電話応対でCS向上コラム

第28回 「教えるコミュニケーション、教わるコミュニケーション」④ “教えられる技術”がある

人間は教えられることによって成長します。成長とは生きている証です。ところが、教える側は、教えることで多大なエネルギーを消耗します。ですから、絶えずエネルギーの補給をしなければなりません。「師は弟子の3倍努力しなければならない」という言葉は、まさに師という立場の厳しさを表わしています。

一方、弟子の目標は「師に追い付き追い越せ」です。そのためには、座して師の指導を待つのではなく、積極的に「教えられる技術」を身に付けることがその第一歩です。

教えられる技術で差がつく

かつてNHKの教育テレビに、“ベストゴルフ”というゴルフのレッスン番組がありました。キャスターをしていたのが、プロゴルファーの湯原信光さんと森口裕子さんのお二人。番組も終盤になったある回で、お二人がこんな会話をしていました。

「この番組って、ゴルフ上達のための技術を教えてきたんだけど、実は教えられる方にも、磨かなければならない技術があるんじゃないかなー?」「うん、あるある。それは確かにあるね」。つまりやみくもに努力するよりも、「教えられる技術」を身に付けることで、上達度に明らかに差が出ると言うのです。

3つの「教えられる技術」

そのときお二人が上げた「教えられる技術」とは次の3点でした。

1.欠点を晒せ 2.師は一人 3.不足を固めろ

この技術は、ゴルフ指導だけではなく、電話応対指導にも、その他もろもろの技術指導にも、そのまま当てはまると思います。この3つの「教えられる技術」について、少し詳しくお話いたします。

1.欠点を晒せ
以前にある企業のコミュニケーター研修をしたときのことです。応対を事前に録音したテープを聞かせてもらいました。ところがそのうちの何人かの人が、何回も録り直し、挙句の果てに編集までして、悪いところを全部カットしたテープを出してきたのです。気持ちは分かりますがこれでは研修になりません。どんなに恥ずかしくても、自分の普段の姿、自分の欠点を素直に晒してこそ、適切な指導が受けられるのです。
2.師は一人
ゴルフの世界には、一日でも先にゴルフを始めると、もう先輩面してあーだこーだと教えたがる人がいます。ましてある程度経験を積むと、頼んでもいないのにやたらに指導をしてくれます。親切心は有難いにしても、それぞれが部分だけの指導をするものですから、言われた方はすっかりフォームを崩してしまいます。

中国の故事に「3年かけて自分流に努力するよりも、3年かけて良き師を探せ」という言葉があります。金メダリストの陰には、必ず人格的にも優れた一流のコーチがいます。何ごとをなすにも、まず良き師を探すこと、そして一人に絞ることです。
3.不足を固めろ
優れたコーチは、欠点を見抜くことに長けています。あれこれ欠点を指摘し、改善策のアドバイスをくれます。ところがそれを実行しようとしても、なかなか成果が上がらず、ほとんど中途半端で終わってしまいます。ベストゴルフでは、「あれもこれも直そうとするな!最も欠けた点1点に絞って、それが完全に出来るまでがんばりなさい。それが出来るようになった時、不思議とほかのこともできるようになるのです」と教えていました。

岡部 達昭氏

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

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