電話応対でCS向上コラム

第27回 身をもって伝えたい「心、ことば、そして愛」-株式会社エヌ・ティ・ティ マーケティングアクト 中国支店-

記事ID:C10005

“もしもし検定の風”を、この地で吹かせたい

 私は3年ほど前まで、日本電信電話ユーザ協会の地方県支部の事務局社員として、地域の電話応対研修を運営する仕事をしていました。専門家の先生、電話応対コンクールに挑む選手、コールセンターで日々応対する方々、社員教育に取り組む育成担当者の方と接していくうちに、私も「電話応対」の奥深さに興味を持ち、学びを深め、次第に私自身が「指導者の道」を目指すようになりました。

 指導者になったばかりの約10年前、電話応対技能検定(もしもし検定)の「心、ことば、そして愛」という考えに大きく感銘を受けた私は「“もしもし検定の風”を、この地で吹かせたい」、そんな壮大な思いに胸膨らませていました。事務局社員としては、会員企業の責任者の方へ積極的な広報活動をし、指導者としては地域初の「もしもし検定講座」を開催し、登壇し始めていました。その頃はまだ公式問題集が発行されていなかったので、過去に出題された問題を分野別に分類し、各級の筆記対策資料を作成するなど、受検対策にも力を入れていました。

不安を払拭するはずが

 ある時、地元の病院から、医療事務、介護職の方など複数で受講の申込みがありました。そのうちの一人の男性は、礼儀正しく応対がとても丁寧で、聡明で真面目という印象でした。彼はとても熱心に受講され、実技もほぼ合格レベル、私はそう感じていました。

 当時は合格率が90%近くあり、彼ならきっと大丈夫だろうと思った私は、彼の検定への不安を払拭するつもりで「私の受講生の中で不合格だった方はまだ一人もいませんから……大丈夫ですよ」と言ってしまったのです。それは、受検対策は万全にしているという私のおごりもあった言葉でした。

 合否発表があり、彼から電話がかかってきました。

 「先生、ごめんなさい。僕落ちてしまいました。先生の受講生の中でまだ不合格者はいないと言われていたのに、申し訳ないです……」

 「えっ、何で謝るの……?」
 私はこの時初めて、自分の過ちに気がついたのです。

講座の中でしか伝えられないものを大切に

 私の講座はいつの間にか「合格対策講座」になっていました。そしてそれは、受講生にとって強烈なプレッシャーだったのかもしれません。私が本当に伝えたかった「ことばに愛(心)を込めた応対」の大切さを伝えることはできていなかったのです。

 今振り返り、あらためて「愛」をもって、真摯に受講生と向き合うことの大切さを感じています。受講生の方へ、全身全霊をもって接していくことはもちろん、私も受講生の方から学ぶ唯一無二のかけがえのないものを大切にし、「心、ことば、そして愛」を伝えていきたいと思います。

次回の講師は、医療法人辰川会 山陽病院 福江 安代さんです。電話応対コンクール出場のご経験もあり、アンガーマネジメントファシリテーター※としてもご活躍、元歯科衛生士専門学校の講師、本業は歯科衛生士の先生です

※ 怒りの感情と上手につき合う方法を教え、講演、研修、トレーニングなどを行うことができる、日本アンガーマネジメント協会の認定資格です。

村田 美和氏

株式会社エヌ・ティ・ティマーケティングアクト 中国支店 企画総務部人事担当。1991年、西日本電信電話株式会社入社。2005年、日本電信電話ユーザ協会出向。現在は、電話応対技能検定(もしもし検定)実施機関の社内講師として、電話応対の指導に当たる。個人情報保護士。電話応対技能検定指導者級資格保持7期生。

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