電話応対でCS向上コラム
合同会社石亀美夜子オフィス-第67回 「あなたに会ってみたい」と思わせる電話応対
記事ID:C10116
相手の琴線に触れる何か
企業の社員の電話応対と応対技能のレベルアップを通じてCS経営の推進を図る目的で毎年開催されている電話応対コンクールは、今年で63回目を迎えます。私がコンクールに関わらせていただくようになってから、早30年が経ちました。テレビやラジオで話す仕事をしてきた経験を活かすことができればと、テレコミュニケーションの指導の世界に入りました。元々電話応対を仕事としてきた訳ではありませんので、電話応対コンクールを通して出会った競技者の皆さんから、応対のスキルやお客さまに対する配慮の仕方など、教える側にも関わらず、教わったことの方が多かったかも知れません。
その中でも印象深く覚えているのが、少し前のことになりますが、中国地方のある老舗旅館の電話オペレーターさんのことです。電話をかけてくるお客さまから、「あなたに会いたいので、勤務の日を教えてほしい」と言われることが度々あるという話を聞きました。その人は、明るい伸びのある声で、とても印象の良い応対をされる方でした。電話応対コンクール全国大会で入賞されたこともあります。
お客さまに「あなたに会ってみたい」と思わせる電話応対とは、どのような応対なのでしょう。ただ単に声が美しいからというようなことではなく、その人の人柄や気持ちの伝わる応対、相手の琴線に触れる何かが、応対の中に感じられたからこそ発せられた言葉です。
生身の人間だからこそできる応対
ここ数年でChatGPTをはじめ、AIのビジネス活用が進み、電話応対も大きく変わってきました。電話を通じて、何か問い合わせをしたいと思っても、以前だとオペレーターがすぐに対応してくれたコールセンターも、生身のオペレーターにつながるケースが稀まれになりました。これも、人材不足や業務の効率化を考えるとやむを得ない流れで、これからさらにAIオペレーターの活躍の場が拡がっていくことでしょう。
じゃあ、人間の電話応対の機会が無くなるのか、と言うとそんなことはありません。AIでは、相手の気持ちを察したり、感情の機微を汲み取ることは難しいそうです。生身の人間だからこそできる、相手を気づかったり、状況を想像したり、そして、自分の思いを相手の心に届くように話せる音声表現力など、AIオペレーターにはできないコミュニケーション力を身につけることが大切です。AIと競うつもりはありませんが、生身の人間だからこそできる応対、お客さまに「あなたに会いたい」と思っていただけるような応対のできる人材を、電話応対コンクールなどの場で、これからも育てていきたいと強く思っています。
石亀 美夜子氏
合同会社石亀美夜子オフィス 代表。フリーランスアナウンサー。TVのワイドショー・レポーターとして活動後、専門学校講師を経て、ユーザ協会契約講師となる。電話応対技能検定(もしもし検定)、電話応対コンクールなどで、採点審査、指導を担当。社会人落語家としての顔も持つ。電話応対技能検定指導者級資格保持者(3期生)。