電話応対でCS向上コラム

-株式会社八十二銀行-
第58回 企業とお客さまを結ぶ、かけ橋として

記事ID:C10088

 電話応対業務と出会い、今年で30年になります。この間、通信会社やパソコン周辺機器メーカーなどのコールセンターを経て、ここ10年ほど、長野県にある金融機関に勤務しています。長年の経験から、業種により、お客さま対応の難しさがそれぞれ異なることは理解していましたが、金融機関とお客さまとの関わりは、私の想像をはるかに超えるものでした。ほかの業種に比べ、お客さまが期待するサービスレベルがとても高いと感じたのです。それは、生活に欠かせないお金を扱っている業種であるからなのは言うまでもありませんが、それだけではない気がしてなりませんでした。

提供する価値とお客さまが求める価値

 金融業界では今、お客さまとの接点におけるデジタル化が急速に進んでいます。当行でも、インターネットバンキングのバージョンアップや来店予約システムの導入など、「お客さま利便性の向上」と銘打ち、手続きやサービスのデジタル化を強化しています。お客さまとの会話の中にも、「簡単・便利・お得」という言葉が、頻繁に使われるようになりました。
 しかし、日々寄せられるご意見の中には、「バージョンアップしたらログインできなくなって困っている。これのどこが簡単なんだ!」「窓口で操作方法を教えてもらいたいのに、予約してから来てくださいって。行きたい時に行けないなんて、銀行も不便になったものね」と、厳しいお声が少なくないのが現状です。
 そんなご意見に対し、「迅速・正確・丁寧」に応対するだけではダメだ、どうすればお客さまが求めているサービスレベル以上の応対ができるのだろう、と考えながらコール分析を行っていた時でした。「ねぇ、ちゃんと私の話を聞いてよ。電話じゃなくて窓口で話を聞きたいと言っているじゃない!」「まったく不便になったもんだ、この時間を返してくれよ!」「前のほうが良かった、もう疲れちゃったよ」と、お客さまの深い感情である、心からの声が聞こえてきたのです。

お客さまとの信頼を築くための順番

 金融機関に対しての一般的なイメージとして、「お金に関する知識が豊富」「仕事が正確で間違わない」などがあります。しかし、当行のお客さまはそれ以上に、「話をしっかり聞いてくれる人」「悩みを分かってくれる人」「誠実で信頼できる人」と、私たちをもっと身近な存在に思ってくださっているのだと気がつきました。「良いサービスがあるから利用する」のではなく、「信頼関係があるからそのサービスを利用したい」この「順番」が重要なのだと強く感じたのです。
 そこで、まずは信頼関係を築くために、電話のほうが簡単に解決できる理由をじっくりお伝えし、どうすれば便利になるのかを分かりやすくご説明する。そして、お得になったその先のプラスの効果を実感していただくことで、「お客さま利便性の向上」につなげていきたいと思っています。これから先の、10年後、20年後も、地域の皆さまにとって、なくてはならない存在であるために。

次回の講師は、株式会社ラハマン農園 販売部のラハマン 暁子さんです。第7期と第8期の指導者部会委員で、長年のコールセンター業務ご経験の後、現在はフリー講師の傍ら、自社で栽培した野菜を直販する部署で活躍されています。行動力があり、周りを元気にしてくださる素敵な方です。

西村 厚子氏

日本テレコム株式会社(現ソフトバンクテレコム)、株式会社アイ・オー・データ機器などを経て、現在、株式会社八十二銀行に勤務。CTI 企画、コールセンター立ち上げからコミュニケーター育成、お客さまの声を分析し、データドリブン経営に活かすCS 戦略などが専門。電話応対技能検定指導者級資格保持者(第21期)、IT コーディネータ(経済産業省推奨資格)。デジタルデマンド株式会社取締役(教育事業担当)を兼任。

入会のご案内

電話応対教育とICT活用推進による、
社内の人材育成や生産性の向上に貢献致します。

ご入会のお申込みはこちら