電話応対でCS向上コラム
-つながり計画-第60回 電話応対:WHY の共有
記事ID:C10096
今から約20年前、テレビショッピング会社のコールセンターに採用されたことが電話応対との出会いでした。そこは開局2年目の小さなセンターで、電話が混み合うと他部署の社員も受注電話に出るという、皆でお客さまと向き合っている組織でした。今となっては笑い話ですが、社長もよく電話に出ていて、うまく応対できず「社長を出せ」と言われ「私が社長でございます」と答えて余計に怒られたというエピソードもありました。
売上も順調に伸び、組織も大きくなってきた頃に担当した業務が、コールセンターの人員配置のプランニングです。ほかのコールセンターと異なるところは、着電数が番組ごとに大きく変化することです。それに合わせて、受注スタッフの人数も1時間ごとに変化させる必要があったため、過去のデータを基に放棄呼のバランスなどを計算し、1日あたり32時間分(翌朝8時まで)のシフトを作成するという作業を行っていました。本国(アメリカ)からのコスト削減の指示も厳しく、いかに通話時間を短縮し、オペレーターの稼働率を上げて人員を整理していくのかが私の使命となりました。実はこのコスト削減に伴い、コールセンターの応対品質が急激に低下していきました。そこで私が応対品質管理グループを任されることになったのです。
「WHY」を伝える
コスト管理をしていた頃は、応対時間の短縮化を現場に指示するだけでしたが、コストはそのままに応対品質を向上させるための施策を展開することが必要になりました。そこで自分を含めて指導を担当しているスタッフが自信を持って電話応対の指導ができるように推進したのが、電話応対技能検定(もしもし検定)の取得でした。指導する立場の我々が、電話応対に関わる勉強をしている姿を見せることが大切だと考えたわけです。
過去に某テーマパークで勤務した経験から、スタッフへの「WHY」の共有の大切さを認識していました。スタッフが「なぜ」を理解することで行動指針を活用できるようになります。そのためにも、電話応対の「なぜ」や、私たちが大切にしたい価値観を理解してもらうことを念頭に評価システムや研修内容を変更し、電話応対のプロとしてすでに活躍しているメンバーのために、応対のアイデアにしてもらえることを意識して、さまざまな研修を開発しました。
経験をすべて活用する
今でも電話応対の指導をする時、「適切な良い応対は、短い時間でお客さまの満足を得ることができる」と伝えています。丁寧な応対は時間がかかるので、オペレーターの処理能力を上げるための研修をしてほしいという話が出ることがあります。本当に大切にしなければならないこと(WHY)を仲間と話し合い、その組織らしい応対を作り上げていくことが大切と考えています。
コールセンターには、さまざまな経験を積んだ方々が集まっていると思います。お互いの経験を享受し、積み重ね、よりユニークな応対を作り上げていってほしいと思います。
中野 英行氏
つながり計画代表。音楽を学んだ知識を活用して日本語の表現に音楽的要素を合わせた電話応対の指導などを行っています。LEGO®SERIOUSPLAY®メソッドや打楽器などを使った音楽ワークショップなどを通して、相互理解やコミュニケーションを活性化させるお手伝いをしています。電話応対技能検定指導者級資格保持者。