電話応対でCS向上コラム

第3回 メディエーションの場を作るための戦略

トラブルなどにおいて第三者が当事者同士の話し合いを促し、解決に導くメディエーション(調停)。前回はメディエーションを行うメリットについてお話ししました。第3回の今回は、仲介に入るメディエーターが何を配慮すべきか、についてお話しします。トラブル収拾の極意を学び、職場などでトラブルが発生したときに、当事者同士の相互理解を促すコミュニケーションの基本を身に付けましょう。

メディエーションの最初の一歩は“理解”

メディエーションは三者間の対話ですから、まず、三者が揃う場を持つことが必要です。当事者、特に相手方は、そのような場をもつことに不安を持っています。そこで、メディエーションの場を持つためにはまず、「不安はあるが、一度話し合ってみようか」と思ってもらうこと、そのための働きかけが大切です。

往々にして、申立人よりも相手方の方がメディエーション(調停)に対する不安は大きいものです。そのためにも相手方に「メディエーションはどちらが悪いかを決める手続きではないこと」、まずはお互いの気持ちも含めて話し合う場を作るものであること、メディエーターはそのお手伝いをする立場であることを理解してもらう必要があります。具体的にはまず、メディエーターは相手方に対して、時間や場所等については考慮し、あなたの気持ちを害さないようすると、しっかりと伝えます。

それに加えて「直接二人で話し合うよりもメディエーターを入れてお話しする方が円滑にお話しできると思います。この機会をお互いに、無駄にしないようにしませんか?」などと説明してみるのもいいでしょう。

不安を拭うのもメディエーターの役割

とはいえ、相手方は話し合いの場に参加することに対して不安を抱いているものです。それを拭うのもメディエーターの役割です。

たとえば「話し合いに応じることで自分の能力がないことを社内中に示してしまうかもしれない」と相手方が思っているとします。

そんな時は、「むしろ話しをすることができることは、コミュニケーション能力があることとして、評価されること」であること、そして同時に「メディエーターは守秘義務を有していること」を相手方に伝えましょう。

それでも相手方が、自分の責任を追求されるのではないか、と不安を感じている場合には話し合いに応じてもらえない可能性もあります。その際には「ここでの調停とは、促進型といって、メディエーターがアドバイスをしたり、責任を追求することはないこと」を伝え、話し合いの場を持つ目的はあくまで「相互の理解を高めることから始めたい」ということを伝えましょう。

最後に残る相手方の不安要素は「このメディエーターは信頼できる人間かどうか」でしょう。その時は堂々と「そのように懸念される気持ちはわかります。しかし、メディエーションは裁判の仕組みと違い、調停人(メディエーター)が有利不利を判定するものではありません。「調停」の場こそが、お二人のお話しする、真剣勝負の場で、わたくしにも真剣に聞く用意があります」としっかり伝えましょう。

会社内で、メディエーターの活躍する場を作れるかは、往々にして、会社の文化や、従業員の意識に左右されます。話し合うことで解決することは、理不尽なまた、陰湿ないじめや、パワハラなどの違法な行為がなくなることを意味します。上司と部下、同僚との問題を対話によって解決することは、一朝一夕に作る文化ではなりません。しかし、メディエーターの上記のような働きかけ、さらにそれにより場が作られ対話に
よって解決できたという実績は、対話の文化を作る大きな力になると思います。

※メディエーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

稲葉 一人(いなば かずと)氏

中京大学法科大学院教授。東京・大阪地裁判事、法務省検事などを経て、現在本務のロースクールのほか、久留米大学医学部、熊本大学大学院などで教壇に立つ。また、日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定委員会委員・専門委員会委員を務めている。米国に留学し、ADR(裁判外紛争解決)を研究し、メディエーションの教育者・実践者である。JICAを通じた海外の裁判所における調停制度構築のプロジェクトを進め、2012年10月にモンゴル国最高裁から「最高功労勲章」を授与された。

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