電話応対でCS向上コラム

第19回 気をつけたい三つの省エネ話法

きれいで聞きやすい声、完璧な言葉遣い、確かな業務知識、よどみなく流れるような説明。自信に溢れたこうした応対は耳には心地よく、何となく「分かった」気になります。ところが、肝心の内容がしっかり伝わってこないのです。それどころか、捌かれたという不快感が残ることさえあります。ベテランに多いこうした応対の原因は、気づかずに陥っている、話し方の三つの省エネにあるのです。

語尾の省エネ

使いなれた言葉には、無意識のうちに簡略化しようという力が働きます。「お名前をどうぞ!「」ご住所をどうぞ!」「お品物がまだ届いていないと言うことで・・・」などのように、言葉を最後まで言わずに止めてしまって、あとはお客さまに預けてしまうのです。いかにも雑に聞こえます。「お名前をお聞かせください」「ご住所を教えていただけませんか」「お品物がまだ届いておりませんでしょうか」と、語尾を省略することなく最後まできちんと話すことで、言葉の丁寧さだけではなく、お客さまを大切にする心の丁寧さを感じさせます。

「間」の省エネ

電話では、聞き手は話し手が話すリズムに同調しながら聞いています。話し手が「間」をとって考えれば、聞き手もその「間」で同じように考えます。ですから、話し手がセンテンスの切れ目で句点を打てば、その一瞬の「間」で、聞き手は言葉の意味を理解しているのです。と言うことは、話し手が「間」の省エネをすれば、聞き手には伝えたことが伝わりにくくなるのです。

忙しいコールセンターやコンタクトセンターなどでは、掛ってくる「呼」の応対に急きたてられます。話し方も、早口というより「間」を省略してしまうのです。中でも、業務知識が豊富で判断も早いベテラン応対者は、考える「間」もなく、流暢に言葉が出てきます。その流暢さに引っ張られてお客さまは分かったような気になりますが、実は分かっていないことが結構あるのです。それに、「間」がないと質問もできませんね。

抑揚の省エネ

日本語は音の高低、つまり抑揚によって表情や意味が変わってくる言葉です。言葉の意味を強調したり、お礼やお詫び、お願いなどの言葉を言うときには、息の言葉や裏声なども使いますが、高低の抑揚が大きくものを言います。

通常、私たちが話をするときには、2オクターブぐらいの高低の幅で表情を作りながら話しています。それが省エネ話法で話しますと、使う音の帯域が狭くなります。そのため無表情で事務的に聞こえるのです。

効率化優先で電話応対業務が集約される中、責任を持たされるプロの皆さんは、知らず知らずのうちに省エネへと追い込まれているのです。ことに「間」と「抑揚」の省エネについては、気がついている人は少ないように思います。それは流暢な応対の裏返しでもあるからです。そしてもう一点。同じ言葉を何度も繰り返していると、言葉は慣れになり表情を失います。たとえマニュアル言葉であっても、その言葉の意味を大切に伝えれば、自ずと「間」も生まれ、抑揚にも変化がつくはずです。そして、語尾の省エネもなくなるでしょう。

岡部 達昭氏

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

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