電話応対でCS向上コラム

-フリーランス講師-
第43回 相手を想うことの大切さ

記事ID:C10043

突然の怒りに戸惑う

 これは、随分前に行った電話応対コンクール事前研修の時の出来事です。私はその年に初めて電話応対コンクールに出場する組織の研修を担当することになりました。組織の上層部の方からのご依頼は「参加者は全員が事務職、なおかつ初めての出場でどのように問題に取り組めばよいか分からない」ということでしたので、問題のねらいや概要、どのように会話を進めていくかなどの研修を進めていました。研修も後半にさしかかった頃、一人の参加者の方が頭を抱え「この研修は、私が求めている内容と違います。私は答えを教えてほしいのです。そもそも問題の設定は営業職で、私たちは事務職です。全く関係がないのに、なぜこんなことを考えないといけないのですか」と強い口調でおっしゃいました。

相手の心を理解しようと努める

 私は、その申し出に戸惑いました。事前打ち合わせやご挨拶の際には、そのような反発があることを聞いていなかったからです。私は気持ちを落ち着かせるためにも、まずはその方がおっしゃったことを復唱しました。復唱すると不思議なもので、どうしよう、と考えていた自分の心も頭も一瞬で整理されていったのです。第一声は自分でも驚いたのですが、相手の立場に立った共感の言葉でした。
 「今回の問題は営業職で皆さんは事務職、関係ないと考えるかもしれません…。しかし、営業職でなくても、お客さまに対する応対を考えることは大切なことで、事務職も同じではないでしょうか。ご一緒に働いている営業の方の気持ちを考えるきっかけにもなりませんか」と、ゆっくり問いかけました。そして、電話応対コンクールを通じて身につけられる考え方、スキル、応対に答えはなく、自分自身で考え抜いていくことが自分の仕事にも役立つことなどをお話しました。すると、自分の気持ちをぶつけられた参加者も徐々に落ち着いてきたご様子でした。その方の話をよくうかがうと、日々の仕事が忙しい上に電話応対コンクールのことも考えなければならないため、気持ちも一杯一杯だったようです。
 私自身、ドギマギしながらも、相手の状況や気持ちに耳を傾け、理解を示すこと、その上でこちらの意見を聞いてもらえることがいかに大切か身に沁みた出来事になりました。これが、傾聴などを学ぶ前の私であれば、相手への理解姿勢が足りず、対処に至らなかったはずです。

マナーの根底にあるもの

 この仕事を始めて一年目、電話応対コンクールの研修や審査に携わっている大先輩が「私たちは電話応対コンクールで勝ち上がるための仕事をしているんじゃない、この地域のマナーの底上げがしたいのよ」とおっしゃいました。その言葉を聞いて感激した私は、仕事の根底にあるものを考えるようになりました。その後、さまざまな経験を経ていく中で定まった私のモットーは「心豊か」です。マナーは形や表面的なものではありません。相手のことを考え、心ある言動を行うことで周りを笑顔に、温かくすることができ、結果的に自分の心も温かくなります。これは、どのような人、仕事にも必要なことです。幸い、私は幅広い年代の方、さまざまな職種の方に接する仕事です。これからも、その方々が心あるマナーを身につけることによって自身にどのような良い影響があるかを考えてもらい、心豊かな毎日を過ごしていけるように、お伝えしてまいります。

次回の講師は、NTT ビジネスソリューションズ株式会社の米田 浩子さんです。組織内の検定指導、社内独自の電話応対診断や研修などを担当されており、社外ではキャリアコンサルタントとしても活躍中の明るく温厚で頼れる女性です。

節政 沙弥香氏

フリーで講師業を行う。非常勤先の専門学校、短大では、ビジネス実務や秘書実務演習、電話応対等の授業を実践方式で担当。依頼に応じて企業、病院、官公庁などの人材育成研修を担当。電話応対技能検定指導者級資格保持者。電話応対コンクールの事前セミナーや審査にも携わっている。

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