電話応対でCS向上コラム

第23回 「電話のコミュニケーション」②電話応対とは聴くことである

今年の電話応対コンクールの問題が、本誌4月号に載っています。テーマは「聴き取る力を磨き、訊き出す力を鍛える」です。「聴く力」については、これまでもコンクール問題で何回かとり上げていたと記憶していますが、テーマとしてはっきり掲げたのは今回が初めてではないでしょうか。「電話応対とは聴くことである」。この力を磨くことこそ、電話のコミュニケーション力を高めて、日常の応対に生かす重要な鍵となります。

難しい聴き方の指導

電話応対教育といいますと、現状行われているのはほとんどが話し方の指導です。聴き方より話し方の方が、欠点が見えやすいため指導もしやすいのでしょう。それにどちらかというと応対者主導ですからマニュアルにも馴染みやすいのです。一方聴き方の方はお客さま主導ですのでどう展開するか分かりません。その流れにぴったりついて行かなければならない難しさがあります。ですから、聴き方教育の本格的指導ノウハウの開発は、これからの大きな課題なのです。

正確に聴きとり訊き出す

話の上手な人より、話を真剣に聴く人の方が好かれます。だからと言って、ただ聴けば良いわけではありません。ビジネス電話で大事なことは、集中力を持って正確に聴き取ることです。さらに不足情報を訊き出すことです。そうして得た情報を、聴きながら整理し判断し、核心は何かをつかむのです。お客さまが一番求めていることは何かです。この聴きとる力こそ電話応対の要です。当面のトレーニング方法として、定期的に1分から3分程度の情報を聴いて、その核心は何かを直ちに判断するというトレーニングも、集中して聴くことに慣れ、聴き取る力を鍛えるには有効です。

良き問いは、答えに勝る

今年のコンクール問題には、どのような質問をするかは書いてありません。すべて「……」になっています。何を訊くかによって、質問者自身のものの考え方、判断力、人柄までも問われるのです。お客さまがどう答えるかは分かりません。トレーニングの過程では、話の展開に合わせて、何を訊くか、どんな言葉で質問するか、どの順で尋ねるか、質問の矢をいっぱい考えてください。試行錯誤をしてください。核心を押さえて、柔軟に頭を働かせ、切り替えられるようにしてください。良い問いは、答えに勝るのです。

手際良く聴く

「手際良く聴く」とは、必要な情報を整理して聴き取り、そこからさらに不足情報を訊き出す判断力です。ベテランの応対者の中には、お客さまの話を全部聴かないうちに判断して答え始める人がいます。応対は迅速かも知れませんが、お客さまには不満が残ります。ビジネス電話では「一を聴いて十を知る」と言うわけには行かないのです。大事なことは、お客さまの安心と満足を最優先にした、手際の良い聴き取りと判断です。

温かく聴く

手際の良いテキパキした応対は、一歩間違えますと、お客さまに「事務的にさばかれた」という不満感を与えることがあります。ここで大事なことは、如何に温かく聴くかです。それは共感力であり、相づち力です。お客さまの気持ちをくみ取って、どのような生きた言葉で共感しながら聴くかです。お客さまの不安な気持ち、嬉しい気持ち、怒りや悲しみの心に素直に反応し、自然に思わず出る相づちで聴くのです。「ほんとにそうですねえ」「分かります分かります」「それは迷いますよね」「素晴らしいですね」。そのひと言が心に届いたとき、お客さまは満足してくださるでしょう。

岡部 達昭氏

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

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