電話応対でCS向上コラム
-株式会社I ELLE(アイエル)-第56回 心に響く言葉
記事ID:C10082
弊社は人材育成事業とブライダル事業の二つの事業を行っています。人材育成事業としては、覆面調査・覆面電話調査セット研修が好評で、店舗や企業に出向き、環境などのハード面、接客態度などのソフト面の両方を覆面で調査し、結果に基づき研修を行います。客観的な視点で調査することで、店舗や企業の強みを活かし、改善点に焦点を絞った効果的な研修に取り組むことで短期間で効果が出ており、大変喜んでいただいています。
継続は力なり
毎月、覆面調査と覆面電話調査を行っている介護施設があります。こちらの施設では、介護サービスの基本は「おもてなしの心にある」をモットーに業務に取り組まれ、接遇研修や電話応対研修が現場でどう活かされているのかという調査を始めて10年になります。
電話応対では、最初の頃は話癖が多く、カジュアル過ぎる言葉づかいなど、問題が山のようにありましたが、当初からいる職員はどのような質問を投げかけても戸惑うことなく、お客さまが安心できるような説明と好感が持てる音声表現で責任感のある応対ができるようになりました。
言葉に隠れた思いを察する
ある日、覆面電話に出たのは、電話応対の経験が浅く、ボソボソと小さな声で話をするAさんでした。案の定、小さな声で元気のない第一声。その後の応対に期待することもなく、今回の問題の「個別ケアの提供とはどのようなことですか?入所を検討していますが、最近父がわがままになってきて、一緒に生活するのが困難になってきたので教えてください」という質問をしたところ、ひと通りの説明の後「こちらでは、わがままではなく、こだわりと捉えておりますのでご安心ください」という言葉が返ってきました。「わがままで一緒に生活するのが困難だけど大切な家族。離れて暮らすのが心配」ということをAさんは瞬時に察してくれたのです。
決してスキルの高い応対ではありませんでしたが、Aさんの思いが伝わり、心が温かくなりました。この施設なら父を任せられる!と思えました。
思いを伝えるには豊かな音声表現が必要と思ってきた私にとって、この出来事は、衝撃的でした。小さくてボソボソの声でも「相手を思い、心から出た言葉は心に響く」ということをAさんから学びました。
それからは、その人らしい伝え方や音声表現で、相手の心に響く応対ができているかに力を入れ指導するよう心がけています。これからもお客さまの言葉をよく聴き、お客さまの心が温かくなるような応対を目指し、一緒に考え共に成長していきたいと思います。
森 良子氏
株式会社I ELLE 代表。電話応対技能検定指導者級資格保持者(11期)。企業や団体の電話応対研修、ビジネスマナー研修・コミュニケーション研修を行うほか、各種イベント・式典・ブライダルなどの司会を務めている。