電話応対でCS向上コラム

第34回 お客さまからいただいた、ありがたい言葉-合同会社テルザハート-

記事ID:C10025

 私は現在の仕事に就く以前、物流会社で再配達や集荷の受付をするコールセンターに勤務していました。
 再配達などは自動受付システムでご依頼いただけるので、オペレーターが応対する多くは、大至急対応してほしいといった要望や配達員への不満、少し間違えばクレームに発展しそうな案件など、最初から声色の強いお客さまでした。
 私はそのような応対になると、謝罪の言葉を伝えていても「それで謝っているのか」「今笑っただろ」というようなお声をいただくことが多く、自分では精一杯お詫びをしているのに、なぜこのようなご指摘を受けるのか分からずにいました。

気づきと成長を与えてくれた「電話応対コンクール」

 そうした中、「電話応対コンクール」に出場する機会をいただきました。コンクールで出題された問題は「健診センターのスタッフとして、お客さまにお詫びと事情説明を行い、次につなげる」という内容でした。
 コンクール出場に向けて、音声表現の練習をする中で大きな気づきがありました。自分の電話応対の録音を聞いてみると、お詫びの言葉を言っていても語尾が笑って聞こえるのです。目を閉じて聞くと、より、そう聞こえます。
 電話での応対は顔が見えません。「お客さまにもそう聞こえていたのか」と愕然とし、「それで謝っているのか」と指摘された原因に気づいたのです。
 そこで電話応対を繰り返し練習するうちに、笑っているように聞こえた語尾を消すことができるようになり、以前よりも成長できたと実感したのです。

「まるで尋問されているようだ」という言葉

 ところが、その後「お客様相談室」に配属された私は、あるお客さまから、今でも忘れられない言葉をいただいたのです。
 それは「まるで尋問されているようだ」という言葉です。自分では丁寧に応対していたつもりでしたので、とてもショックでした。
 当時の相談室は、「お客さまのお話を正確に聴き取り、担当部署へ正しく伝える」ということが仕事でした。私は、「正確に把握する」という気持ちが先に立ち、自分が知りたい情報だけ訊き出すことを優先していたのです。
 お客さまに寄り添って「聴く」ことが大切なのに、「訊く」ことばかりの応対をした結果、「まるで尋問されているようで不快だ」という言葉をいただくことになってしまったのです。この言葉は、自分の応対を反省し見直すきっかけになりました。
 クレームの場合、激高して感情を爆発させたり、淡々と苦情を述べられたりと、お客さまによって表現の違いはありますが、お客さま自身が「こうしてほしかった」というご要望や「こうあってほしい」という期待を持っているからこそ、「怒り」の感情として現れるのです。
 そこで私は、お客さまはなぜそのような言葉を言われたのか、「お客さまの言葉の裏にある本当の気持ちを察する」ということを意識して応対していくうちに、次第に「君が悪いわけじゃないのだけど…」「聴いてくれてありがとう」というお言葉をいただけるようになっていきました。
 「まるで尋問されているようだ」という言葉は、今でも、肝に銘じるありがたい言葉になっています。

次回の講師は、パナソニック株式会社の赤木 みどりさんです。電話応対技能検定指導者級資格保持者として企業内研修の企画運営に携わっていらっしゃいます。ステキな笑顔と優しいお声と話し方がとても魅力的な方です。

松本 智子氏

合同会社テルザハート代表社員。第49回電話応対コンクール全国大会3位入賞。電話応対技能検定指導者級資格保持者。NPOマナー教育サポート協会認定講師。日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー。現在は電話応対技能検定・電話応対コンクールの指導と模擬応対者として活動するほか、「聴き方が変わればコミュニケーションは変わる」をテーマに「気持ちの伝わる音声表現」など、心理カウンセリングの手法を活かした研修を行っている。

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