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電話応対でCS向上コラム

第40回 続「どうなる?AI時代の電話応対」

前回、AI時代の電話応対について私見を述べましたが、言葉が足りず、誤解を招いたようです。特に以下の2点について疑問、反論を頂きました。①電話応対は本当になくなると思うのか。②オックスフォード・アクセントについてどう考えるのか。この2点の疑問を中心に、再度これからの電話応対教育について考えます。

電話応対は本当になくなるのか

結論から言えば、私はなくなることはないと考えます。前回ご紹介した、英オックスフォード大学の研究論文「雇用の未来-コンピューター化によって仕事は失われるのか」は、あくまで英国社会の現状を基にした予測であって、即、日本の電話応対業務に当てはまるとは思いません。しかしそうだとしても、早晩、AIという怪物が現れて、社会基盤を覆す大きな変革が起こることは、日本もイギリスも同じ命運のもとにあるはずです。そして今から始まるそのことへの対応力の差が、電話応対という仕事の未来を決めることになるでしょう。

日本語の特性とロボット応対

世界の言語の中でも、日本語は多様で多彩できめ細やかな言葉です。それでいてなお、日本語は「察しの文化」と言われるように、多くを語らずに、相手の心情まで察する言葉でもあります。日本語のコミュニケーションの基本には、「以心伝心」「言外の意」「惻隠の情」など、心と不可分な要素が強く働いているのです。AI時代の電話応対では、グローバルに各国語を操るロボットはさらに精度を上げて登場するでしょう。しかし、日本語の察しの世界、思いやりの対話まで求めると、ロボットが座る応対者の椅子は、まだしばらくはごく限定されたものになると思います。その間に、私たちは、ロボットに追い越されることのない情報収集力、思考判断力、そして高度な音声表現力を磨き続けることが必要でしょう。

「オックスフォード・アクセント」のねらい

前回の記述の中の「オックスフォード・アクセント」に関心をもった方が多かったようです。「オックスフォード大学には、オックスフォード・アクセントと呼ばれる独特の話し方指導のメソッドがあって、上級生が新入生にそれを教え継ぐのだそうです。そこでは訥々と、つっかえながら話す話し方を良しとし、立て板に水のような流暢な話し方は軽べつされるのだと、外山 滋比古さんが書いています。言葉を大切にするイギリスの伝統が生み出した特別なしつけだとしても、考えさせられました」。前回のこの引用と記述もやはり言葉足らずでした。「岡部さんはこうした話し方を薦めるのですか?」と何人かの方から質問されました。私が引用した意図は、訥々とつっかえながら話す話し方を良しとしたわけではありません。ただ、名門オックスフォード大学のこの風変わりな話し方指導のねらいを掴みたかったのです。外山さんの本にはそこまでは書かれていませんでした。大学に問い合わせたわけでもありません。以下は私の勝手な解釈です。

対話とは、聞き手と話し手の共同作業

立て板に水のような流暢な話し方は、心地よく聞こえて分かったような気になるのですが、実は意外に伝わらないのです。耳元を通り過ぎて行くのです。流暢な話し方は3分の1程度しか伝わらないという研究者もいます。これに対して電話応対では、まだ応対に慣れていない新人のオペレーターの話の方が伝わることがよくあります。その訥々とした話し方にお客様が気持ちを寄せて、聴き取る集中力を高めて聴いてくれるからです。つまり、見事に澱みなく明快に伝えるベテランよりも、訥々であっても、懸命に誠実に伝えようと話す新人の方が、お客様には好感を与え、満足してもらえることがしばしばあるのです。

実りある対話、良い電話応対とは、「常に聞き手と話し手の共同作業」です。一方だけが、いくら流暢にきれいに話しても、それは良い応対にはならないでしょう。相手に合わせる意識が大事なのです。オックスフォード・アクセントは、言葉を大切にするイギリス社会の伝統が生み出した、話し方の極意なのかも知れません。近づくAI時代を前にして、私は今その視点から、もしもし検定や電話応対コンクールの応対を聴き直しています。

岡部 達昭氏

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

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