電話応対でCS向上コラム

第26回 お客さまの背景を汲み取る-株式会社PERSONUTS’(ペルソナッツ)-

記事ID:C10002

 電話応対では、咄嗟の判断や語彙力が試される “ ハプニング ” への対応力が求められます。ただ、臨機応変な対応力は身につけたいですが、なるべくなら、ハプニングには遭遇したくないものです。

 以前こんなことがありました。ある日の午前9時、かかってきた電話に元気よく出ると「講師が来られていませんけど!」という意外な言葉。えっ!一体どういうこと……?瞬時に日付や時間を再確認し、本日登壇予定の講師の顔が浮かびました。そして「○○会社さまでいらっしゃいますよね。本日、確か10時スタートの研修でございますよね?」と恐る恐る確認すると、そのお客さまは「いえ、9時スタートに変更するという依頼のメールを先週お送りしましたが」と言うのです。

お客さまの背景を考えた応対

 驚いた私は声が詰まり、倒れそうになりながらも、お客さまの背景を一番に考えました。このお客さまは受講生を待たせて電話をしている。その状況にまずは対応せねば!そう考えた私は「恐れ入ります。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。至急講師に連絡して、そちらに何時に到着できるか確認いたします。ただ、早くても9時半頃になる可能性が高いのですが、それまで場をつないでいただくことは可能でしょうか?」と伝えました。するとお客さまは「あ、分かりました。できるだけ早くお願いします。受講生には何か……」お客さまは少し不安そうな様子だったため、私は「お届けした研修用のテキストを配布していただき、興味や学びたい箇所に印や付箋を貼っていただくようにお願いします」と伝えました。するとお客さまは、「分かりました!そのようにさせておきます」と答えて電話を切りました。

 その後、担当講師が早めに現場近くいたこともあり、9時20分には研修を開始することができたのですが、私はその日のうちに謝罪に出向きました。お叱りやご縁がなくなることも覚悟してお詫びをしたのですが、お客さまからの思いがけない言葉に驚きました。

「開始時間に講師が来ないことに驚き、腹立たしい気持ちで電話をしました。しかしあの時、天野さんが言い訳や経緯確認の前に、今何をすべきか、受講生に何をさせれば良いかを適切に指示していただいたことで、受講生を不安にさせることなく、結果的に良い研修になりました。私もメールを送った後に電話を1本入れておけばよかったですね。こちらこそご迷惑をおかけしました」

時にはお客さまも協力者にする

 私たちが、苦情や不満をうかがう際には、頭の中で「なぜ」や「いつ」が気になり、お客さまがしてほしいことや聞いてほしいこととのズレが生じます。今回のことも「いつメールを送っていただきましたか?」や「昨日確認のお電話を…」など、今でなくてもよいことをついつい話しがちです。お客さまの状況や背景、まずは何をすべきかを考え、時にはお客さまに協力者となっていただき対処することも大事だと、改めてお客さまから教えていただきました。

次回の講師は、NTT マーケティングアクトの村田 美和さんです。たくさんの人との出会いを大切に、いつも優しく丁寧な対応を心がけ、相手の立場に立った思いやりある指導をされます。指導者級の同期仲間からも癒しキャラとして慕われています。

天野 愛巳氏

株式会社PERSONUTS’ 代表。電話応対技能検定指導者級資格保持者として電話応対技能検定の指導や試験官を行う。これまでの経験を活かし、心理学認定講座や研修、個人セッションを通して、やり方ではなくあり方を育成する研修は他に類を見ない。自分も周りも大切にして、笑い合える人材育成を日々実践中!

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