電話応対でCS向上コラム
第11回 お客様の立場に立てますか「お客様の立場に立て!」企業、中でもサービス業で働く人は、この言葉を、ことあるごとに言われるでしょう。しかしこれほど難しいことはありません。本来、人間は自分中心が当たり前なのです。サービスの基本であるお客様の立場には、容易に立てないのです。
お客様の立場に立つとは?
簡単に言えば、常にお客様の気持ちに添って、1.お客様の疑問、不満、要求を正しく理解すること。2.その疑問や不満、要求に速やかに適切に応えること、です。ところが上司が躍起になって教育しても、以前のように、温かい心の感じられる応対が少なくなったように思います。その理由として考えられることが3点あります。
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マニュアル教育が徹底すると、それ以外の余計な心遣いをする必要はないと考える。
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便利で豊かな暮らしが、助け合うことを特に必要としなくなった。
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家庭でも学校でも、相手の気持ちを慮る(おもんばかる)ことの大切さを特に教えていない
感動したあるデパートでの接客
かつて出張先の福島で経験したことです。測秒計が動かなくなったので駅前のデパートの時計売り場に行きました。「電池切れだと思うので換えて頂けますか?」応対した中年の女性の店員さんは一瞬ためらいをみせました。そして「私どもでお取り換えしますと、電池代の他に修理代を1000円頂くことになります。この電池は200円ぐらいでコンビニでも売っておりますので、そちらでお買いになった方がよろしいかと思います」。彼女はそう言ってすぐ近くのコンビニを教えてくれたのです。コンビニで180円ですみました。
その一人の店員さんのお陰で私はそのデパートがすっかり好きになりました。
理屈より、感動事例で教える
「お客様の立場に立つ」とは理屈ではありません。心の問題です。困ったり悩んだりしている人、ときには喜んでいる人の気持ちを理解して共感することです。時には損をして、お客様のために犠牲を払うこともあるでしょう。あなたの職場にも、あなた自身にも、感動の事例はたくさんあるはずです。そのストックを増やしてください。それを他の人に話してください。その共感が意識を変え、行動を変えることになります。
心が大事だと言いましたが、その気持ちを表現する言葉は更に大事です。感動事例を課題にシミュレ―ションをして、皆で表現を考えてください。「お客様の立場に立つ」ということが、さらに明確になり身に付いてくるでしょう。
岡部 達昭氏
日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。