電話応対でCS向上コラム

第31回 お客さまの気持ちに想いを馳せる-フリー講師(接遇・ビジネス・電話応対)-

記事ID:C10019

 電話応対研修では「電話応対の主役は相手、電話の向こうの人が何に関心を持っているか?に関心を持つことが第一です」と伝えます。自分が言いたいことを一方的に伝えるのではなく、相手が何を求めて電話をかけてきているのか?を聴き取り、気持ちに想いを馳せる心配りが必要だと考えているからです。今まで研修などで携わった方々には、このことを必ず伝えてきました。

机上の空論になっていないだろうか

 各種研修や講座では講師としての言葉は受講生にとって少なからず影響力があります。ただ、現場を長く離れていると「これでいいのか?」と不安になることが多くなりました。そこで、とあるコールセンターのドアを叩いたのです。そこは医療相談窓口の某コールセンター。医療の専門家からアドバイスを受けることができる24時間365日体制のサービスです。私は受付員としてファーストコールを受け、医療機関案内なのか緊急性と受診の必要性を判定する相談希望なのかを聴取し、必要に応じてフローに沿った対応をします。マニュアル遵守が基本ではありますが、このコールセンターへの入電者は“ご自身、またはご家族の病気やケガで不安を抱えていることを忘れてはいけない”という思いで応対しています。

 ある朝「昨夜からしゅうとが腰が痛いと一晩中苦しんでいて、家族の者で腰をさすりながら一睡もせずに、あちこちの病院に電話したのですが“本日は休診です”“先生がいません”“ほかをあたってください”の繰り返し……私たち家族はどうすればいいんですか!!」と、怒りと諦め、どちらともつかない悲痛な声の入電がありました。その時私の口から出たのは「お舅さんもですが、ご家族の皆さんも眠れていないのですね、大丈夫ですか?」という言葉でした。「あ~、あなただけですよ、私たち家族の大変さを分かってくれたのは、その言葉だけでもう充分です」と、先程とは違う、優しい笑顔を思わせるような声でおっしゃったのです。これが「相手の気持ちに想いを馳せる」ということなのかと、意図的ではなく自身の心の声が言葉となり、相手を笑顔にすることができたのです。何十冊の書籍やテキスト、講座ではなく、たった1本の電話がそれを教えてくれたのです。

技術が進歩しても変わらないこと

 さまざまな業務がAIに取って代わられる時代、コールセンターも例外ではないと言われています。これからも、電話の向こうにいる人を想い、相手の気持ちに関心を持って、何をどう伝えるのかが如何に大切なのか、ICT技術がどんなに発達しても変わらないものがあることを、人間臭く伝え続けていきたいと思う日々です。

次回の講師は、株式会社文華堂取締役会長伊東 由美子さんです。会社経営の傍ら、自社の社員教育をはじめ他企業、学生向けのマナー研修に力を注がれました。今はその経験を活かし、『進化を目指す中小企業向プロジェクト型支援事業』をスタート。優しい雰囲気の中に凛としたものをお持ちの素敵な女性です

 

村田 綾氏

フリー講師として、日本電信電話ユーザ協会が主催する各種講座、会員企業に出向いての各種マナー研修、電話応対技能検定の指導・審査、電話応対コンクールの音源審査に携わる。電話応対技能検定指導者級資格保持者(15期生)。

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