電話応対でCS向上コラム
-霧島酒造株式会社-第41回 「一期一会」の尊い時間を大切に
記事ID:C10039
私が勤務する霧島酒造株式会社は、宮崎県都城市という霧島連山に囲まれた自然豊かな盆地にあります。この地で採れたサツマイモを原料に本格焼酎を造り続けて、創業106年目を迎えます。本格焼酎「黒霧島」の発売をきっかけに、今では全国のお客さまに親しんでいただけるようになりました。
気づかせてくれたお客さまの言葉
当社の「お客様相談室」では、商品に関するご相談のほか、キャンペーンの窓口も兼務しています。数年前、これまでの手法をガラリと変え、SNS限定のキャンペーンを実施した時のことです。これまで楽しみにご参加いただいていた、特に年配のSNS に不慣れなお客さまから多くの反発の声が寄せられました。電話口で可能な操作を探りながら応募を支援するも「はがきの応募でよかったのに!」と、これ以上の操作説明に応じていただけず、応対が終わってしまうこともありました。多くの応対経験を積んでいても、新しい分野の説明は苦労しますし、心折れる応対が続くと自信が揺らぎ、言い訳したい気持ちも募ります。
そんなある日、年配のご婦人とやっと応募完了にこぎつけることができました。「よかった!」とホッとしていたところ、最後にご婦人がこんな一言をおっしゃいました。「長い時間、辛抱強く説明してくれてありがとう。私たち夫婦には子どもがいなくて、スマホの使い方を気軽に聞ける若い人が身近にいないの。詳しく説明してくれたおかげで、スマホでこんなことができると知ることができました。聞いてよかった!」と。思いもよらない一言にハッとさせられました。私にとっては日常業務の一つでしたが、ご婦人にとってはもっと大きな意味があったのです。何かほかにもできたのではという心残りとともに、これまでのやりとりの時間が尊いものだったのだと気づかされました。
一期一会の心で
日々たくさんの応対を行っていると、頭では分かっていても「10件」「100件」という件数がただの数字に思えてしまいがちです。しかし、その1件には必ず「一人の生身の人」がいて、それぞれの人生があります。お客さまの人生の大切な時間をわずかでもともにするのですから、改めて「一期一会」の心で大切に応対したいものです。
お客さまからいただく声にはたくさんの感動やヒントが詰まっています。当社では毎年5月に「お客さまの声を聞いてみない会?」と題し、いただいた声の一部を社員に生で聞いてもらう活動を展開しています。今年はどんな声を届けられるかな?今から楽しみです。
谷口 幸子氏
霧島酒造株式会社 品質保証部 お客様相談室室長。電話応対技能検定指導者級資格保持者(25期生)。現在の「焼酎の里 霧島ファクトリーガーデン」にて工場見学案内などの対面業務に従事後、2007年よりお客様相談室創設に参加、現在に至る。新入社員の電話応対教育や社内電話応対コンクール出場者の指導に携わる。