電話応対でCS向上コラム
第25回 温もりのある応対へ-オフィスRIN-分かりやすい道案内とは
「お客さま、今、そこから何が見えますか?」「山や山。あと田んぼ。看板はないし、一体、ここはどこなんや!」「お客さま、それは私がお聞きしたいのですが……」
これは、私が以前に勤務していたゴルフ場の予約係にかかってきた電話でのやりとりです。ご来場いただく途中での道案内は、最も正確に迅速に応対しなければならないのですが、道に迷われたお客さまの声からは焦りと怒りが伝わってきます。「あんたは毎日通っているから分かるかもしれんが、こっちは初めてなんや。もういい、帰る」
この電話が契機となり、事務所全体で“お客さまに分かりやすい道案内”について考え、話し合うことにしたのです。
お客さまの目線で話し合い行動する
まず、お客さまにどのように案内をしているかを皆で確認しました。すると、ほとんどがマニュアル通りの案内しかできていないことが初めて分かったのです。私自身、頭の中では「お客さまには地図も送っている。ポイントごとに看板もある。それなのになぜ分からないのか。なぜ迷うのか?」と思っていました。今から思うと「分かって当たり前」という、かなり傲慢で一方的な目線でした。お客さまにとっては「当たり前ではない」という基本的なことに気づいたのです。そこで、チームを組んで、実際に案内している道を車で走ってみることにしました。順路である角を早めに曲がってしまった時や、行き過ぎてしまった時など、徹底してお客さま目線で行動してみたのです。そうすることで新しい道や建物なども皆で情報共有でき、誰が応対しても具体的で丁寧な案内ができるようになりました。
お客さまの気持ちに寄り添う大切さ
お客さまの気持ちになって案内ができるようになってからは、受付業務も劇的に変化しました。「まるで隣に乗って案内してくれているようだった」「安心して来られた。ありがとう」という言葉をいただけるようになったのです。また、よりお客さまに満足していただける応対を目指して、電話応対コンクール、企業電話応対コンテストにも参加して、スキルアップを図りました。このお客さま目線の話し合いと体験は、電話応対だけでなく普段の会社全体の接客の向上にもつながっていきました。お客さまの気持ちに寄り添い応対することは、マニュアルや機械では代用できません。電話をいただいた時、お客さまに「かけてよかった」と思っていただける温もりのある応対こそが大切なのです。振り返れば、あの時のお客さまの厳しい言葉が、今の私の研修講師としての基本となりました。これからも人に対して「温かな心、温かな言葉で話す」その気持ちを忘れずに、私自身も研修に臨んでいきたいと思います。
奥田 郁子氏
オフィスRIN代表。小学校教員を経て、蒲生ゴルフ倶楽部に勤務し、予約係、営業担当、フロアーマネージャー、レストラン部マネージャーを歴任。第41 回電話応対コンクール全国大会出場。現在は、電話応対研修を中心にサービス・応対マナーは「温かな心から」をコンセプトとして研修にあたっています。電話応対技能検定指導者級資格保持者。