作る、習慣が人格を作る、人格が運命を作る」―――。

ヒンズー教の経典からとった「エコーの法則」と言われるこの箴言に、私は20年ほど前に出会いました。爾来、もしもし検定の研修などでもよく紹介しました。確かな意識を持たずに始める行動は、習慣化するとすぐ慣れになる。慣れで行動するようになると、人格を作るところまでいかない。行動する前に、まずしっかりとした意識を持つことが大事だと説いているのです。電話応対でも、豊かな経験と知識を持った中堅、ベテラン層の中に、お客さまに受け入れて貰えない要因があるとすれば、初期段階での意識教育の不足だと思います。良い応対の実現を目指して、どれだけスキル教育に力を入れても、意識教育を軽視しては、真の「好かれる応対」は生まれないでしょう。東京新宿にあるIデパートの社員教育の柱の一つに「新人は初歩的なことを学べ、ベテランは基本的なことを学べ」ということばがあるそうです。決して慣れに流されることなく、一本一本の電話に真摯に向き合う姿勢がなければ、心を伝えることはできないでしょう。

心を伝えるのは語調

では、心があれば伝わるでしょうか。そうはいきません。スキルが必要です。心を伝えるスキルは語調の変化です。発声・発音ではありません。大勢の前でのスピーチや大きな舞台での芝居とは違います。電話応対は1対1の対話です。電話の機器は格段に進歩していますから、大声を出す必要はありません。音量を一定にする必要もありません。息は大事ですが息をいっぱいに吸っては話せません。時には小声で、時には囁くような息の声で、そして時にはぶっきらぼうに。それを意識によって切り替えられるスキルが、伝え手の気持ちを素直に届けるのです。

「おはようございます」「お待たせ致しました」「有難うございます」「申し訳ございません」は、状況によって息の使い方が違い、語調が変わります。発声・発音にこだわると、すべての音節が同じように強調されるため、語調が単調になり、とても微妙な心の動きなど伝えることはできません。ことばや息を、多様に、多彩に使い分ける技術を磨いて、心を伝える音声表現力を高めてください。

岡部 達昭氏

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

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